ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106108204

作品紹介・あらすじ

この世には「反省以前の子ども」が沢山いる。認知力が弱く「ケーキを等分に切る」ことすらできない――。人口の十数%いるとされる「境界知能」の人々に焦点を当て、彼らを社会生活に導く超実践的メソッドを公開。

感想・レビュー・書評

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  • ぜひ、オビにある「三等分したケーキの図」を見てみて欲しい。

    小さい子どもは認知が上手くできないものだ、という話を聞いたことがある。
    通常、成長過程でそうした機能は高度化していくのだろうが、ずっとそのままだったとしたら。
    性犯罪を起こしたり、感情のコントロールが効かない少年たちは、自分をどのように見ているのか、というと「自分は優しい人間だ」と言う。

    こうした「反省以前の少年たち」を、遠い目をしては見られない自分がいる。
    自分自身がそうした少年に関わったこともある。
    また、女性にとって小さい頃にイタズラ目的で怖い思いをした率って、恐らく低くないと思うからだ。

    少年たちは社会から虐げられるほど、更なる弱者を見出して、捌け口とする構図があるのなら。
    それを教育の力で、「防ぐ」ことが出来るのなら。
    それはまだ見ぬ被害者と加害者の救いになるのではないだろうか。

    筆者からはコグトレという認知能力を高めるトレーニングが紹介されている。
    図形の書き写しや、感情の可視化、集中力のつくものなど、色々あって面白い。
    こうした「どうすればいいか」に答えてくれる一冊は、本当にありがたい。

    学校に行かない(行けない)子どもが増えている。
    学校に無理に行かせない保護者も増えている。
    自分一人に最適化された社会なんて存在しないのと同じように、学校も誰か一人に向けて居心地が良いことなどありえない。

    筆者は社会的なトレーニングが学校で行われないことを問題視しているけれど、そもそも学校という場が社会である。
    その中で、少数派へのサポートが足りていない面は必ずある。
    こういうことを考えていると、行きたくても行けない子に対する手厚さとか、多様性に行き着いて揺れる。
    けれど、それは学校そのものがなくてもいいという答えにはならないように思う。

    話が逸れたかもしれないが、こういった個々の弱点を踏まえて、だからこそ、多数の人間が一緒に生活する場の意味もまた取り上げて欲しい。

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著者プロフィール

立命館大学産業社会学部・大学院応用人間科学研究科教授。京都大学工学部卒業、建設コンサルタント会社勤務の後、神戸大学医学部医学科卒業。神戸大学医学部附属病院精神神経科、大阪府立精神医療センターなどを経て、2009年より法務省矯正局宮川医療少年院法務技官・児童精神科医として発達障害や知的障害をもった非行少年への教育プログラムの開発やグループ運営を行ってきた。その他、幼稚園・小・中学校などの学校コンサルテーションにも従事。2015年、女子少年院である交野女子学院医務課長、2016年より現職。現在、少年院矯正教育から学校教育等へ効果的な教育法・指導法など研修会等を通して紹介している。医学博士、臨床心理士、日本児童青年精神医学会認定医、日本精神神経学会専門医。
主な著書に、『教室の「困っている子ども」を支える7つの手がかり──この子はどこでつまずいているのか?』(共著、明石書店、2014年)、『不器用な子どもたちへの認知作業トレーニング』(共編著、三輪書店、2014年)、『コグトレ──みる・きく・想像するための認知機能強化トレーニング』(単著、三輪書店、2015年)、『性の問題行動をもつ子どものためのワークブック──発達障害・知的障害のある児童・青年の理解と支援』(共著、明石書店、2015年)、『1日5分! 教室で使えるコグトレ──困っている子どもを支援する認知トレーニング122』(単著、東洋館出版社、2016年)などがある。

「2017年 『教室の困っている発達障害をもつ子どもの理解と認知的アプローチ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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