最後のレストラン Dante 1 (バンチコミックス)

  • 新潮社 (2024年12月9日発売)
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Amazon.co.jp ・マンガ (192ページ) / ISBN・EAN: 9784107727718

作品紹介・あらすじ

もしも人生と引き換えにあなたの願いが叶うとしたら――!? 偉人が訪れるグルメ漫画『最後のレストラン』新シリーズ!! 街にできた怪しげなイタリアンレストラン『Dante』。そこには有名シェフそっくりな男と不思議な少女がいて……!?

感想・レビュー・書評

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  • 一風変わったグルメ漫画の代表格として、そのタイトルが挙がるであろう、『最後のレストラン』
    この『最後のレストラン』は(23)で、「そう来たか」とファンを唸らせ、ぐぅの音も出ないハッピーエンド―少なくとも、私はそう感じているし、他のファンがこれは違うと感じている可能性もある―で完結を迎えた。
    しかし、人は食べなければ生きていけないからこそ、レストランには新たな客は訪れ続けるものだ。
    この『最後のレストラン【ダンテ】』は、『最後のレストラン』の良さを継承しつつ、先シリーズとは違った小粋なブラックさも醸しており、今後も買い続けよう、と強く思わせてくれる内容になっていた。
    まぁ、そうでなければ、感想を書いて、ファンを増やそうとは、私も画策はしない。風変りって意味合いでは負けちゃいない『フェルマーの料理番』もアニメ化が決定したので、その勢いに乗っかって、『最後のレストラン』のドラマがリメイク、もしくは、こちらもアニメ化してくれないかな、と期待をしている。
    前シリーズの『最後のレストラン』は、クセは強い、まぁ、ハッキリ言ってしまうと、クズ寄りではあるにしろ、人もとい料理人として強い芯を持っている園場凌が、人生の最期を迎えようとしている偉人や英傑を、確かな実力と枠に嵌らない機転で作り出した料理で救い、自分の人生に於ける答えを出す手助けをしていた。
    対するコチラの主人公と言うか、イタリア料理店「ダンテ」の料理人・飯屋明日太郎は見た目こそ、園場にどことなく似ているが、本性は人間ではない。恐らく、大悪魔の一角である「アスタロト」だろう。まぁ、何かの因果で園場の外見に寄せたのかは分からんが、それが原因で物の考え方が、悪魔のそれをベースとしつつ、捻くれてはいるが性根は腐っていない人間っぽくなっている。
    そんな明日太郎が作る料理を食すのが、歴史上の人物ではあるが、知名度が微妙、けど、この人たちがいなかったら、英傑の存在感が霞む、と言える役割を担っているってのがミソ。
    そんな彼らが料理を食べて救われたのか、これもまた、微妙ってのも、この作品を面白い、と感じるポイント。「ダンテ」を訪れるまでの人生が幸せだったのかとなると悩ましいが、明日太郎の料理を食べた事で、自分で気付かない内に大切なモノを食事代として払い、あんな最期を迎える事になってしまった・・・でも、明日太郎は、契約を重んじる悪魔らしく、客に対して、ちゃんと、対価について告げており、その客は自分で決断している。であれば、ある意味、自業自得で片づけてしまえる流れだ。
    悪魔だけど(悪魔だからこそ?)、憎めないキャラである明日太郎と、店長である金星流枝葉(きっと、彼女はアスタロトよりも強大にして高名なルシファーだろう)が営む「ダンテ」で、アルバイトとして働く事になった人間・ねがいが、店を訪れる、英傑の影に潜む、もしくは、土台になった者らと関わる事で、何を得て、何を学び、何を変えていくのか、楽しみでしかない。ヒロインを、顔や体に酷い火傷があり、そこにコンプレックスを抱えている(抱えていた)女子高校生にするってのが、これまた、作品に良い味を出していて、藤栄先生らしさも感じたのは私だけじゃあるまい。

    この台詞を引用に選んだのは、毒塗れではあるにしろ、あながち、的外れじゃないどころか、的のど真ん中を綺麗にブチ貫いているな、と頷いてしまったものなので。
    人間には「変わる」部分と「変わらない」部分がある。
    変化と不変、どっちが良い、悪いって話じゃなく、変わるも人間、変わらないも人間。
    変える、変わるべきなのに、変えない、変えられない、これもまた、人間の業だ。
    生贄の首を刎ね、新たな生贄を用意して、問題を解決する、もしくは、先延ばしにする、これもまた、人間が歴史の中で繰り返してきたやり口なんだろう。
    昔も今も、スケールの大小はあれ、そのやり方を続けている人間は、悪魔からしたら滑稽を通り越して、意味の分からない、何か怖い存在かもな。
    だからこそ、明日太郎は、客に「変われる」料理を作り、対価として「人生」を払わせているんだろうけど。
    「ねがいさんは王の役割ってなんだと思いマスか?」
    「え?う~ん・・・」
    「人類学から見マスとね、生贄デスよ」
    「生贄?」
    「はい、国の健全性に責任を持つ者とシテ、危機や災厄が訪れた時に生贄に捧げたのデス。ですカラ、その時までは、うんと贅沢をさせる。そして、殺すことで、神をなだめ、調和を取り戻せると信じたのデス」
    「怖いですね。でも、今は生贄なんて無いから良かった」
    「ン~フフフ、そうでショウか?」
    「?」
    「本当にそうでスかねえ?問題が起こった時、トップさえ代えれば解決すると考える人は本当にいませンカねぇ?」
    「・・・・・・あ・・・」(by飯屋明日太郎、小井ねがい)

    これもまた、確かに、と頷いてしまう、良い台詞。
    悪魔視点だからこその、地にしっかりと足が付いているアドバイスだ。
    知識はそれなりにあれど、実地経験がまるで足りておらず、何よりも、プロに必要なモノを持っていない少年に対し、こうやって、忠告をしてやるあたり、悪い奴じゃないのかな、悪魔のわりに。
    実際、人間は臆病さを失っちまうと、ロクな事をしない。
    かの有名なスナイパーも言っているもんな、大事なのは兎のような臆病さだって。
    「岡くん、これをお渡ししマス。小生の名刺デス。エクソシストは危険な仕事デス。目指すのはいいデスが、実際の悪魔祓いは、ちゃんと勉強をしてからにすべきデス。もし、万が一、危ないことがあったら、その名刺を見せなサイ。怖い、と思うことは大切なことなのデス。人間が、ここまで繫栄したのは、臆病だからなのデスから」(by飯屋明日太郎)

    もう一つ、この『最後のレストラン【ダンテ】』で、特に印象的な台詞を紹介。
    これまでの悪魔生の中で、多くの人間と関わって来て、様々な面を見てきた明日太郎だからこそ、愛に対する考え方も、どこか、人間臭くもあるんでしょう。まぁ、アスタロトは、えげつない悪臭を放っているそうですが。
    まぁ、そこはさておき、愛ってものは、人間だろうが、悪魔だろうが、天使であっても、その本質の全容は理解できないモノなんだろうけど、この考え方自体は「確かに」と納得できるもの。
    「あなたが『愛』というものを、まるで理解していないためデス」
    「はあ!?」
    「愛には上澄みと沈殿物がありマス。豪華な料理に仕立て上げられる豚肉、その陰で捨てられる臓物。あなたは、その『豪華な部分』しか理解できないのデス」(by飯屋明日太郎、ジュリー・ドービニー)

    「美しいものを愛することは誰にでもできるでショウ。しかし、人間に限らず、物事万事、美しい面だけではありまセン。あなたは、愛の表層しか見ていまセン。肉だけ食べて豚料理を語るのと同じ」(by飯屋明日太郎)

  • 主人公を変えての続編とのことですが、前作の登場人物たちも登場するので、時系列的にはまだ園場が日本を離れる前になるのかな?前作と違って偉人たちを呼び込んでいるのは明らかに人外なコックのようだが、何が目的なのやら

  • 前シリーズとはまた違った視点で良かった。ちょいブラック。

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著者プロフィール

■藤栄道彦・・・・・・

「2020年 『アンタゴニスト ④』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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