トラックドライバーにも言わせて (新潮新書)

制作 : 橋本 愛喜(はしもと あいき) 
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106108549

作品紹介・あらすじ

幅寄せ、路駐、急ブレーキ……どれも理由があるんです。公道でとかく悪者にされがちなトラックとドライバー。そんな彼らの“複雑な事情”を元トラックドライバーの著者が徹底解説。街でトラックを見る目が変わる!

感想・レビュー・書評

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  • 女性の大型トラックドライバーによるエッセイ。
    大型トラックの事情がいろいろ分かる。
    ちょっと見方変わった。

    ・トラック運転手がハンドルに足を上げて休憩するのは足のむくみ解消の為。
    ・路上駐車が横行するのは某社の「ジャストインタイム」方式の為、早く着いても構内に入れてもらえないことが要因の一つ。
    ・サービスエリアに長時間滞在するのはドライバーを守る法律の為に休まないといけないのに休む場所が他に無いから。
    ・高速出口付近のサービスエリアが混雑するのは“会社の命令で”ETC深夜割をねらう必要があるため。
    ・渋滞時に車両間隔をあけてノロノロ運転するのはトラックの仕様上、一旦停止すると再起動に多くのエネルギーと手間が必要なため。
    ・車間を詰めてくるトラックが多いと感じるのは、運転席の視界が高い為、車間が良く見えて距離を詰めやすいのと、距離があったとしても普通車から見て大きいので圧迫感があるという複合要因。

    体力仕事のイメージが強いけど、大きなマシンを運用する職人的な側面も強く、その制約と法律と会社のルール等とうまく付き合うスキルがあり、会社を超えたドライバー同士の横のつながりも大事にしていて印象変わった。

    他に眠気対策をいろいろ頑張っているのも参考になった。
    自分も時々ウトウトしてしまうので。

    「煽り運転は、「凡人」が「高級車」に乗ると起きやすいように感じる。」は名言。

    トラックの話も面白いのだけど、前半の著者の人生も読み応えある。
    こっちの話ももっとしてほしかった。


    最後に備忘録として、トラックドライバーさんの横のつながりの象徴ともいえる慣習を引用しておきたい。ちょっと長くなるけど短い言葉で伝えられないので大半を転記。

    「あなたが普通自動車のドライバーだとして、赤信号を先頭で右折待ちしている。
    自分の車の後ろにトラック。対向車線にはこれまたトラックが同じように赤信号を待っている。
    こういう場合、信号が青になった瞬間に、対向車線のトラックはすぐに直進せず、あなたを先に右折させることが多い。
    あなたのためでなく、後ろのトラックの為にしている。そうでないと車幅が大きいトラックの後ろが詰まるからだ。」

  • メイドインジャパンを誇る某自動車メーカーが
    嚆矢と言われます「ジャストインタイム」。

    これこそが物流社会にブラック化をもたらした
    元凶である、と著者は指摘します。

    定刻に荷物を届ける為に、早出や早着時の時間
    調整など、拘束時間が長くなる条件が揃ってい
    るのがジャストインタイムです。

    今や宅配便さえも時間指定が当たり前です。

    こんなサービスは海外では有りえないので、人
    手不足業界であっても外国人には理解できない
    ので、彼らを雇うこともままならないそうです。

    経済の血液とも言割れるほど重要なピースを担
    っているトラック物流が、このような状態にあ
    ることに非常に驚かされます。

    日本経済に先行きを語る上で欠かせない一冊で
    す。

  • 先日よく聴くラジオで紹介されていた橋本愛喜さん

    トラックドライバーの現状を当事者として、またライターとして、それぞれの目線で偏ることなく分かりやすく書かれていました
    新書に苦手意識がある私でも最後まで読めました

    『送料無料』『再配達』の問題はニュースでも取り上げられていたけれど、ここまでしっかり知れたことはなかったです
    そしてあの悲惨な事件のことも
    お客様至上主義って日本人のサービス精神の賜物とは思いますが、誰かの犠牲のもとに成り立っている…と私たちサービスを受ける側も忘れないようにしないと
    ネット通販で指ポチで簡単にお買い物ができてしまうから余計にね

    日本の流通を担うトラックは『国の血液』によく例えられる

    本当にそうだと思います
    詰まらせて心筋梗塞を起こさないようにしなくては

  • 元トラックドライバーの筆者が、とかく邪魔者にされがちな運送トラックについて、トラックドライバー側からの意見を、正々堂々と表現した本。

    一般的に疎まれるとされるような行動にも、それなりの理由がある。
    物流の中心選手たるトラックドライバーの意見をきちんと聞いてみよう。

  • トラックドライバーが書かれた書籍だと知り購入しました。
    ドライバーの方の過酷な労働環境に驚きました。休みを入れられているのに、休む場所がないとは。

    トラックとはあまり関係しないのですが、第4章が興味深いものがありました。近年の交通事故を著者の目線で考察されています。

    運転教本としても参考になると思いました。

  • トラックドライバー。規制改革、新自由主義の歪みが最も現れた分野じゃないだろうか。経験者が語るブラックな現状。

    日本の物流はトラックが支えていると言って良いだろう。宅急便だって店に並ぶ商品だってほとんどがトラックによる配送。当然運転するドライバー。

    働き方改革が叫ばれながらも相変わらずブラックな職場であるトラックドライバー。高齢化も進んでいるようだ。

    筆者が本書を書き終える直前に起きた京急線とトラックの衝突事故。トラック業界の苛酷な現状を象徴した事故。筆者の筆にも力が入る。

    ふと見ると道路はトラックで溢れている。今の便利な世の中、トラックドライバーの恩恵を受けない人はいない。経験談から将来の物流の展望までミクロ、マクロ双方の視点からトラックドライバーの世界を語った楽しい一冊でした。

  • トラックドライバーという職業の特性と苦悩を、客観的事実と元トラックドライバーならではの血の通った体験から立体的に描き出した力作。

    近年、物流危機と物流活性化は同時に進行していたが、2020年4月現在その傾向は加速する一方ではないか。
    ここに描かれているドライバー視点のみが物事の真実ではないだろう。しかし我々、トラックに乗らない人間が知らなかった真実であることは確かだ。

    バリューチェーンに思いを馳せ、堅牢に見えるトラックとそのドライバーの繊細な人間性、多様性を想像する。
    本書はそんな思考の変革をもたらす一歩となる。

  • 読む前には、もっと軽い感じのお仕事紹介エッセーに見えた。読み始めると、かなりの濃い内容であることに驚く。物流というインフラ産業の戦士たちの苦労が、すいすいとわかる筆力と編集力。けっこう凄い。

  • 大型自動車免許を取得し、平均1日500キロ、繁忙期には800~1000キロ走行していた「女性」中・長距離ドライバーが書いた本。女性目線ではなく、男女問わないドライバー目線で書かれている。大型トラックの運転の特殊性・諸事情、乗用車から一段高い運転席から見える光景、死角・深視力・内輪差・リアオーバーハング等が、わかりやすく書かれている。トラックドライバー同士のほほえましい交流についても書かれている。また、トラックドライバーの態度が悪いと受けとめられている理由をいくつかあげながら、トラックドライバー=底辺職というイメージの背景と、それを是正していくためにも必要なトラックドライバーの働き方改革について、荷主や物流の問題点についても指摘しつつ、提起している。 
    著者は、大学卒業後「シンガーソングライターになりたい」と、ニューヨーク音楽留学を計画していたが、プラスティック金型研磨の町工場を経営していた父が病に倒れ、その後を急遽引き継ぐことになった。経営を引き継ぎ、納期交渉や見積もり作業、仕事の管理事務だけでなく、現場作業を行うとともに、大型免許を取得し「平ボディトラックでの金型引取り・納品業務」を担っていたという、なかなかの人物。現在は、工場を閉めてフリージャーナリスト。大学の専攻はジャーナリズム、約1年現場を離れニューヨーク生活でえたという経験等が、今回の著書にも生かされている。経歴がユニーク、何よりエネルギッシュで、今後のジャーナリストとしての活躍に期待。
    運送をドライバー目線で見直すために好著。運送に関わっていない人にもおすすめ。

  • トラックドライバーのことを尊敬し、配達員の方々にありがとうを伝えたくなる1冊でした。

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