三島由紀夫全集 (29)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (793ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106425691

作品紹介・あらすじ

恋愛の哲学から技巧までを懇切に指南した「新恋愛講座」他、「亀は兎に追ひつくか?」「現代小説は古典たり得るか」等、昭和30〜32年の多様な作品129編。

感想・レビュー・書評

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  • ★すべて美しい 極度の商業主義支配なのに売笑的な美がない
    ★十二月のはじめ私はグリニッチ・ヴィレッジに移った


    ハドソン河畔の初冬の日差しは、ニューヨーク市内よりも明るく思われる。満々たる水の上を白い油槽船が、河岸の枯れ木のレエスを縫って通る。対岸のニュージャージー州も、煙ったような枯れ木林の鶯いろに覆われている。落ち葉をふみわけて川岸へ、斜面の小道を下りてゆくと、下枝の少ない木々は乾いた白っぽい色をしていて、みな同種の樫である。
                     「旅の絵本」

    諸用でNYに何日か滞在したのですが、たいしてブラブラする自由な時間が取れないのに、どこかへ出かけるときにはその土地に関係ある本を読まないと気がすまないのが、いつもの私の悪い癖です。

    NYといえば『ガラスの街』『幽霊たち』『鍵のかかった部屋』というポール・オースターのニューヨーク三部作はもちろんですが、11月25日の没後42年で回顧していて、ふと三島由紀夫が朝日新聞の通信員として半年程かけた世界一周旅行後1952年に出した紀行文集『アポロの杯』、あるいは1958年に上梓したニューヨーク紀行『旅の絵本』を思い出して読み返していました。

    世界のいくつかの都市、NY・ロンドン・パリ・上海・モスクワ・北京・ベルリン・マドリード・ローマ・ウィーン・ハノイそのほか30箇所あまりの街には特別の様々な関心もあって、できればガイドブックがなくても自由に行き来できるようにと、まだ見ぬいつ行けるかもしれない場所も含めて、最新地図はもちろん見所味処案内から歴史散歩それにその街が描かれている文学紹介本にその実作品まで暇に任せて読んでいます。

    そういえば、そういう文学紀行的な本の最初は、中学の入学式の帰りに古本屋で手にしたスーザン・エドミストン/リンダ・D・シリノ(刈田元司訳)『ニューヨーク文学散歩』(朝日新聞社1979年)でした。二人の作者はNY生まれの女性ライターで、NYはアメリカの文学首都であると宣言し、序文で「本を生き甲斐とする者にとって、読む本は、我々が直接参加する事件と同様、我々の個人的な歴史の一部となる。架空の場面が我々自身の経験と同じような現実感をもって燃えるのだ」と書いていてひどく共感した覚えがあります。
     
    ところで三島由紀夫は、NYで誰よりも早く見た「マイ・フェア・レディ」を、ほかのミュージカルを見た上で、やはり一頭地を抜いたものであると思った。最高の水準を統合したものである、と絶賛しています。

  • 2009/9/24図書館で借りる
    2009/

    ・わが古典
    古今集と大鏡がおもしろいと言っている。古典は自分で読んで、自分の好みの古典をみつけるべきである。


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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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