- 本 ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106109836
作品紹介・あらすじ
ブレない人、正しい人と言われたい、他人に認められたい――集団の中で、人は常に承認欲求と無縁ではいられない。ともすれば無意識の情動に流され、あいまいで不安な状態を嫌う脳の仕組みは、深淵にして実にやっかいなのだ――自身の人生と脳科学の知見を通して、現代社会の病理と私たち人間の脳に備わる深い闇を鮮やかに解き明かす。五年にわたる思索のエッセンスを一冊に凝縮した、衝撃の人間論!
感想・レビュー・書評
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これ、かなり面白かったです。めったにつけない★5つにするか迷ったぐらいです。
中野信子さんは私とほぼ同世代のとびっきりの才女だと思います。中野さんの著書はけっこう好きで読んだのはたしか、この作品で9冊目になります。そこそこコアな中野ファンと言っても良いでしょうか。
これだけ面白い本なのにこの感想を書いている時点でのこのアプリでの本書の評価が3.17とは意外です。著者がバカには読めない本と過激なこと書いちゃったりしてるので、やっぱり好みの問題もあるんでしょう。
本書はそれまでの中野作品とは少し趣きが異なっており、エッセイ的というか自伝的要素が多分に含まれている新書となっています。オブラートに包まない本音がバンバン書かれているなという印象です。
何なら新書って言うよりハードカバーで出しても良かったんではないかと思いました。
脳科学の視点から中野さん自身や人間の傾向などのようなものを解き明かしています。
誰にでも承認欲求はあり人間ほどこの欲求が強い動物は他にいない。中野さん自身もとある男性とのやり取りでまざまざと自身の承認欲求を思い知らされたことが書かれています。
著者の体験を通して、自身をコントロールしようとしている人には必ず心のスキマ=不安があり、ここを突けば好意を得られるらしいです。
生きていく上で、あいまいにしておくという解決法をもっておくのは極めて重要で、わからなさとの共存も大事だと。脳は複数の考え方をあいまいなまま抱えておくことは心地よくないものだが、分からないを受容することが長期的に見れば自分を守るための有効な手段になりうるとのこと。私のなかに腑に落ちるものがあり、納得感がハンパないです。
正義中毒についても言及されています。
人間は、正義の味方としてルールから逸脱した誰かに制裁を加えることが快楽となる。糾弾は自省よりたやすい。不謹慎を叩く快感。自分とは全く無関係な赤の他人の不倫のバッシングはまさに最たる例ですね。
所詮他人事の「どうでもいい」という絶妙な距離感が大事で「どうでもいい」という感覚は投げやり的に見えるが、他人に一貫性を求めず、社会を健全に保つには良い距離感を示す絶妙な指標かもしれません。
とこんな感じのことが解説されています。
それにしても著者が表面的にも読めるが裏の意味的なものも含んで書いているとありましたので裏の意味が大変気になります。私は著者の言うところのバカなのかよくわかりませんでした。どなたかご教授頂ければ幸いです。
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脳についてわかりやすく書いてある。
脳を知りたいと思った時の初期段階の内容。
なので、私は面白く読めた。
中野さんの性格が私にも当てはまる所があり、共感できた! -
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「脳の闇」中野信子著|日刊ゲンダイDIGITAL
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/b...「脳の闇」中野信子著|日刊ゲンダイDIGITAL
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/3197072023/03/08
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自身の体験を交えて書かれていることから、エッセイ本のような感がある。なので、読んでいて「勉強している」といった感覚はなく、「読み物として面白い」。
個人的には、読み進めるうち「橘玲の本っぽいな」とも思った。
(電子書籍に収録されているかわからないけど)あとがきまで、ぜひ読んでほしい。いや、むしろあとがきから先に読んだほうがいい。「バカには読めない本」「あなたの知的水準がいまいちなのは私のせいではない」と、はっきり書かれている。著者のスタンスが分かる。
内容とは直接関係ないが、
“~だけれども。”という言い回しが目立った。いたるところに、“~だけれども。”があって、これは何かを意図しているのだろうか?と思ったほど、この表現が多かった。それがクセなのか、わざとなのか、わからないのだけれども。 -
中野信子さん大好きで、共著含め23冊目です。
今回はちょっと難しいし、辛辣です。
これが初めての中野信子さんだったら、
もう次は無いかも?いや、どうかな。
あ、面白かったし、たくさん教えてもらえたし
読んで良かったです。
でもたとえば
〈オカルトみたいな話で、どうも気が引けるけれど、
子どもの頃から、あの人がいなくなればいいのにな、
と思うといつの間にかその人が病気になってしまったり、
その人が消えてしまえばいいのにと強く思うと
本当に死んでしまったりしたことがあった。
もちろん、偶然だろうと思ってはいる。
けれど、説明をつけることができなくもない〉
これ、怖くないですか?
さらっと通り過ぎでしまいそうだけど。
朝井リョウさんが切り貼り怖いとどこかに書いていたので
このたび中野さんに敬意を表して
なるべく誤解のないように載せたつもりですが。
(余談ですが、最近岡本カウアン君の発言をしばしば見て
感心することがたくさんある反面
時々「え、それ言って大丈夫?」と。
都合よく切り取られるのではないかと心配してしまいます)
と言いながら、これからも中野さんに必死についていきます。
そんな私の脳はどうなっているんでしょうね。 -
やっぱり好きだな~中野信子さん。いつ読んでも良い。彼女の悩んでいる姿は同性でも色気を感じてしまう。皮肉が小気味良く響く。論調にビリビリと痺れる。私がファンになる人達は色気を伴い私にビリビリと電流を流してくる。その色気と電流に上せファンになるのだ。
色々な話題がエッセイ的に分散しているので痺れポイントを全ては書けないので絞ると「一番安い物を選ぶタイプ」。「周囲の人に恵まれている時はいいのだが、他人を操作するタイプに出会った時にその標的とされて被害を受けやすい。」…その通り。「自分を粗末に扱うことに慣らされ、搾取されることがあなたの存在意義だと教えられて、そこから逸脱する事を許されて来なかった。」中野氏も若い頃はそんな部分があったとある。早めに気付いて良かった。母親から距離を置き精神的自立に成功している。「自分を粗末に扱わない、という態度は自分をリスクから遠ざけ、自分は大きな価値を持つものだと、自信をもって言う事が出来る。」共感しかない。拠り所と知見が無く感覚の鈍い人達なら家族とは仲良くやっていくべき、という昔ながらの社会から押しつけられた国家運営に都合の良い通念を無条件に信じ、親のことを嫌うなんて可哀想な事だよね、等と言うだろう。自分の心を守ることが一番大事な事なのに、こちら側の事情等を推察するという概念や配慮、想像力も無い。
「気難しい自分の扱い方」
「相手に合わせるためのやる気を出すことが不可能なのである。」「この相手に合わせることによるメリットはコストに見合わない」…共感しかない。孤独になりたくないだけで合わない誰かと一緒に連むくらいなら進んで孤独を選びたい。ずっと気楽だ。「素焼きの器を障ることが出来ない。そこにある潤いを貪欲に奪っていくという有り様が、どうも気に食わない」この方、図々しくないんですね。そして今まで他者から図々しくされてきた経験があるのでしょう。嫌気が差している。女性は図々しさが出て来ると若くても醜く見える。(美しさに老若男女は関係無いですが)私の周りにも図々しい女性が沢山居る。辟易する。ヘドが出る。自分が醜く見えてることに気づかない。中野氏のいう「いい人仮面」をつけているので自分は「いい人」を演じているんだろうけれど勘が鋭い人はすぐに見抜く。その醜さを。印象も含めて顔。造作が良くても醜く見える。
中野氏が美しく見えるのは彼女の純粋な精神性。顔に出てる。
中野氏とは凄く気が合いそう。多分お会いする事はないだろう事は残念だが、彼女の知的レベルについて行けるように今後も勉強していきたい。
アポロンとカッサンドラの引用、格好いいね!
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脳科学者の著者が、雑誌に連載した論考をまとめ、脳科学から自身の半生までを綴ったバラエティに富んだ一冊。
いくつか留めておきたい片句が。
第二章『脳は、自由を嫌う』で、脳は自由が嫌いなのだと論じ、政治家などに対し、論理的な根拠もなく、この人に味方したいなどという気持ちを感じたら、「これは脳に仕掛けられた罠かもしれないと、立ち止まるくせをつけて欲しい。その人が正しいわけでもなんでもなく、ただ脳内麻薬を分泌させられているだけなのだから」と、警告する。
おりしも統一地方選挙のただなかであるし、心に留めておきたい文言だろう。
第三章『正義中毒』では、誰しもが陥る正義中毒について論じる。
「ネットなどで第三者がさしたる根拠もなく他人を断罪してしまえるのは、正義の執行自体が快感であることに加え、他人を『あいつはダメだ』と下げることによって、相対的に自分が置かれている階層が高くみえるからである」
著者はこの快感にハマってしまうことを「正義中毒」と読んでいる。
第八章『言語と時間について』では、言語を持っている特殊な生物である我々は、思考の上で時間軸に沿った移動が出来る、と。
未来や過去を思えるゆえ、過去を思い出して現在に役立てたり出来る一方で、未来を悲観して不安に苛まれたりしている。
少子化が未来を悲観してというのが理由なら、世代を超えた緩慢な自殺と言っても言い過ぎではないかもと、まで著者は言っているが。 -
昨今メディアへの出演をよく見かける脳科学者の中野信子さんの連載をまとめた書籍。
とにかく次から次へと脳の作用が明かされる。
研究結果からくるもので「確かに」と思うことが多い。同時にこんなにも多様な考え方があると、もはや自分を信じられなくなり本をぶん投げたくなる(絶対にしないけれど)気持ちにもなる。
言語化できない気持ち、日々起こる出来事をどう捉えるかを考えるうえで、メタ認知がとても大切なのだと学んだ。
悩み足掻くことは生きているということで、安易に解決すればいいわけではない。そして何より多くの人が悩みの重荷と感じているのは「解決できない問題」ではなく「解決できない感情」なのだという指摘は腹落ちした。
生きるのが大変な時代ではあるが、一つの考え方を得ると救われることもある。
著者プロフィール
中野信子の作品






もちろん、それは、TAKAHIROさんの感想にある...
もちろん、それは、TAKAHIROさんの感想にある「著者がバカには読めない本と過激なこと書いちゃったりしてる」を見て、オレがバカなのかどうなのか試してみようって張り切ったわけですね(爆)
中野信子は前にヤマザキマリとの対談本『パンデミックの文明論』を読んで、トンデモなことからの発想を飛躍させるところがユニークで面白いと思った反面、バラエティ番組の御用学者っていうイメージが強くて。
ぶっちゃけ言うと、あんまり印象がよくなかったですね(^^ゞ
ただ、TAKAHIROさんの感想を読む限り、自分の考え方と似た考え方をする人なんだろうなーっていうのは思ってました。
(実際に会ったらとんでもなく頭がいいであろう人に、自分と同じ考え方をする人なんて言ったらおこがましいですけどねw)
そんな感じで読み始めたわけですけど、これって、前書きと後書きはともかく、中身は雑誌に連載していたものだったんですね。
それを踏まえると、例の「バカには読めない本」は、中身ではなく、前書きと後書きにこそあるんじゃないでしょうか?
ていうか、雑誌連載の中身は「バカには読めない本」を成立させるために
、うまく“使った”みたいな感じ?
そんな風に考えると、この本っていうのは、学者である中野信子と、本を書いたりバラエティ番組に出ている著者が抱えるアンビバレンツを「わかってよ!」という本なのかなーって自分は思いました。
つまり、私(著者)は「迷わない人」ではなく、本当は「迷う人」なのだから、「迷う人」は私(著者)を「迷わない人」と思わないでね、ということを著者は言いたいんじゃないか?って。
ただ、自分が思ったそれは、著者が書いているように、“ほとんどの人間は聞きたいことしか聞かない”、“その上、自分の話したいことにしか関心を持たない”ってことにすぎないのかもしれませんけどね(^_^;)