- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106435447
作品紹介・あらすじ
女は俺の成熟する場所だった-。昭和七年三〇歳。熱く劇しく過ぎた青春の痛覚を鋭く語った「Xへの手紙」…。そして三一歳の洞察、「故郷を失った文学」。
感想・レビュー・書評
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小林秀雄は、自分には何しかできないのかを定めるために、随分と遠回りしてきたようだ。誰かの作品をだしにして、長い時間をかけてドリップした。少しずつ、ようやっと見えて来た様だ。「誰にも見られていないときにこそ、本当の自分がいるんだ。」(田中泯,2012年7月20日,朝日新聞)という言葉を思い出した。
「何よりも先ず理論を、態度を、姿態を強請する今日の文学は、徒に党派の意匠を競って論争し、現実の実質乃至は形式に対する鋭敏遅鈍に関しては一切口を噤んでいる。こういう時にこそ作家はその独立とその孤独を最も必要とするのだ。己れを棚に上げた空論が、己れの姿をかくしている時、そういう時にこそ、作家は各自手をつくして、その宿命、その可能性、その欲望を発見しようと努める可きである。『私達には、自分の考えを他人の表現に従って理解することが無暗に多すぎる』とヴァレリーは言った。」(p21「現代文学の批判」)
「『人間が理想を掴むのじゃない。理想が人間を掴むのだ』とシラアはいったそうだ。この逆説は正しいのである。『確かに理想を捕えるのは人間だが、理想は常に人間より現実的だ』と。」(p104「年末感想」)
「他人の作品に、出来るだけ純粋な文学の像を見ようとして、賞賛したり軽蔑したりしつづけて来た事が、何か空しい事であった様な気がしてならぬ。文学でもなんでもないものを強いられて、文学でもなんでもないものの為に辛労して来た様な気がしてならぬ。」(p193-194「批評について」)
「人は様々な思想に準じて様々に文学作品を解釈するが、先ず無私な文学的イリュウジョンを一様に強いるものは、作品そのものの力だ。作品そのものの力などと甚だ曖昧な言葉に聞えるが、それはこの力を分析しようとかかるから、曖昧に思われるだけの話しで、事実私達はこの力を感じて疑わないし、この力によって鑑賞という事実が成り立っているのだ。」(p204「文芸時評」)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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Xへの手紙が好きで本屋で購入しようと思い、それならと此方を購入。
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2009/
2009/
現代文学の不安. 小説の問題1. 小説の問題2. ヴァレリイの事. 逆説というものについて. 川端康成「伊豆の踊子」跋. 同人雑誌小感. Xへの手紙. 手帖1. 年末感想. 永遠の良人. 作家志願者への助言. 手帖2. 文学批評に就いて. 手帖3. アンドレ・ジイド. 故郷を失った文学. 文芸月評2. 批評について. 文芸時評. 文芸月評3. 「ハムレット」に就いて. 谷川徹三「内部と外部」. 私小説について. 「文芸春秋」の作品. 二科展を見る. 「文芸春秋」と「経済往来」の作品. 故古賀春江氏の水彩画展. 金文輯君へ. 「未成年」の独創性について. 手帖4. 文芸批評と作品. 友情と人嫌い 河上徹太郎著.