小林秀雄全作品 4

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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106435447

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  • 小林秀雄は、自分には何しかできないのかを定めるために、随分と遠回りしてきたようだ。誰かの作品をだしにして、長い時間をかけてドリップした。少しずつ、ようやっと見えて来た様だ。「誰にも見られていないときにこそ、本当の自分がいるんだ。」(田中泯,2012年7月20日,朝日新聞)という言葉を思い出した。

    「何よりも先ず理論を、態度を、姿態を強請する今日の文学は、徒に党派の意匠を競って論争し、現実の実質乃至は形式に対する鋭敏遅鈍に関しては一切口を噤んでいる。こういう時にこそ作家はその独立とその孤独を最も必要とするのだ。己れを棚に上げた空論が、己れの姿をかくしている時、そういう時にこそ、作家は各自手をつくして、その宿命、その可能性、その欲望を発見しようと努める可きである。『私達には、自分の考えを他人の表現に従って理解することが無暗に多すぎる』とヴァレリーは言った。」(p21「現代文学の批判」)
    「『人間が理想を掴むのじゃない。理想が人間を掴むのだ』とシラアはいったそうだ。この逆説は正しいのである。『確かに理想を捕えるのは人間だが、理想は常に人間より現実的だ』と。」(p104「年末感想」)
    「他人の作品に、出来るだけ純粋な文学の像を見ようとして、賞賛したり軽蔑したりしつづけて来た事が、何か空しい事であった様な気がしてならぬ。文学でもなんでもないものを強いられて、文学でもなんでもないものの為に辛労して来た様な気がしてならぬ。」(p193-194「批評について」)
    「人は様々な思想に準じて様々に文学作品を解釈するが、先ず無私な文学的イリュウジョンを一様に強いるものは、作品そのものの力だ。作品そのものの力などと甚だ曖昧な言葉に聞えるが、それはこの力を分析しようとかかるから、曖昧に思われるだけの話しで、事実私達はこの力を感じて疑わないし、この力によって鑑賞という事実が成り立っているのだ。」(p204「文芸時評」)

著者プロフィール

小林秀雄
一九〇二(明治三五)年、東京生まれ。文芸評論家。東京帝国大学仏文科卒業。二九(昭和四)年、雑誌『改造』の懸賞評論に「様々なる意匠」が二席入選し、批評活動に入る。第二次大戦中は古典に関する随想を執筆。七七年、大作『本居宣長』(日本文学大賞)を刊行。その他の著書に『無常といふ事』『モオツァルト』『ゴッホの手紙』『近代絵画』(野間文芸賞)など。六七年、文化勲章受章。八三(昭和五八)年、死去。

「2022年 『戦争について』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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