新宿二丁目 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106108181

作品紹介・あらすじ

世界に一つだけの街のヒミツ。世界一のゲイタウンにして、LGBTの聖地は、いつ、なぜ、どのようにして生まれたのか。そして消えるかもしれないって本当? そのすべてを描いた決定的街場論。

感想・レビュー・書評

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  • 会社に献本されていて何気なく手に取ったのだけど、知らないことだらけだった。三島由紀夫やら美輪明宏やらガンガン出てきて、文豪の集うバーからゲイバーが生まれ、さらに吉祥寺のジャズ文化の起源となるのもここだという。
    雑誌文化を学生時代に追っていた身としては、平凡パンチがなぜかある年代にLGBT総合誌のようになっている、という指摘も面白い。
    学生時代を思い出した頃に、当然新宿二丁目の話なので唐十郎(私の大学で教鞭をとっていたのだ)の名前も出てきて、さらに突如ロラン・バルトの「表徴の帝国」に二丁目ゲイバーマップが載ってる、という衝撃の話題が出てくる。記号論をまがりなりにも学んだ人間として彼の名前もこの著書の名前も当然知ってたが、本を読んでなかったことが15年越しにばれた。

  • 違いは世界を豊かにする、そんな図書館のコーナーから手に取った1冊。ノンケの理解を得るにはまだまだ遠い世界かな、と。難しかった。

  • <目次>
    序章
    第1章  ”ゲイバー”はいつ日本にできたのか
    第2章  伝説のゲイバー・ブランスウィックの二つの顔
    第3章  「二丁目」のきっかけとなったイプセン
    第4章  淫風の街
    第5章  よそ者たちの系譜
    第6章  零落の時代
    第7章  「要町」と呼ばれたエリア~分断された街
    第8章  ゲイバー街の成立条件
    第9章  ハッテン場の持つ磁力
    第10章  アングラ文化の渦中で花開く
    第11章  平凡パンチの時代
    終章

    <内容>
    日本のゲイ文化について、新宿二丁目を核としながら紐解いていく。大変まじめな分析で、著者もそちらの人。資料の読み解きやインタビューをくりかえし、丁寧に説いていく(解いていく)。三島由紀夫はともかく、夏目漱石もその気があったというのは初耳だった。

  • 私は2年前から新宿二丁目に通っているのだよ。
    本当に興味深くて。
    通うようになったきっかけは、私の好きな人(超ノンケ男性)が二丁目に連れて行ってくれたことなんだけどね。

    タイミングよくというのか、約1年前、大学の同級生の男の子からゲイのカミングアウトを受けた。その場で「二丁目に行ってる?」と聞くと、「行ってない」「えー、私は最近よく行っているから、一緒に行こうよー」と約束した。ほどなく彼も、二丁目の常連客となった。

    彼から、「なんでひさPはそんなに二丁目が好きなの?」と何度か聞かれた。確かに、そう不思議がるのも無理はない。

    私は今のところ男性が好きだし、超マジョリティ。
    それでも生きづらい的な気持ちに陥ることがずっと、しばしば、あった。そういう時によく「こんなマジョリティの私でさえこんなにしんどいのに、セクシュアリティとかあるいは出自とかほぼ先天的なことでマイノリティとして生きることになった人はどげんしんどいやろうか」と想像した。

    でも、テレビの中のおねえタレントのように、彼らは明るい。明るく見える。
    どうしたらそんなふうになれるだろう。そんなふうに振舞えるだろうと思って、彼らのことを知りたい、近づきたいと思った。

    そんな思いで、学生の頃からLGBT関連の映画や本は比較的摂取してきた方かと。そして、娘の手がかからなくなってきた頃、ちょうど連れて行ってくれた人がいて、はまってしまった。単純に飲み屋街が好きということももちろんあるのだけど。

    そんな私にとって、その街の来し方を教えてくれた本書は本当にありがたい。
    ていうか、私は枡野浩一さんの著書を通じて二丁目の伏見憲明さんのことをよく拝見していたので、この本は読まないわけにはいかなかったし、読了した今 a Day in the lifeに行かないわけにいかない。
    だーかーらー、早くコロナ収束して!

  • 自分の書きたいことを、全開で書くと引いてしまう

  • 新宿二丁目
    2020.3.13読了

    本書は序章もあるように、「なぜ、どのように、そしていつ頃、新宿二丁目は"二丁目"になったのか?」という問いを探る一書である。

    新宿二丁目に所謂「ゲイバー」が集まった経緯を、関係者への取材、当時の関係雑誌、当時の小説などからその歴史をていねいにひもといている。

    特に、「新宿」という街がカウンターカルチャーやアングラ文化の渦の中心であり、『あらゆる種類のヒトやモノを無差別に受け入れる』場所であったことは興味深い。少数派を受け入れる「新宿」という街の懐の深さが、"二丁目"という特殊な場所を作り上げた一因であろう。

    また、1960年代ころの同性愛者に対する世間の目や評価が散見された。当時、同性愛者であることをカミングアウトすること、またゲイバーを開業することがどれほど覚悟がいることか改めて感じることができた。
    昨今、自身の性的対象について語ることのハードルは低くなり、SNSを通して自身のプライベートを発信する同性愛者も少なくない。このような(まだ根強く偏見は残っているが、当時と比べて)寛容な社会が形成されるに至ったのも、先人たちの社会との、偏見の目との、戦いの結果であることを忘れないでおきたい。

  • 東2法経図・6F開架:367.9A/F96s//K

  • 新宿二丁目の成り立ちを、関係者への取材や過去に出された研究書を元に明らかにしていく。新宿二丁目について「ある程度知っている人」に取っては面白い内容だけれど、二丁目に関して全く知らない人に取ってはやや難解な部分があるかもしれない。
    個人的に興味深かったのは二点。
    一つは、後書き的な文章の中で書くに当たって取材協力している方々の名前を列挙して礼を述べているのだが、その取材協力者の中に「神名龍子」という顔見知りの人物の名があったこと。そうか、二丁目については龍子さんに直接聞くことが出来るのかと言う思い。
    もう一点は、作中に東郷健の名があったこと。
    東郷と関わりのある街として、新宿ゴールデン街がある。そのある店に入ったときのこと。マスターの物腰がおかまチックであったことから、会話の中に東郷健の名前が出た。そのとき、自分が「東郷が選挙に出たとき応援していたのは雑民の会のメンバーでしたね」と言うと、マスターは「よくそんな昔の事を覚えているわね」と言ったと同時に、自分に対する接し方が代わり、手製のオムレツを作ってご馳走してくれた。本書の著者は東郷の事をあまり評価していないようであったが、個人的には二丁目とおかまの関係を語る上で、重要な人物の一人であろうと思っている。

  • ニ丁目の、多様性を受け入れる素質があったのではという歴史的背景が興味深かった。

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著者プロフィール

1963年生。作家、ゲイバーのママ。慶応義塾大学法学部政治学科卒。1991 年に『プライベート・ゲイ・ライフ』にてゲイであることをカミングアウトし、90 年代のゲイ・ムーブメントに大きな影響を与える。2003年に『魔女の息子』で第40回文藝賞を受賞して小説家としてもデビュー。2013年、新宿二丁目にゲイ・ミックス・バー「A DayIn The Life」を開店。2017年、ウェブマガジン「アデイonline」を開始。

「2017年 『エッチなお仕事なぜいけないの?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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