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- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120003967
感想・レビュー・書評
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幕末から戦後にかけての日本政治思想史にかんする著者の論文をまとめた本です。
丸山眞男が荻生徂徠に「作為」の思想を見いだして以来、伝統的な日本思想のうちに近代の萌芽をさがし求める議論はくり返しおこなわれてきました。著者もまた、そうした課題を継承しつつも、近代の国家が道徳によってではなく制度によって統合がなされている点を重視するという見かたを打ち出しています。
また、福沢諭吉を中心とする明治期の啓蒙主義の思想を論じた章では、カッシーラーの『啓蒙主義の哲学』にもとづいて、「分析的」であるとともに「構成的」であるという点に啓蒙主義の本質的な意義を認めるという観点が採用されています。そのうえで、伝統的な思考方式から科学的で合理的な思考方式への変革がめざされていたことを指摘します。ここにも、制度的な立場を重視する著者の立場が示されているように感じます。
「日本の近代化と戦後思想」と題された章では、「近代」をめぐる問題をとりあげる視角が、西洋の研究者と日本の研究者のあいだで異なっていることの指摘から、議論が説き起こされています。西洋の研究者の関心は、近代の客観的な徴表にもとづいて、さまざまな国における近代化の諸相を比較することに向けられていますが、日本では「近代化」が実践的な価値を担うものとして受けとられてきました。そのうえで、丸山眞男や清水幾太郎といった思想家たちが、このような課題に対してどのように対処したのかということが考察されています。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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