「承認欲求」の呪縛 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106108006

作品紹介・あらすじ

「嫌われたくない」「認められたい」が破滅を招く! SNSでは「いいね!」を求め過ぎ、仕事では「がんばらねば」と力んで、心身を蝕む人がいる。その悪因と化す「承認欲求」を徹底解剖し、人間関係や成果を向上させる画期的提言。

感想・レビュー・書評

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  • SNSが発達したことの弊害ともいえる承認欲求が、現代の日本の問題としてどう顕在化しているのか?
    具体的な事例に基づいて理解し、承認欲求を求めるものたちの心理感を理解できました。

  • 承認欲求と聞いた時点でSNSにドはまりしている人たちの事書いてあるのかな?と軽い気持ちで読みはじめましたが、誰でも承認欲求に振り回されていて、関わり合いにならないようにするなんて人と会わないで仙人にでもなるしかない状態だという事が分かりました。
    大企業の隠蔽や偽装も、得た信頼を失わないようにする為嘘をついてしまう事に端を発しています。すなわち承認欲求によって道を踏み外すわけであります。
    企業としてどうすべきかという事が色々書いてありましたが、我々は結局個人個人で何とかするしかないわけなので、この本で一番ピンと来たのは「もう一つの世界を作る」という事でありました。仕事だけを全てと生きているとどうしても一度の失敗で失う事が多すぎるので、趣味や副業で別の世界を構築していくという事が重要。一つが失われたり損なわれたりしても、全てが無くなるわけではないという風に自分自身を誘導していくことが必要と感じました。

  • どちらかと言うと、認められた人がそれを失うことを恐れて縛られるという意味の「呪縛」。まだ認めてもらえていない、認められたいと思ってしまっている今の自分のニーズにはイマイチ合わなかった。

    「呪縛」とは、恥、面子、意地、責任感、使命感などなどに置き換えられる。呪縛の強さとは、(本人が認知した期待ー自己効力感)×問題の重要性。受験エリートは自分の期待を下げられないというロジックは刺さる。

    個人でできる打開策としては、大きな志を抱く、別の世界を持つなどが挙げられている。

  • 承認欲求の功罪両面が書いてあってよかった。
    そしてSNSのいいねにとどまらず、組織内のいいねにしがみつく中年にまで話を振ることで「最近の若者は」の議論にとどめなかったのは素晴らしい。
    ぜひおじさんたちに読んでもらいたい。

  • そうなんだなぁと納得できるようなわかりやすい構成。承認するだけでは弊害も踏まれるということを学びました。今後、役立てようと思います。

  • 最近よく考えるテーマ。
    自分自身も、承認欲求から逃れられないしんどさを味わっているし、周りを見ても、認めて欲しい怨嗟の声を聞く。この時期は、特に。

    もっと認められたい、という積極的な承認欲求よりも、既得権益を奪われたくない、という消極的な承認欲求の方が強いと書かれていたこと。

    そして、認められる為に役割を演じている自分と、本来の自分との乖離に、潰れてしまうことがあるということ。

    読んで、この二つが印象に残った。
    割と自分は「こうでなくては」という思い込みが強い方で、だけどその思い込みは自分自身から来ているものではないな、と思うこともある。

    「自分が選手(相手)の感情や態度に依存してしまうことを恐れ、高圧的な態度をとり続ける人もいるようだ。命令ー服従の関係のなかには、はじめから尊敬も感謝も入る余地がないからである。」

    指導者の話だが、選手に敢えて(相手)と入れた。
    認められたいと思う人は、反面、相手によって左右される自分が気に入らないとか、隠したいと感じて、関係を遮断してしまうのかもしれない。

    日本が狭い共同体化していくことへの危惧を筆者は「あとがき」で述べているが、承認欲求の裏にはこうした遮断の感覚があるのかな、という点が興味深い。

    承認欲求の呪縛を解くカギとして、職場のダイバーシティやプロ化を挙げている。
    多くの価値観と関わりながら、自分自身の専門性を深めていく。なるほどなあ。

    認められることで苦しんでいくのではなく、楽観視出来ればいいなと思う。
    日本社会には根深い問題ではあるものの、「そういう自分」を知ることも楽になる一つなんだろう。

  • 基本、人を相手にした仕事をしてきたので、「ありがとう」と言われたときはうれしくなり、またがんばろうと思える。反対に(アンケートなどで)批判されるとやる気をなくす。
    これって承認欲求?と思い、読んでみました。

    最初に
    「承認欲求は本来、人間の正常な欲求の一つである。(中略)承認欲求があるからこそ人間は努力するし、健全に成長していくといっても過言ではない。また、ほかの人と協力したり、助け合ったりする動機も承認欲求から生まれることが多い。」
    とあり、著者は承認欲求そのものを否定しているのではない、とわかりました。

    「ほめる」と「認める」の違い、など、なるほど、と思う点も多かったです。

    仕事については、外資系によくある「評価主義」に対する考え方が変わりました。
    「お金で済ましたほうがサッパリする」ことも確か。
    イスラエルの託児所のケースも興味深かったです。

    そして、この本でもやはり、「もう一つの世界」をもつことの有効性が述べられていました。

    とはいえ、本業で疲労困憊している人には難しいことでしょう。
    「やりがい搾取」「がんばること(長時間労働)を美徳とする」という日本企業の体質が変わることを願うばかりです。

  • p.48
    ストレートに表現したら顰蹙を買うことがわかっているので、わざわざ迂回する戦略をとり、認められようとしている。それだけ、他者から認められることへの執着が強いからである。

    p.74
    彼はその道の大家である師匠に「いつまでたっても社会的に評価してもらえない」とこぼした。すると師匠は「実力があっても評価されないのは幸せだ。私のように実力以上に評価されるのはどれだけ苦しいか」と答えたそうだ。
    たしかに私の周りを見渡しても、なかなか認められないと嘆く人は何人かいるが、実際に多少なりとも認められた人を思い浮かべてみると、その人が幸せな人生を送っているかといえば、必ずしもそうではないようにみえる。
    → 過小評価されている方が気楽なので幸せなんだな。

    p.91
    主観的価値と客観的価値のギャップに目をつけて利益を得るのがビジネスである。いわゆる「やりがい搾取」、そして「承認欲求の搾取」もまたそのギャップにつけ込んだものだといえよう。
    → 客観的価値を意識できないほどに、それそれの顧客にあわせた付加価値を前面に押し出すことが大事。

    p.119
    やりがいであれ、承認であれ、本来それは働く人にとって望ましいものであると同時に、それによって意欲が高まり、仕事の成果があがれば企業もまた利益を得る。その恩恵を正当な形で本人に配分するのが筋だろう。企業はそこから経済的な利益を得ながら、働く人には心理的(主観的)報酬だけですませようというのは、やはりフェアではない。
    → 承認目的ならタダでも働いてくれる。だから、ボランティアなどと言ってタダで人を働かせる企業は犯罪として処罰の対象として良いのではないか。そうすることで、みんなの意識が変わって健全な社会になりそう。スタートアップ企業を潰さないために10人まではセーフとか、特例は必要だろうけども。

    p.190
    そもそも仕事内容や環境の変化が激しいポスト工業社会では、能力や貢献度も変動しやすい。花田光世(1987)が明らかにしているように、これまでの日本企業の人事制度は敗者復活の機会が乏しいトーナメント型に近かったが、これからは敗者復活の容易な人事制度に切り替えていかなければならない。

    p.192
    このようなゼロサム型の組織や社会で成功体験を積ませるには、どうすればよいか。それは周囲との競合を避けることである。閉ざされた組織の中でも、一人ひとりの目標やキャリアが競合しなければ、他人の足をひっぱる動機は生まれない。組織の中で出世したい人、専門職を目指す人、ゆとりある生活を送りたい人など、それぞれが自分の道を歩めば良いからだ。

    p.196
    特に効果的なのは、自分の名前を出して仕事をさせることだ。名前を出すことによって、製品やサービスに対する顧客の評価が直接本人に返ってくるようになる。ある機械メーカーでは機械の組み立てを丸ごと一人に任せ、製品には製作者の名前を入れて出荷するようにした。すると社員のモチベーションが目に見えて高くなり、若手の離職者がゼロになったそうである。社内外に発表する文書を原則として署名入りにするとか、仕事上のアイデアについては発案者の名前を明示するといった方法もある。
    → なるほど、仕事の成果物に自分の名前が付いたら自己効力感が上がるよな。

    p.198
    何が賞賛に値するかをできるだけ文章にして具体的に示す。たとえば表彰する場合も、賞状には通り一遍の文言ではなく、理由を詳細に記述したほうがよい。またカードやスマートフォンのアプリを使って、ほめ言葉や感謝の言葉を伝える仕組みを取り入れている会社もある。口に出すのが照れくさい場合に使えるといったメリットもあるようだ。
    → ちゃんと自分を分かってもらえているという安心感、自分は正しい努力を続けられたという肯定感を満たすことが大事。

    p.205
    自己開示は、自分の弱みも包み隠さずみせることである。そして逆説的にいうと、弱みを見せれば恐れを抱かなくてもよいので強くなる。その意味でも大切なのが「失敗体験」である。
    → 失敗してもみんなに話せるネタを得られたくらいの気楽さが欲しい。みんなに話せば原因と対策の振返りができ、リトライする気力も養える。

    p.208
    「楽しむ」ことを徹底できれば、「承認欲求の呪縛」に陥らなくてもすむはずである。

    p.214
    もっとも、リアルな世界に居場所を見いだせないからこそ、ネットの世界にそれを求めた人が多いのは事実だ。それなら、せめて複数のSNSを使い分けるようにすれば、「承認欲求の呪縛」を軽減できるはずだ。ちなみに要領のよい若者は、匿名で複数のアカウントを使い、異なるキャラを演じている。

    p.217
    こうした問題を一挙に解決する方法はないのか?
    ある。メンバーの「プロ化」、すなわち組織をプロフェッショナルの集団に変えればよい。なぜ「プロ化」によって問題が解決されるかを説明しよう。

  • この本で指摘されている通り、本当に多くの日本人が、「認められたい」「認められなくてはいけない」という状態に陥ってしまっています。

    この呪縛を解くカギとして、著者は
    ・周囲と同一次元で勝負をしないこと
    ・別の大切な世界「もう一つの世界」をもつこと
    ・組織をプロフェッショナルの集団に変えること
    を挙げています。

    まずは、自分の行動が経済によるものなのか、承認を求めてのものなのか、自己実現のためのものなのか、を自覚することから始めることが大切だと感じました。

  • 著書によれば、承認欲求は、「人間の意欲(やる気)の源泉として、また行動や成長の原動力としてとてつもなく大きな役割を果たして」おり、「人間の承認欲求なくして、組織も社会も成り立たないのが現実」であり、「人間にとって「最強」の欲求である」という。このように承認欲求は大きなプラスの効果を持つ一方で、マイナスに転化する。それが「承認欲求の呪縛」=周囲から寄せられる期待を強く意識することによるプレッシャーであり、「承認欲求の呪縛」の強さは、(認知された期待-自己効力感(やればできる自信))×問題の重要性で定式化できるという。そして、「とりわけ人間関係が濃密で、人々の共有する「空気」が濃い日本の組織・社会では、呪縛も一艘強くなる」という(「日本の風土病」とも言っている)。

    著者は、この呪縛を解く鍵として、「プレッシャーをかけないリーダーの配慮」(気配りの一言、プレッシャーを与えないユーモア等)、「後退するための階段をつける」(希望降格制度の導入など)、「お金でしがらみを断つ」(超過勤務手当の割増率を上げる、未消化の休暇の買い取る等)、一人ひとりの目標やキャリアが競合しないようにする(オンリーワンを目指す、あるいは組織として異質性を重視する)、効果的にほめる(具体的な根拠を示しながら潜在能力をほめる)、問題を相対化させる(目先の目標ではなく将来の大きな目標を意識するようにする)、失敗体験を積む、組織への依存度を下げるため「もう一つの世界」をもつ(許容する)、一人ひとりをプロ化させる(そのためには「能力の汎用性」を身に付けることが必要で、一つの組織に留まらない方がよい)、などを挙げている。

    決して上昇志向が強いわけではないが、著者のいう「獲得した評価や信頼、そして自分にかけられた期待を一気に失い、自尊心が傷ついたり、自己効力感が低下したりすることを恐れる」気持ちは、自分にも少なからずある。本書を読んで、承認欲求の呪縛について、自らの問題として深く考えさせられた。

    不祥事を起こした企業や役所が、不祥事→管理強化→さらなる不祥事という負のスパイラルに陥る仕組みについても考えさせられた。自主性を重んない単純な管理強化がいけないのか。それとも、著者が言うように、日本的なムラ社会的共同体組織それ自体が問題の根源なのだろうか。

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著者プロフィール

同志社大学政策学部教授

「2022年 『何もしないほうが得な日本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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