移民リスク (新潮新書)

  • 新潮社 (2025年2月15日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784106110771

作品紹介・あらすじ

クルド人=政治難民というイメージ、メディアによる入管行政への批判、移民先進国ドイツの先例――人口減や人道的配慮など移民を受け入れるべき理由はあるものの、このまま押し進めて本当にいいのか? 欧州事情に通じたジャーナリストが、クルド人問題に揺れる埼玉・川口、彼らの故郷トルコ、移民流入に悩むドイツ、「入管の闇」問題をめぐって現地徹底取材。国家の基盤を揺るがす「日本的ゆるさ」に警鐘を鳴らす。

感想・レビュー・書評

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  • 川口市在住で蕨駅が最寄りです。クルド人騒動は有名ですが私の生活圏内はいたって平和だと思っていました。SNSでクルド人の悪行が避難されていますが、そういった人たちはごく一部で、日本人のほうがよっぽど悪い人がたくさんいると思います。

    しかし、外国人の犯罪率は日本人と比べるとやや高く、中でもクルド系のトルコ人の犯罪率が特に目立つ年もあると知り驚きました。しかし、川口市全体で見ると犯罪件数は減少傾向にあり、市が無法地帯というSNSの書き込みは実際とは違います。ただ、地域住民が迷惑を感じている問題も確かに存在すると感じています。

    また、親につれてこられたクルド人の子供は、母国でも日本でも差別を受けて「アイデンティティのはざま」で悩むこの移民問題の犠牲者であり、親だけ、子供だけを母国に返すわけにもいかない複雑な事情もあることを知りました。

    また、本書では人口減少による労働力不足に対する解決策の一つとして外国人受け入れは重要ですが、社会に溶け込む仕組みや教育、サポート体制づくりを行い、ルールや倫理的問題はよく議論して政策を実行しないと、社会の分断が起きてしまうということをドイツの移民受け入れ政策失敗の教訓としています。

  • 「この分野の著作物の9割方が、不法残留者に同情的、入管行政に批判的な中にあって、本書がそうした通念を相対化し、幅広い視点で考えるきっかけになれば幸いである。」
    本書のおわりに記された一文であるが、まさに本書の価値を物語っていると言える。
    本書では、第1章でクルド人問題について取り扱い、第3章ではドイツの移民問題を取り扱っているが、特におすすめしたいのが、第2章で取り扱われている入管のことである。入管の組織や難民に関する業務について分かりやすく解説されている。

  •  取材先は興味深いのに、まとめ方は偏っているように思える。日本の難民認定を扱った第2章も結論がやや強引だった(入管での死亡事件を擁護してる点は、はっきり無理筋)。
     右翼メディアだけを真だと念頭に置いて書いたのだろうか? それともある種の迎合だろうか?
     以前のヨーロッパ取材本とはレベルが違う。

  • 埼玉のクルド人問題等、あまり報じられていない移民に関する現状について書かれていて参考になりました。

  • 少子高齢化が、進む、わが国。解決策の一つとして、移民を受け入れようという意見がある。しかし、その前提として、我が国の言葉、法律、習慣等をきちんと習得させることが、必要。つまり、郷にはいるなら、郷に従え。である。この基本的なことが、わからない外国人が、問題を
    起こしているが、その問題点の指摘に対し、それは、ヘイトだ、差別だというメディア。本書は、報道されない現実を的確に知らしめてくれる。移民受け入れは、慎重な準備と覚悟が必要だと思い知らされた。

  • 川口市のクルド人問題を通じて移民の受け入れ問題を議論。
    ドイツなどヨーロッパを事例に取上げ、急激な移民の増加は、既存の価値体系、文化を壊すと理解した。

  • とても良い。話の流れがとてもよい。ツカミは移民の身近な困りごと、トルコに取材に行くと違う事実があり、帰国して改めて考える、読者も同じ学習をトレースする。その流れがよい。事実の集め方も無理がない。
    まずは川口市でのクルド人の迷惑さ、国内でトルコ人と抗争。これに対してトルコでの取材で初めて分かるのは、多くのクルド人はトルコで争っていない。政治的に極右のクルド人政党のみが、エルドアン政権と抗争。大多数のクルド人は普通のトルコ人。その理解で日本で改めて取材、考え直す。結論、難民とは「帰国すると逮捕や弾圧」を受ける人。日本で難民申請をしているクルド人はほとんどそうではない。難民申請書の内容を見れば分かる。面談に来ない。面談で「自分は難民じゃない。申請は却下していい。仕事が忙しいから帰っていいか。」。却下されて再申請を繰り返すのが一番簡単に居続ける方法。
    日本は難民に厳しいか?。欧州と比較。ドイツでもクルド人は難民認定率が低い。本当の難民はシリア、アフリカ紛争地帯など。ドイツの難民の犯罪などの話がやたら詳しい。
    欧州は地続きで、本当の難民が来る。日本に来るクルド人はトルコから飛行機で来る。観光で入って不法労働をして、つかまってから難民申請する。難民が飛行機で来るか?。送り返すのも飛行機。。。
    結論は意外に普通。問題は犯罪だから、犯罪歴のある人を再入国させない方法が有効。ビザなし往来が悪い。ビザ復活である程度解決するぞ、でした。。

  • 情緒的なサヨクの不法移民擁護がメディアを占める中、実態に基づいたバランスの良い内容。

  • 近年の問題をジャーナリスト視点で切り込む。
    移民や難民や定義はあれども、海外から自国に来ている人と区別はあると感じた。
    そのための法治国家として、法律や条例などのルールで対応する必要があるのだろう。
    まだまだこの問題に向き合い始めたばかりな気配に感じ、冒頭にある試金石なる事例から状況はつかんでおきたい。

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著者プロフィール

1959年生まれ。東京大学教養学部相関社会科学分科卒。1982年読売新聞入社。バンコク、プノンペン、ベルリンの各特派員を経て編集委員。米ハーバード大日米関係プログラム修了。著書に『ドイツリスク』(光文社、山本七平賞特別賞)、『本音化するヨーロッパ』(幻冬舎)など。

「2021年 『日米の絆 元駐米大使 加藤良三回顧録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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