コンビニ外国人 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106107672

作品紹介・あらすじ

1部屋で8人暮らし?! 東大院生もいる? 彼らの実情は。全国の大手コンビニで働く外国店員はすでに4万人超。20人にひとりの割合だ。実は世界第五位の「外国人労働者流入大国」日本。知られざる隣人たちの実情とは?

感想・レビュー・書評

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  • コンビニで働く外国人はなぜアルバイトをしてまでも日本に住みたいのか。

    世界的に見ても難しいと言われる日本語を習得してまで、なぜ日本に住みたいのか。

    このような疑問がこの本を手に取った動機だ。

    日本へ来ている留学生達は主に、
    ・働きながら勉強できる日本の制度に魅力を感じたから
    ・彼らにとって日本という国は比較的容易に働けるから
    ・日本語を覚えて母国の日系企業の就職につなげたいから
    ・ジャパニーズドリームを掴みたいから
    等々の理由から、日本でアルバイトをしながら就学しているそうだ。

    日本の文化や芸術に関心を持って来日した留学生ももちろんいるだろうが、このようにお金を求めて来日している留学生も多いそうだ。

    また、アルバイトとしてコンビニが選ばれている理由としては、
    ・接客業としては使う日本語が簡単だから
    ・学費なども払わなくてはいけない留学生は生活に困窮していることが多いため、廃棄処分される食品をもらい少しでも食費を浮かせたいから
    などの理由が多いらしい。

    それ故、コンビニで働く外国人店員はすでに4万人超、スタッフ20人に1人が外国人という割合となったのだ。

    「留学生30万人計画」を推し進めている日本政府だが、その一方で留学生へのケアは行き届いておらず、質の良い教育や労働を提供できていない。

    現在私立大学より多い日本語学校だが、文部科学省もさすがに外国人への日本語教育までは手が回らないそうだ。

    個人的には大々的な大学入試改革よりもまずはこっちに力を注ぐべきだと思うのだが…

    著者が述べているように、留学生のアルバイトの制限時間を拡大しても、出稼ぎ留学生を増やしてしまうだけで根本的解決には至らないだろう。

    とすると政府が日本語学校を買収して公立学校とし、授業料を削減するぐらい大きな改革を施さない限りこの問題は解決しないだろう。

    とにかくこの問題については政府のお偉いさんに任せるとして、私たちには彼らのために何ができるだろうか。

    辺りが暗くなり、私たちが学校や会社から帰宅して暖かい部屋のなかで家族と笑っている間も尚、青白く不気味に光るガラスの箱に詰め込められている彼らに、一体何ができるのか。

    今の日本はもはや、外国人によって成り立っているところがある。

    ユネスコの世界遺産に登録された「和食」もすでに彼らの下支えがなければ成立しない。


    「ありがとうございました」


    普段何気なくコンビニを出る際に聞いているこの言葉も、本来は私たちが彼らにいうべきなのではないだろうか。

  • 普段、この手の新書は殆ど読まない。
    だけれど東京に住んでいた時、アパートの近くのコンビニにも海外のスタッフがいた。
    そして職場は新大久保にあったのでコンビニはもとより、日本人より海外の人の方が多く、ここ日本だよね!?状態だった。
    この海外の人達は一体、どこから来てるの?とずっと謎だった。

    でもこの本を読んでその多くは留学生で、ジャパニーズドリームを掴みたくて来ていることがわかった。そして、留学生にとって日本という国で働く事は他国より容易いこと。しかし、高齢化が進んで働き手のないコンビニは彼らを雇わないと店が回らない。何もコンビニだけではなく、他のサービス業も同じ問題を抱えている。

    各企業、自治体が知恵を絞ってなんとか海外からやってくる人達を定着させようと上手くやっている例、逆にブラックな方向に進んでしまっている実態など、丁寧な取材で分かりやすく解説されている。
    新書ともなれば数字も結構出てきそうだが、そういうものもほとんど出て来ないので読みやすい。

    外国人労働者に対しての雇用が改正された今、タイムリーな一冊だと思う。

  • 昨今、コンビニのレジで対応してくれる店員さんの多くが外国人であることに、あらためて気づきます。
    少し前までは中国・韓国の方かな、という印象でしたが今ではいんどやネパールから来たと思われる人が多くいらっしゃいます。
    日本語も(業務に支障がない程度には)不自由なくコミュニケーションができますし、接客態度も良好で、いつも気持ちよく買い物をさせてもらっていますが、彼ら(彼女ら)はどのような目的で日本に来てコンビニで働いているのでしょうか。
    外国人労働者を巡る問題の一つでもある「技能実習生」とコンビニでのアルバイト店員はどのようにリンクするのでしょうか。

    超高齢化社会へ向け、労働人口が減少の一途をたどる日本において、外国人労働力は実際問題としてなくてはならない存在ですし、(実施されるかどうかはまだわかりませんが)東京オリンピック後に景気が停滞する(といわれている)日本に、(主たる目的が何か、は別にして)日本を訪れて労働力を提供してくれる外国人がどの程度いるのかも未知数です。

    日本人だけでは労働力を賄うことができない現状がある以上、国籍を問わず、日本という空間が働きやすく(また、「働きたい」と思えるような環境であり)、暮らしやすく、過ごしやすい環境であることはこれからの社会を維持してゆくうえで不可欠だと思いますし、そういった環境を作り上げてゆくためには、いま、働いている外国人労働者の実情を把握することが必要だと思います。その点で、本書は多くの外国人留学生に話を聞いていて、現状理解に大いに役立つと感じます。

  • ●全国平均で20人に1人は外国人
    ●対面で客と話すから日本語の勉強になる。文化の勉強にもいい。工場より楽しいし、廃棄の弁当が食べれるところもある。
    ●留学生でもバイトは自由。しかし週28時間までで、夏休みなどは40時間まで許される。
    ●日本語が上達し、他の職種が選べるようになれば、ほとんどの留学生がコンビニを辞めていく。コンビニで働きたがらない日本人大学生と同じような感覚なのだろう。
    ●在留外国人の内訳。1番は中国て70万、2位の韓国は40万だがかなり減った。日本で学ぼうとする人も減り在日コリアンの高齢化も影響。逆にベトナム、ネパールが急増している。他に多いのはフィリピンとブラジル。中央アジアも増加中。
    ●埼玉南部にはクルド人コミュニティが存在している。蕨市に1300人が仮放免のまま。
    ●国は積極的に外国人を受け入れている。世界第5位。しかし「移民」の受け入れは認めていない。日本でいう「移民」とは、入国時に永住権を持っている人に限るそうだ。日本人には移民アレルギーがある。

  • そうか…
    と思いました。

  • 全国の大手コンビニで働く外国人店員はすでに4万人超。「移民不可」にもかかわらず、世界第5位の「外国人労働者流入国」に日本がなったカラクリと、知られざる隣人たちの切ない現実に、丹念な取材で迫ったルポルタージュ。

    うちの近所のコンビニも時間によっては外国人ばかりの時がある。なかなか興味深い本。

  • 知らなかった外国人労働の問題を知ることができた。自分とは直接関係ないけど、気になる社会問題です。

  • コンビニで働いている外国人ってどういう人なんだろうと前から気になってたので読んでみた。
    基本的には、留学生らしい。ただし、週28時間の労働規制があるから結構カツカツな生活をしている人や、その規制を守らない人も多いのだとか。ただ、この規制は世界的にみるとかなりゆるい規制だそうで、アメリカやイギリスでは留学中の学生ビザのアルバイトは原則禁止だそう。
    この本を読んでみると、本当、今のコンビニなどのアルバイトって外国人留学生で支えられている一面もあるんだろうなと感じた。職場の近所のコンビニ店員はだいたい外国人と思った時期もあったし(最近は一時期より外国人比率は減ってる気もする)。
    そういった外国人留学生は年々増加しているらしく、JR新大久保駅では24ヶ国語のアナウンスが流れるのだとか。いったいどんな感じなんだそう? その試みはすごいと思った。
    本書では最近問題になっている、外国人技能実習制度についてもいくつか書かれてあった。本当、建前な制度だなと思った。まあ、大抵の受け入れ企業はちゃんとしているそうだし、この制度での日本での就業経験をいかして母国で活躍しているという人もどこかにいるんだろうけど。うちの会社にもベトナム人がいるけど(この制度を使ってるわけではないけど)、どう思って日本で働いているんだろうか。自分はそのうちベトナムに帰るんだろうなと勝手に思ってるけど、意外と日本にずっと住みたいと思ってたりするのかもしれない。
    後、日本語学校もひどいところはひどいなと。借り上げアパートで寮暮らしさせたうえで、家賃を上乗せしてとってるとところがあると書いてあってひどすぎるだろと思った。
    もちろん、そんな悪いことをやっているところだけではなく、町ぐるみで外国人と交流して活性化しているところもいくつかあるよう(最後の第7章がそういう町の紹介内容だった)。日本は人口が減り続けてるのだし、やっぱり今後は外国人に頼らざるをえないこともあるだろうしね。そういうところうまく考えないといけないのだろうと思う(ただし、オリンピック後は日本は不況になって日本に来る外国人は減るだろうとのこと)。
    後、ちょっと驚いたのが、日本に暮らす外国人の数はここ数年かなり増えているというのに、外国人の犯罪件数は2005年をピークに減少傾向にあるということ。何か理由があるんだろうか。

  • 図書館本。うーん、外国の人には、日本語学校の学生のバイトとしてではなく、正式に働きに来てもらいたいなぁ。学生のバイトだからとか、海外の支援のためとか、カッコつけて海外の人に働いてもらうんじゃなく、人手不足だから良かったら働きに来てね!って言えばいいのに。そして受け入れたくないのなら、頑として鎖国すれば良いのに。まぁ、そう簡単にはいかないのも分かるけど、今の状態はないと思う。

  • 2019/1/22-1/27
    いつのまにか増えていた外国人労働者(特にコンビニ)。彼らが多国籍で、主に留学生だということがわかった。
    週に28時間労働に限られている(それでいいと思うけど。留学生だから)が、中には借金をして、返せず失踪をしてしまうのも多いというのは悲しいし、制度がどこか間違っているということ。
    「本当に勉強したい人は欧米に行く」「東大で勉強したい人は自由を求めている」など、日本に来る学生がトップオブトップでもないことが分かった。
    なんにせよ、コミュニケーションは大事。「知らない」だけでいると、それはお互いにとっていい印象は持てない。日本に来てくれた外国人は少なくても日本に興味があるのだから、お互いが知り合える場がもっと増えればと思う。

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著者プロフィール

1973(昭和48)年、沖縄県生まれ。茨城県育ち。横浜国立大学経済学部卒。ライター、編集者、構成作家。NHK国際放送の番組制作にも携わる。日本在住の外国人の問題から、がんの最新治療法まで取材範囲は広い。著書に、外国人留学生の実態に迫ったルポ『コンビニ外国人』(新潮新書)、共著に『本の時間を届けます』(洋泉社)などがある。多文化社会研究会所属。

「2019年 『となりの外国人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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