「毒親」の正体 ――精神科医の診察室から ((新潮新書))

著者 :
  • 新潮社
3.88
  • (13)
  • (16)
  • (10)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 168
レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106107566

作品紹介・あらすじ

「あなたのため」なんて大ウソ! 不適切な育児で、子どもに害をおよぼす「毒親」。彼らの抱える4つの精神医学的事情とは。豊富な臨床例から精神科医が示す「厄介な親」問題の画期的解毒剤!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 精神科医が臨床医の立場から「毒親」について分析した本です。本書の趣旨は、従来の毒親本に欠けていた視点、すなわち「毒親の臨床医学的理解」を深めることにあります。

    著者によると、毒親の臨床医学的背景は大まかに4つあるといいます。

    1)発達障害パターン
    2)不安定な愛着スタイル
    3)うつ病などの臨床医学的疾患
    4)DVなどの環境問題

    臨床現場で一番多いと感じるのは発達障害パターンだそうです。本人は一生懸命育児をしているつもりでも、子どもの気持ちを考えず頭に浮かんだことをズバッと言ってしまうなど、その発達特性のために結果として毒親になってしまうパターンです。不安定な愛着スタイルも毒親の有力な素地となりえます。子どもの発達段階を考えず、子どもに聞かせるべきでない愚痴を垂れ流しにしてしまうなど、親子の役割逆転という形の精神的虐待が起こりがちなのはこのパターンです。うつ病やDVなど、親自身が手に余る問題を抱えており、子どもを顧みる余裕がない場合も、結果的に毒親になってしまうことがありえます。

    著者が強調するのは、親の事情を子どもが知ることの重要性です。「自分の親が毒親なのはあくまで親の事情であり、自分が悪かったわけではない」と認識することが癒やしへの第一歩になるからです。まず親の事情を知り、その特性やキャパシティを明確にすること。その上で、親にできることは要望し、できないことは諦めるという、現実的な付き合い方を考えていこうという話です。

    なお、本書では、「毒親」とは「子どもの不安定な愛着スタイルの基盤を作る親」と定義されています。診察室を訪れる親子には、関係修復の意思があるにも関わらず、何をどうしたらいいのかわからず途方にくれているケースが多いため、そういう場合での判断の一助になれば、というのが本書の目的であるようです。遺憾ながら、苦労させた上に金の無心をしてくる親や、性的虐待をする親など、絶縁するしかない真正の毒親もいると著者は認めています。「親にも事情があったのだから許してやれ」と一般論をふりかざしているわけではないことは強調しておかねばなりません。

    親の事情を知り、その事情は自分とは無関係で、責任を負う立場にないと知ること。間違って植えつけられた罪悪感から解放され、自分の心の平穏を取り戻すことが本書の最終目標であると著者は述べています。

  • スーザン・フォワードの「毒になる親」を読んだ20年前、親は子を慈しみ、子は親に孝行して恩を返すのが疑いもない時代だった。

    そして今巷には「毒親」「AC」という言葉が氾濫する。

    本著は精神科医水島広子氏が「毒親」を精神医学的に分析して、分かりやすく呈してくれる。

    総論・各論と、症状・考察が混在することなく、ジェンダーや社会学的な立場はできるだけ排しているので明瞭な印象を受けた。

    不適切な養育の原因は、親側にある。子は悪くない。そして本著の目的は、毒親診断や認定ではない。
    どんな事情で親が不適切な養育・言動を取ったのかを知れば、子どもが罪悪感から解放され(「私は悪くない」)、「厄介な親」とのより適切な関わり方の指針を考えやすくなるという方向性。

    【そうした親が抱える精神医学的事情】

    ①発達障害(自閉症スペクトラムASD,或いは注意欠如/多動性衝動ADHD,或いはそれらの混在)

    ②親自身が持つ不安定な愛着スタイル
     a不安型:養育する人が守ってくれる時もあれば、唐突に突き放す時もあり、見捨てられ不安に苦しむ。
     
     b回避型:養育する人がいない、いてもあまり気にかけてもらえず、情緒的やりとりなく生育する。助けを求めるという習慣がなく、困ったときに助けを求められない。

    ③うつ、依存症などの精神疾患

    ④DVや嫁姑問題など環境問題
     他に、子の1人が障害を抱えている、子どもより宗教など

    親なのになぜあんな言葉を発するのか。母なのになぜ子の気持ちが分からないのか。
    私も自分が子どもを持って初めて、自分の実家の関係が不適切だったと気が付いた。30年近く前のことだ。

    巷には毒親判定のサイトすらあるが、そもそも「毒親」も「アダルトチルドレン」も定義や指し示すものが漠然と広範囲に及ぶ主観的なものだ。
    言葉自体が独り歩きしている危惧もある。

    大事なことは、私が辛かったのは私の所為ではないとしっかり罪悪感や自責の念から自分を解き放つこと。

    そして心の底に澱んだ哀しみ、寂しさ、怒り等を発露としてちゃんと表にして、本当はどうしたかったのか、自分の心の声に耳を傾けてみることだと思う。

    怒りを抱いたまま、年齢を重ねるのは悲しすぎる。失うものの方が多い。被害者のままで自分の人生を終えたくない。

    事情を知って、親を許す、受け入れる等が目的でもない。封印してきた過去の気持ちを処理していくには、親を知り、何が起こっていたのかを頭で理解することが前進のカギとなるのは私も大いに賛成だ。

    子を養育することに必要なものの幾つかを「欠いた」人。それが自分の親だった。子は悪くない。そして私は私の人生を生きる。

  • 毒親の正体のひとつに発達障害の可能性という本。
    うわーそうだったのか、というびっくり感。
    あるある大事典みたいだった。
    読後自分がすっきりするかというとそれは別で
    新しく知ることができた「あきらめ」も考えに入れつつ
    やっぱりこつこつ回復の道を辿らないといけない。

  • 書店で購入して読み始め、一つ一つ書いてあることを自分の中に落とし込みながら最後まで読み進めました。
    そして、読み進めることに「真っ当なことが書いてある」と、書いてあることが心から信頼出来る本だということを感じました。

    この本を手に取ってよかったと私は思っています。理由は、「問題の原点に戻れた」と感じたこと。
    加えて、精神科や心療内科といった第三者(治療者)とどう協力していったらいいのかの方向性も読みながら(何となくですが)見えてきたのも大きな収穫でした。

    「毒親」の正体は、発達障害や不安定な愛着スタイル、うつ病やアルコール依存症といった「精神医学的事情がある親」だ、というのがこの本の主張です。
    最初読んだときは目から鱗が落ちるような思いがしました。親の発達障害と毒親の関係を正面切って語っている本に出会わなかったということもあります。
    ただ、よくよく考えたら目新しいことは一つもないようにも思いました。「アダルトチルドレン」という言葉の生まれ故郷が「アルコール依存症」という「精神医学的事情がある親」を相手にした臨床現場だったことを思うと、単にそれをうつ病や発達障害等他の精神疾患や脳機能の障害との関連に敷衍して捉えたとも言えるわけで。そういう意味では「問題の原点に戻っている」とも言えるのではないでしょうか。

    毒親本は、それこそ『ゆがみちゃん』『母はしんどい』といった漫画から、信田さよ子の著作、スーザン・フォワードの『毒になる親』も読みました。読む中で自分にとって切実な悩みだということも感じてきましたし、読んで良かったとも心から思っています(ついでに言えば、私としては以上挙げた本を一通り読んで悩んでからこの本に出会うというのが最良の出会い方だとも思ってます)。
    ただ、実際の具体的なアクションとしては「関係を断つ」「家を出る」「住民票に閲覧制限をかける」といった絶縁を勧めるものだったり、自己啓発的なアプローチのものだったり……。要するに、「すぐにでもしたいけど現実問題ハードルが高い」ことばかり。そして読む程に頭をもたげてくる、
    「絶縁せなあかんのか」
    「自分を強く持たなあかんのか」
    という思い。
    それに比べたら、「親にも精神科・心療内科を受診してもらう」というのは、関係性を捉え直す上でも具体的なアクションとしても現実的に感じました。

    何より、ジェンダー論や家族論や世代論といった「社会学的要素」「社会的背景」に話のウェイトを置いていないことも好感を持てました。
    勿論、社会の状況と精神疾患が切っても切れない関係にあることは間違いありません。「日本社会のあり方が悪い」「現在常識とされている〈父〉〈母〉のロールモデルはおかしい」「あの世代にこういう話が通じないのは何故か?」とかの議論も、それはそれで必要だと思います。
    ただ一方で、まるで社会学者であるかのようにアダルトチルドレンや機能不全家族や毒親を語ってきた「専門家」が(精神科医含め)多くいたなというのも私の今までの印象だったわけで。そういうモヤモヤはこの本にはありませんでした。あくまで臨床現場に誠実に向き合った上で内容を絞っているように思いました。

    ともかく、私自身も医師に頼りながら、具体的に、一つ一つ、向き合っていこうと思います。

  • 「毒親」関連書籍の中で一番斬新
    スーザン・フォワードや安冨歩さんの本を読んできて、この本でたくさん気づきがありました!

    そっか、親が発達障害だったなんて考えたこともなかった。

    -----
    読んでいた時にふと思い浮かんできたこと。
    そうか、学校や会社、組織、社会で成功できない。
    社会で成功すると、依存度が減り、コントロールできなくなってしまう。
    だから、誰も信じられないようにしてしまえば、都合よく使える。

    向こう側の裏側から考えればそういうトリックだ。
    だから、徹底的に褒めない、失敗だけ指摘していれば、成功体験もさせずに、自分よりも劣った人格にすれば、操作できる。

  • 真摯で丁寧な説明が重ねられており信頼できる一冊。
    発達障害(先天的障害)と愛着障害(後天的障害)に分けて話が進んでいく。
    ここにサイコパス(先天的人格障害)を加えて3点で説明していただくことは可能だろうか?
    卑近な例で思うこと多々あり、読後しばらくしてダメージが広がった。
    なんとかして早く大人になりたいものである。

  • 毒親本はもう腹いっぱい、と思っていたけど、つい手に取ってしまった。
    私の場合、子どもの発達障害のことから始まって、両親のこと、そして自分のことに行き着いて。この本にたどりついた。これまで様々な本を読んできたけど、今までの自分の読んできた本は全て無駄じゃなかったと思った。人生の総集編でもないけど、読んでよかった…と思える一冊だと思う。すべてがというわけではないけれど、私の場合は80%前後、腑に落ちる内容でした。

    やっぱり愛着の問題が大きいんだなぁ…と、自分が思っていた通りだったのでスコーンと納得できた。母のことも「やっぱりそうだったのか!」と、その言葉しか出てこなかった。スッキリしたように思う。父方、母方、そして夫の父母家系もほぼ全員このパターン。一番ひどかったのは義理の祖母だったと思う。次は実母。ある特定のことにひどく反応してしまって、そのスイッチを押してしまったら最後、感情が治まらなくなり大変だった。「心の倫理」のあるなしで、周囲に与える深刻度が変わってくると思った。あと個人的に思うのは(両親、祖父母周辺世代は)戦争が及ぼした陰が大きく影響していると思う。

    ある程度、親との関係が整理できていて、自分の心の怒りや感情のコントロールが出来ない状態で読むと、かなりつらいと思うし、気持ちの持って行きどころがなくなって苦しくなると思う。

    メモ:複雑性PTSD 「感情コントロールの障害」 ひどい攻撃を受けている場合(173ページ) 人は自分の被害者性が癒されなければ、自分の加害にも向き合えない
    この本、ちょっと自宅に置いておきたいなぁ…。

  • 自分の親に対して、ずっとモヤモヤしていました。
    年をとるにつれて、そのモヤモヤは大きくなる一方でした。

    自分の親が毒親かどうかは別にして、この本を読んで自分の父も母もASDタイプじゃないかと思い当たりました。

    父も母も真面目すぎるくらい真面目な人たちで、僕は虐待は受けていませんが、一方で親から褒められたり、認められたと感じた記憶はありません。

    母は言うことがその時でコロコロと変わり、いつも極端に僕から異性を遠ざけようとしていました。
    父は交友関係と呼べるものはほとんどなく、「恥」となることを極端に嫌うため、人の力を借りることを自分にも子供にも認めませんでした。

    まさか自分の親が発達障害だとは思いもよりませんでしたし、愕然とした気持ちになりましたが、ASDだと仮定すると今までの親に対するモヤモヤが腑に落ちます。

    本を一冊読んで、即座に他人の精神性を断定するのは愚の骨頂かもしれませんし、危険なことかとは思いますが、親から精神的な支えを受けられなかったこと、親に対する憎しみの執着を手放す一助になりそうです。

  • ざっと読んだだけになったが、理解したことがひとつ。
    意外と発達障害の人は多いんだ、ということ。
    「なんであの人ああいうことするんだろう。普段はいい人なのに」と思うことがあったが、「ああ、発達障害だったのか」と腑に落ちたことがあった。
    自覚は難しいだろうけれど、関わる者としては、そういう病気があることを知っていた方が楽に付き合えるだろう。

    親になるって大変。
    「自分はこうならない」とは言い切れないと思う。

    水島さんの著書『女子の人間関係』は好きだが、似たような内容の本が多くなってきたせいか、少し合わなくなってきた気がする。
    「上から」を感じるのか、宣伝が多いせいか。

  • 借りたもの。
    毒親の原因に発達障害と愛着障害(スタイル)があることを指摘。
    前者が脳機能の偏向、後者が生育環境における親とのコミュニケーションの問題とされている。
    この2つはよく似た傾向を示すため、素人目には判断が難しそうだ。
    (脳自体がブラックボックスのため、発達障害もよくわからないことが多そうだし…)

    発達障害、愛着障害、精神障害によって何故、毒親が生まれるのか……
    様々なクライアントのケースを基に、「毒親」の定義と原因を紐解いてゆく。
    原因は1つだけではない。親の特質だけでなく、環境要因(貧困、カルト、嫁姑問題、DVなど)もあることを指摘。

    親に原因があったことを認めた上で、“自分が”どうするのか……それが問題だ。
    斎藤学『「毒親」の子どもたちへ』( https://booklog.jp/item/1/4895958744 )でも指摘があった。
    子供は“親に無償に愛されたい”というのは普遍だろう。必要な時期にそれを得られなかった「事実」と「原因」を認識し、それを癒す――克服する――ことが「毒親」問題の本質だろう。
    「毒親」認定をして親を断罪しても意味がない。むしろ「毒親」にその自覚は皆無であることが殆どだ。責めたところで「無かったこと(無視)」にされる。
    そのことを“受け入れる”必要がある。
    ……この本では、毒親と認識された親にその「非」を認めることを促しているが。

    この本は心に不安を抱える人に寄り添う姿勢で書かれている。だからと言って甘い言葉を論(あげつら)っているのではない。そこに好感が持てた。

    段階を踏んだ克服法についても言及。
    田房永子『母がしんどい』( https://booklog.jp/item/1/404602884X )にあるような、親と縁を切る以外の方法を提案。
    ……実際、私もカウンセラーと親子面談をして初めて親が私を育ててくれたが“見ていない”ことを認識した。

    毒親問題とは、当事者が受けた、その虐待の程度や家庭環境の優劣(中産家庭か貧困家庭か)など、境遇の度合いが問題ではなく、家庭環境に起因した苦しい考え方のクセ――生きづらさ――による苦しみだった。それを他人が「被害者意識強い」というのはお門違いだろう。

    【感想とはあまり関係ない備忘録】
    日本において「毒親」という言葉の認知を広めた田房永子氏も、ブログで“「しんどい母は発達障害ではないか?」という意見を頂いた”と言っていた。
    愛着障害は直近で読んだ『話を聞きたがらない夫 悩みを聞いてほしい妻』( https://booklog.jp/item/1/4040693841 )の著者・岡田尊司氏の専売特許ではないことが発見…

全23件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

水島広子(みずしま・ひろこ)
慶應義塾大学医学部卒業・同大学院修了(医学博士)。慶應義塾大学医学部精神神経科勤務を経て、2000年6月~2005年8月、衆議院議員として児童虐待防止法の抜本改正などに取り組む。1997年に共訳『うつ病の対人関係療法』を出版して以来、日本における対人関係療法の第一人者として臨床に応用するとともに、その普及啓発に努めている。現在は対人関係療法専門クリニック院長、慶應義塾大学医学部非常勤講師(精神神経科)、国際対人関係療法学会理事。主な著書に『自分でできる対人関係療法』『トラウマの現実に向き合う』『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』『怖れを手放す』『女子の人間関係』『自己肯定感、持っていますか?』『「毒親」の正体』などがある。

「毒親」の正体 ――精神科医の診察室から ((新潮新書))のその他の作品

水島広子の作品

「毒親」の正体 ――精神科医の診察室から ((新潮新書))を本棚に登録しているひと

ツイートする