TUGUMI

著者 :
  • 中央公論新社
3.83
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本棚登録 : 1519
感想 : 156
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120017759

感想・レビュー・書評

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  • この頃の吉本ばなな作品が好き。

  • まりあのいとこ、つぐみは体が弱くてわがまま。つぐみの家族は彼女をいたわるあまり、彼女の乱暴な言動にも寛容。まりあもつぐみを大切に想っている。みんな、つぐみのやさしさを知っている。
    東京の大学に進学したまりあは夏休みのあいだ、つぐみのいる海辺の町に帰ってきた。
    彼女たちの夏。つぐみの恋。想像を超えた行動力。

    ---------------------------------------------

    最初からまりあがつぐみの思い出を語る感じで始まったから、これはつぐみが亡くなっちゃうラストなのかなと思いながら読んだ。死ななくて本当によかった。
    病弱なのをいいことに暴言吐きまくりのつぐみが、時折見せるやさしさはあまりにも価値のあるものに思えたし、死を意識した彼女の人生観はとても卓越していて、神秘的な存在に感じた。

    恋人である恭一の愛犬、権五郎の仇を打つためにとんでもない深さの落とし穴を掘り、くだらないガキを殺そうとするつぐみの力強さは異常だった。その後、生死を彷徨ってしまう彼女は儚すぎて、なんていうかとても魅力的だった。こういうふうに自分の良い感情にもわるい感情にも正直に行動できたら、たとえ人生が短かったとしてもそれは素晴らしい人生なんじゃないかと思う。

    父親の外向きの顔を見て、人生は演技だと思えるまりあの素敵だった。感受性が強いからつぐみの暴言の裏側の感情も読み取れたのかな。いいなあ、そういう関係。

    死を受け入れたつぐみからの手紙で締めくくる終わり方がすごくよかった。死を超えたつぐみはやさしくなっていくような感じがした。
    旅館を畳んだりして変わることもあるけれど、毎日の生活はこれからも続いてく。明日からも自分の人生を生きていく、ということはポジティブなことなんだな。
    死を想わなければ、生活が続くことの大切さには気づけない。

  • 「この夏は楽しくて、一瞬だったような、すごく長かったような、不思議な気がする」
    そんな夏がかつてあった。強烈に心に刻まれる、忘れられない夏が。

    学校へ行ったり就職したり、結婚したり子供を産んだり。
    人は変化の激しい社会の只中で、前へ前へと進んでいく。
    それでもふと立ち止まり、秘かに心の奥の引き出しに留めておいたものをそっと取り出しては眺めたい時もある。
    人には言わないけれど独り微笑む、そんな一瞬が。

    ひと夏の恋はやはり切ない。
    けれど、渇いた心を潤すエッセンスは大人になればなるほど必要。

    何十年ぶりに再読。
    読んでいると、ユーミンの「Hello, my friend」が何度も脳内で繰り返される。
    あー、今年の夏ももう終わっちゃう。

  • 久々に読んだ。初めて読んだ高校生の頃と変わらない輝きがある。

    海辺の町を舞台にして、夏に必要なものがすべてそろった最高の一冊だった。

    作者の文章が淡くキラキラしてて本当にこの物語にマッチしている気がする。
    妙に淡々としている展開も好ましい。

    これは自分の中で特別な本。

  • 面白かった。女子大学生が、育った地へ帰省して従姉妹と過ごす夏のお話。犬は死んでしまったけれど、特に何かが起きるわけではない。けど、何も起きない日常に、なんか涙が出そうになる。とても美しい小説です。

  • 誰しもが心に持っているだろう一夏のふわっとしたセンチメンタルな風景画。
    美しくも儚く、粗暴なツグミという矛盾。
    そして
    そっと主人公の心に刻み込まれるキラキラとした夏の情景。

    これを吉本ばなな特有のシャッターを通して見る。

    雪国とはまた違う、美しいと表現するのもまた違う、儚く淡くノスタルジックな小説であった。

    同じ景色をこう表現するのか。
    表現がみずみずしい。少し過度にも感じたが。
    言葉の表現の幅について今一度考えた。

    小説の終焉部の
    夜の海に立っていた恭一がどれほどつぐみを好きかということも、陽子ちゃんの涙の重さも、それは伝えられない大切な心の宝なのだから。
    そうやって、私の、夏は、終わりを告げた。

    に全部もってかれた。
    鳥肌が立つ。
    句読点の打ち方にじんわりとそっとしまう心の扉の音がきこえてくるようだ。

  • フランスに住んで、久しぶりに日本の小説が読みたくなって手にした1冊。吉本ばなな初めて読んだ。彼女の手から溢れてくる表現の豊かさに、日本語の美しさを改めて感じた1日だった。

  • よしもとばななさんの著書の中では、好きです。

  • 西伊豆土肥が舞台と聞いて、一気読み。
    秋になった季節の描写が秀逸。
    映画は、同じ西伊豆の松崎町が舞台とのこと。
    映画も見てみたくなった。

  • 2014.7.6再読
    中学生のときの初読から、もう何度読み返しただろうか。この本は、間違いなく私に本の魅力を教えてくれた、年齢を重ねながら何度読み返しても「やっぱり好きだ」と思える、特別な一冊だ。捻くれた憎たらしい子のはずなのに、何故こんなにも魅力的なんだろう。夏が始まるこのタイミングで読み返して、やってくる夏が楽しみになった。ずっと☆5ツを付け続ける一冊なんだろうな、と思う。

著者プロフィール

1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)、2022年『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアで93年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞<Under35>、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞している。近著に『吹上奇譚 第四話 ミモザ』がある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。

「2023年 『はーばーらいと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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