「面白い」のつくりかた (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106108303

作品紹介・あらすじ

どうしたら人の心をつかむ企画が思いつけるのか。「安易な共感を狙うな」「アイデアは蓄積から生まれる」――「面白い」を追求してきた著者がそのノウハウ、発想法を披露した全く新しいアウトプット論。

感想・レビュー・書評

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  • 面白いとは、差異と共感の両輪
    差異=〇〇だったのに、××だった!

    無知から知らなかったことをはじめて知る状態→差異
    上記のプロセスに感動を覚える=面白い

    差異を感じさせて心を動かした後に、共感させることで人々はそれらに魅了される

    共感だけでは、一定数を集めることはできても、面白い作品にはならない

    新しいアイディアや企画は、既存の要素の新しい組み合わせからなる
    資料集め→情報を咀嚼→組み合わせ

    創造とは記憶である。
    何もない所からは何も生まれない。
    知見や経験から新しいアイディアなどは生まれてくる。
    型破りはまず型を知らなければできないもの。

    「3人寄れば文殊の知恵」
    →ある研究では、似たり寄ったりの3人が集まると、意思決定の質が著しく低下することが明らかに。
    違うジャンルの人を集めて話をしたら良い

    合わせ鏡の法則
    →聞き手と話しては不思議と似たような話ぶりや態度になりがち、質問が抽象的だと答えも抽象的。逆にも然り。
    自分が本音で話していないと、相手も本音で話をしてくれない

    前倒しの合理性
    →会議の前に何を話すか、何が目的かなど整理しておくと、実際の会議の場で普通だったら気付けないようなところが気付けたりと、余裕が生まれる。

    人には分かりやすく説明するべき。ただ近年、分かりやすいし理解はできたけど面白くないという現象が起きている。
    面白いをプラスで求めるのであれば、分かりそうでわからないところを目指す。
    レオナルドダヴィンチのモナリザ。奥深い感じ。
    この感覚が強力な求心力を持つ。

    付箋貼りで話す順番、何を話したいのか、オチはどうするなど整理する。

    名作に共通する3部構成
    ①問題提起     25% この時の問題提起が重要
    ②問題の複雑化   50%
    ③問題解決     25%

    クリエイティブな仕事が捗る理由はお金や報酬じゃない。
    本人が楽しい面白いと思って自由に取り組める環境が大事。




  • 数々のドキュメンタリー制作で知られる佐々木健一氏の著書。
    「面白い」という抽象的な感覚を言語化してくれている。ただ、あくまで映画やドキュメンタリーといった分野での「面白い」の印象。
    英語でいうとfunnyよりinterestingに近い。
    ただ、自分もテレビマンとしてのキャリアを積み上げていく予定なので、大変参考になった。

    以下、勉強になったことを簡単にまとめます。

    ・面白いとは差異と共感の両輪。差異が関心を生む。意外性によって視聴者の心を揺さぶり、その上で人物に共感を覚えてもらう。
    ・新しいものを生むには過去を知る。「想像とは記憶である」(黒澤明)アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせでしかない。
    ・似たような意見や志向の人が集まると知的生産のクオリティは低下する
    ・徹底した取材と様々な制約が良いアイデアを生む
    ・「合わせ鏡の法則」で相手の本音を引き出すなら、自分が本音で語らなければならない。
    ・十分に事前リサーチをする。
    ・テーマより取材が先。事実を丹念に取材することで描くべきテーマは浮かび上がる。
    ・演出とは状況設定である。しっかりと狙い(意図、想定、仮説)を定め、様々な準備を怠らない。人の出入りの動線やカメポジなど空間の確認、レンズはノーマルかワイドか、などなど。
    ・過去の出来事も構成や見せ方の工夫で魅力的に描ける。
    ・仕事は前倒しでやる。ナレーションになりそうな文言やキーワードに出くわしたら、その都度書き留める。
    ・被写体と仲良くするだけでは、豊かに描けない。取材相手との関係性を示しながら見せる。
    ・ナレーションで前振りした内容がインタビューと被るのは、なんでも後付けにする制作スタイルが一因。分かりにくい=面白くないとは言い切れない。
    ・ドキュメンタリーを作るときは構成のことしか考えない。ちゃんと他の要素とつながっていくか。登場人物の構造に理由と帰結があるか。(ジェームズ・マーシュ監督)
    ・事前構成を積極的に作成する。ドキュメンタリーの物語は(制作中に)発見されるべきと思っている人もいる。作品を作りながら発見に対しても目を見開いておく。最初に組んだ構成を変えてしまう発見であっても。(ジェームズ・マーシュ監督)
    ・三幕構成が基本構造。1幕:2幕:3幕=1:2:1。1つの幕が次の幕に向かって物語を引っ張っていくから三幕構成と呼べる。
    問題提起、問題の複雑化、問題の決着といつ3つのパートに別れる。つまり問いこそが視聴者を物語に引っ張る。
    ・問題提起は普遍的な問いになることが多い。
    ・作品のクオリティーは情報量で決まる。
    ・主観的に捉えている現実に近く、情報を受け取りやすいものを好む傾向にある。大量の情報も受け取ってもらえなければ意味がない。

  • テレビ番組(主にドキュメンタリー)の面白さとは、という視点でまとめられた本。

    興味深かった点はいくつかあったが、最も納得したのは以下の点。
    ===
    テレビは、googleの逆をいけ。
    多くの視聴者がテレビに求めているのは、いい番組や面白い番組を見せてくれること。dボタンで何ができたり取ってつけたような双方向性(tiwtterのコメントを載せたり)をテレビに求めてはいない。
    一方通行の受動メディアであるテレビの最大の強みは、視聴者に「偶然の出会い」を提供できること。「たまたま見た番組が面白かった」これである。

  • 「面白いとは、差違と共感の両輪である」
    アイデアは組み合わせによって出来上がる。組み合わせとは足し算や、掛け算のことだけを言うのではなくて、引き算も含まれる。たとえばツイッターは「従来のブログ機能」にあえて「文字数の制限」を組み合わせた結果成功した。
    「合わせ鏡の法則」取材をする時、自分自身の姿勢が相手にも反映される。テンション高く聞けば相手も高く、抽象的に聞けば抽象的に、論理的り聞けば論理的に答えが得れる。相手の本音を引き出したければまず自分が本音を語ることが大切。
    「わかりやすさ」=「面白さ」ではない。しかし、「わかりそうでわからない」というものは吸引力を持っており、興味を持続させる。「モナリザ」のように、わかりそうでわからないものは面白い。
    あらゆるコンテンツは「構成」から逃げられない。ほぼ全てのコンテンツは「時間」という概念に縛られている。始まりがあって終わりがあるコンテンツはすべて「構成」が関わってくる。
    構成する上で役に立つ手法がペタペタ、壁一面に場面を書いた付箋をはって、それを見て貼り替えて全体を構成する。この方法は全体を俯瞰できるので良い。プレゼン、本の内容など幅広く転用できる。
    世の中の名作と言われている創作物に共通する構造として三幕構成がある。「問題提起」「問題の複雑化」「問題の解決」の順番に進む。25.50.25パーセントぐらいの割合である。前の幕が次の幕を押し進める形が理想である。問題提起(問い・謎)が一番大切であり、物語の芯になるのでしっかり考えるべきである。
    世の中のコンテンツは「人間とは何か?」というテーマを大なり小なり内包している。
    人間の視細胞は中心にあつまり、主観的な視点では中心のものは大きく見える。ジブリなどはその特性に合わせ主観的な世界を描いている。
    単純作業では金、クリエイティブな作業では内発的動機がモチベーションになる。
    「現場の人間が、前のめりで取り組む状況をいかに作れるか」これが本来あるべきプロデュースやマネジメントの肝であり、そうした中から革新的な作品も生まれる。
    リモコンを押すだけで気楽に見られるテレビ番組をきっかけに、時に自分でも予測しなかった「新たな自分」が掘り起こされ、世界が広がる。そうした「偶然の出会い」を演出できるのがテレビの醍醐味である。負荷が少ないのも強み、自分から検索しなくても良い受動メディアのため楽である。
    コンテンツが競い合う時代。テレビは大量生産・消費型のスタイル。ネットの動画配信サービスは、会員制で顧客を抱え込む方向。お客さんを逃さないために優れた作品を独占配信しようと動いている。長い間多くの人が好きな時に見ることが出来る。この流れが進むと、これからは個々の作品のクオリティーがより重視される時代が訪れる。その時問われるのは「作品を生み出す人=クリエイター」の存在価値。一つの作品と一つの人格は不可分。一方日本のテレビ業界は、分業制で署名性が乏しい。誰の作品か曖昧で矜持が失われる。
    各媒体は今後、他と違う良質なコンテンツをどれだけ抱えているかが勝負になる。客を呼び込める魅力的な作品ラインナップをどれだけ揃えられるかによって視聴者数や契約者数も変動する。
    世界ではコンテンツ優位な状況でクリエイターに還元されるようになっている。しかし、日本では「番組の著作権が放送局に帰属している」ためあまり還元されない。すると、手間をかけてクオリティーの高い番組を作っても、次々に新作を作らなければ収益が上がらない。利益を上げるために予算を切り詰めるという発想になり、演出も挑戦的なものを避けるようになる。その結果、現場は疲弊して、面白いコンテンツも生まれなくなる。いい作品を作り、ヒットした場合、制作した当事者に利益が還元されるなら、クリエイターは「より良いもの」を作ろうとするのは当然。良質なコンテンツができるとお互いに得をする。動画配信サービスはそのことについてわかっているのでそっちに流れてしまう。権利の問題は業界全体の問題、業界の活性化のためにも考えなければならない。

  • ドキュメンタリーをもっと観てみたいと思った。「取材」という概念はジャーナリストだけのものでなく、今すぐに自分の日常に取り入れられる事だと知った。日々取材に取り組んで生きていきたい。

  • 「面白いとはなにか」、クリエイターという立場で“個性”や“視点”を養ってきたつもりだったが、突き抜けた「何か」を見出せなかった。そんな暗中模索状態の中、シンプルに出会ったこの題名の本。求めていることが書かれているのではないかと、手に取ると早速目から鱗。ページ数も少なく、すぐに読み終えられるわかりやすいクリエイターの技術本といえる。
    ・「面白い」は共感と差異
    ・徹底した取材から見出す「さらなる問い」
    ・紡いだ練りに練った構成から見出す非・予定調和
    ・優れた作品は期せずして三幕構成 比率は1:2:1
    特になるほどと感じたのは
    ・アイデアは記憶と記憶の掛け合わせ

    クリエイターとしての視点を肥やしていく教科書と言ってもいいだろう。読んでよかった。

  • テレビ番組ディレクター経験者による仕事の哲学

    ドキュメンタリーの作り方論が主となるが、
    表現や仕事に対する思いが熱く、
    作り手側としてでなくても多くのことに参考になりそう。

  • 特に目新しい要素はなかった

  • 著者はNHKで長くテレビの制作に関わってきた
    人です。ゆえにテレビにおける『面白さ』につ
    いて語っています。

    テレビ番組と言ってもバラエティではないです。
    主にドキュメンタリー、ノンフィクションです。

    その種の番組において『面白い』と視聴者に感
    じさせるにはどうするべきか。

    そもそも『面白い』と人が感じるのは、どうい
    う時なのか、あらゆる角度から考察します。

    何もテレビ関係の人だけに対してではなく、最
    近よく聞くクリエティブさを求められるビジネ
    スパーソンにも、大いに学びと気づきを与えて
    くれる一冊です。

  • 【所蔵館】
    羽曳野図書センター

    大阪府立大学図書館OPACへ↓
    https://opac.osakafu-u.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2000940533

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著者プロフィール

1943年東京都生まれ。東京大学文学部フランス語フランス文学専修課程卒業。同大学院人文科学研究科美学芸術学博士課程修了。埼玉大学助教授、東京大学文学部教授、日本大学文理学部哲学科教授を歴任。元国際美学連名会長。現在、東京大学名誉教授、国際哲学系諸学会連合副会長。文学博士。1982年、『せりふの構造』でサントリー学芸賞受賞。著書に『せりふの構造』『作品の哲学』『ミモザ幻想─記憶・藝術・国境』『美学辞典』『美学への招待』『日本的感性─触覚とずらしの構造』『ディドロ『絵画論』の研究』ほか。

「2016年 『講座スピリチュアル学 第6巻 スピリチュアリティと芸術・芸能』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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