ビートルズ (新潮新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106109225

作品紹介・あらすじ

流行音楽は忘れ去られるのが常。なぜ彼らだけは例外なのか。解散半世紀でも、時代、世代を越えて支持され続けるビートルズ。音楽評論の第一人者が、彼ら自身と楽曲の地理的、歴史的ルーツを探りながら、その秘密に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 一見ビートルズの入門書に思える体裁だが、内容はずいぶんマニアックだ。

    たとえば、最近ビートルズの音楽を聴き始めたという高校生が、「彼らについて一通りのことを知りたい」と考えて本書を手にしたなら、内容の半分も理解できずに目がテンになるだろう。

    ビートルズの歩みが書かれた本には違いない。が、彼らが影響を受けたさまざまな音楽についても深く掘り下げているし、彼らが育ったリヴァプールの街やイギリスという国の歴史についても深く言及している。

    ビートルズを世界史の中に位置づけ、彼らの音楽をポピュラー音楽史の中に位置づけた本なのだ。
    内容を要約するなら、「ビートルズをフィルターにして辿ったポピュラー音楽史」といったところ。

    なので、単純にビートルズの概説書を期待して読むと、思いっきり肩透かしの内容であろう。ビートルズそのものよりも、そこから掘り下げた解説のほうがメインなのだから……。

    「ビートルズのことを知りたくて読んだのに、著者はどうして脱線ばかりしているのだろう?」と、首をかしげ続けた読者も多いはず。しかし、著者には「脱線している」という意識はないに違いない。

    ベテラン音楽評論家の著者としては、いまさら普通のビートルズ入門など書きたくなかったのだろう。そういう本ならもう汗牛充棟なわけだし……。

    入門書としては不適当だが、ビートルズやポピュラー音楽史にくわしい人が読む分には、わりと面白い内容になっている。

    ちなみに、新書のビートルズ入門では、きたやまおさむの『ビートルズ』(講談社現代新書)が、個人的にはいちばんよかった。本書にピンとこなかった人にオススメ。

  • タイトルそのまんまですね。ビートルズの全部を網羅しているダイジェスト版かと思ったら、ビートルズの原点というか、影響元の話が主でした。なのでこれを楽しめる人は相当な通になるでしょう。僕はそこまでではないのでこれは範疇外だったかもしれません。
    しかしビートルズが地元でどんな音楽を聴いて、どんな空気感の中で音楽活動していたかを知れるのが興味深い。前史的に感じる古いポピュラーミュージックから、今聞いても古びないエバーグリーンな音楽を作り出した彼らに感謝。

  •  「なんで今頃ビートルズなの?」という声も聞こえてきそうですね。単なるビートルズ入門書ならば,わたしも手に取って読んでみることはなかったでしょう。本書は帯にもあるように「世界史の中でビートルズを読み直す」という内容になっています。ですから…他の人も書いているように…ビートルズのことや,彼らの曲の一般的な解説書だと思ったら大間違いです。
     わたしにとっては,とても興味部会内容の本でした。ビートルズが生まれる前からのリバプールやイングランドの社会的な情勢,あるいは,ビートルズの音楽に影響を与えたかもしれないいろいろな音楽的な状況などについて,具体例を挙げながら教えてくれます。
     著者も書いていますが,今の時代,昔の曲目を聞こうと思えば,スマホ等ですぐに聞くことができます。今回も,本書をめくりながら,10曲ばかり,50年代~60年代の音楽を聴きながら読んでいました。なかなか新鮮な経験でした。『蜜蜂と遠雷』を読んだ時も,演奏曲を聴きながら読んでいたのだったなあ。便利な世の中だよ。
     これをキッカケに,またまたビートルズを聴いてみたくなりました。公式のLPは全て持っていますので。

  • ビートルズだけではなく音楽の歴史に精通していないと深く理解できないように前半は感じました。自分は現代音楽(ロック)の造詣が浅いので知らない固有名詞ばかりでした。
    ただ幸いにも、アンソロジーという映像記録はビートルズファンの師に借りて見ていたので影響を受けた数名はぼんやり記憶にありました。

    一般的なビートルズ特集だと、ジョンやポールにスポットが当たりがちと感じるのですがこの本の著者は意外にジョージ贔屓なのかな?と思いました。
    ビートルズで一番好きな曲が『Something』なのでなんだか嬉しかったです。
    ジョージに影響を与えた人の娘がノラジョーンズというのは知らなかったので驚きました。

    何故ビートルズが老若男女問わず時代を超えて聞かれ続け愛され続けるのか、自分では言語化できませんでしたが、P203で引用されているスティーヴジョブズの言葉「人生で起きることの大半は、ボブ・ディランかビートルズの歌にある」を読んで、腑に落ちた気がします。納得です。

    ジョブズのアップルとの話やストロベリーフィールズフォーエヴァーの制作秘話も興味深かったです。
    良い音楽を作るために試行錯誤したビートルズの気概や、その時の創意工夫が現代の楽曲づくりに脈々と引き継がれている、というかビートルズが始めたものが続いている、嗅覚の鋭さという部分に感心です。
    やっぱり稀有な存在でしたし4人だからこその影響力だったのだなと感じました。

  •  ビートルズについては「数え切れないほど本が出版されている」(p.4)けれど、「本が触れるにつれて、重複を避けるための専門化が進み、細部の記述が詳しさを増しています。しかし皮肉なことに、細部に詳しければ詳しいほど、ビートルズの全体像がかえって見えにくくなっているようにも感じられます。」(同)ということで、「この本ではむしろ森林浴のようにビートルズの魅力を味わい、その背景や歴史に思いをはせ、かつて受けた印象やいま受ける印象について語ろうと思います。」(p.5)という本。
     今度おれはリヴァプールに行くのだけど、リヴァプールといえばビートルズ、というのは知っているが、英語の教員なのにビートルズについて全く知らず、なんか入門書的なものはないかなと思って、とりあえず見つけた本。
     ただ当たり前かもしれないけど、やっぱり色んな曲の名前を知らないと、あるいは当時の有名なミュージシャンの名前とか知っていないと、固有名詞が多いところはとっても分かりにくかったし、読むのが難しい。他のクラシックの本とかもそうだけど、やっぱり曲を聴きながら読むとかしないとなあ、と思った。けどそれができなかったので、これから聴くためのメモを箇条書きで。
    ・「マギー・メイ」(p.42)…「リヴァプールの伝統的な音楽にはあまり縁のなかったビートルズですが、彼らが演奏した地元の民謡が1曲だけ残っています。」という、船員たちの間で歌われたという曲。
    ・「ラヴ・ミー・ドゥ」(p.44)…「イギリスのEMIのパーロフォン・レーベルから発表した公式のデビュー・シングル」で、1962年発売の曲。
    ・「フリー・アズ・ア・バード」(p.67)…「メンバーが自分たちの過去を振り返ってまとめた作品ならではの客観性があり、ビートルズらしさがヴァーチャルに凝縮されている」
    ・ビートルズの曲ではないけど「ジス・イズ・アメリカ」(p.71)…「差別や銃問題などアメリカ社会の抱える問題を描いた曲でした。ヒップホップ調の曲が最優秀賞レコードに選ばれたのは史上初のことで(略)、その中にも彼がジム・クロウのポスターを連想させるようなポーズをとる画面が出てきました」とか、授業で使える曲だろうか?
    ・「トゥモロー・ネヴァー・ノウズ」(p.172)…「ジョンがインド音楽を参考に一つのコードで同じメロディだけをくりかえしてうたう」。『チベットの死者の書』からインスパイアされた歌詞?があるらしい。「幼いころから叔母に育てられ、10代で母を交通事故で亡くしたジョンは、欠落感や壊れやすい心を人一倍強い自我に隠してガキ大将を演じ、指導力を発揮してビートルズを成功に導いてきました。しかし人気や名声が心の空白を埋めてくれたわけではなく、悩みを抱えたままいわば本能的に『ヘルプ!』と叫んでいた」(p.173)という部分で、やっと生い立ち的なものを知った。
    ・「ラヴ・ユー・トゥー」、「ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー」(p.180)…「西洋のポピュラー音楽のアーティストがインドの古典音楽に、異国趣味や道楽やパロディの対象以上のものとして、敬意を払って取り組んだはじめての試み」。
    ・「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」(p.189)…「スティーヴ・ジョブズとビートルズを結びつける重要な曲」。アップル社同士の係争の話、とか全然知らなかった。
     他には、「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」って英語の授業では中1くらいの定番曲だけど、これは「ロンドンのクラブでジャマイカ系移民や白人の一部の若者に聞かれていたスカのリズム」(p.156)だそうだ。スカ?っていうのを初めて聞いた。
     それからビートルズのメンバーがインドとかに興味を持った時期があった、という話があったが、「1960年代の中頃にジョージ・ハリスンはインドの古典音楽の楽器シタールを弾き始めた。最初は『ノルウェーの森』の中でちょっと弾いただけでしたが、その後しばらく自分の曲では同じくらいシタールを演奏していました。」(p.166)だそうで、シタールってどんな楽器でどんな音が鳴るんだろう、とか正直確かめてみたい。「ビートルズのシタール使用はドラッグ体験と結びついた音の万華鏡とでも言うべきサイケデリック・ロックの幕開けをつげるもの」(p.185)だそうだ。あとはビートルズと直接関係ないけど、アメリカのアンクル・サムの軍人募集のポスターは、「その元になったのがロード・キチナーのポスター」(p.147)だそうだ。
     ということで、知らないことづくしで読むのも大変だった。少しはビートルズのことが分かったかもしれないけど、やっぱり曲を聴かないと、という感じだった。(24/07)

  • 一歩引いた感じのビートルズ本
    色々なワールドミュージックからの影響を指摘
    アイルランドとの延縁
    インド、スキッフル、スカなど
    YouTubeで再生しながら読む

  • ビートルズの本はあまたあるが、この本では、ビートルズが影響を受けた音楽やその当時の英国の音楽事情に焦点を当てた一冊。ビートルズの音楽自体にのみ興味がある人には、お勧めできません。私は、充分楽しめました。

  • メンバーの誰がどうして、何して、何を言って、この曲がどんな風にできて、バンドとしてどうなって、というのをもう少し読みたかったが、それは参考文献に挙げられていたハンター・デイヴィスの本や「ビートルズ アンソロジー」にあたってください、ということなのだろう。この本は、ビートルズのメンバーは生まれも育ちもリヴァプールだが祖先・音楽にアイルランドのルーツを持つことなどをはじめとした、メンバーが影響を受けた音楽--スキッフル音楽、黒人音楽、ラテン音楽など--や、ヒットした時代の状況といった主に背景の部分に多くのページが割かれ。トゥモローネバーノウズの詞にチベット死者の書、シタールなどワールドミュージック取り入れの先駆け、ジョージ・マーティンがいたからこそ、メンバーは遊び心や実験を極められた、コンサートやめたことによる音楽の可能性の開花、といった部分には興味を惹かれた。後半は、アップルとスティーヴ・ジョブズのアップルの係争なども語られ。彼らはお互いに属してる、というジョージの妻パティの言葉。レットイットビーの未編集フィルムなど再編集したGet Backは観てみたく思った。

  • ビートルズがこんなにも幅広い音楽から影響を受けていたとは知らず、驚かされました。『リビルバー』『サージェントペパーズ』あたりの録音の背景が特に興味深かったです。

  • ビートルズのことを知る入門書

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