- Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120027192
感想・レビュー・書評
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今となっては、忘れられている作品かもしれません。映画「野火」を見て、フィリピン戦線から、生きて帰ってきた男がもう一人いたことを思い出して探しました。昭和のスクリーンで、ニヒルな二枚目を演じ続けた俳優池部良さんです。彼の、どこか、少し怖いまなざしの理由が、ここにあったということを気付かせてくれる従軍記です。
戦後50年を経て、書き綴られた戦争の日常は今でも、その「バカバカしくも哀しい悲惨」を伝え続けていると思いました。詳しくはブログで。
https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/201910130000/詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
立教大学英文学科卒業の著者(第三十二師団衛生隊・輜重第二中隊 池部少尉)の戦争(軍隊)体験記。
極寒の北支那から熱帯のハルマヘラ島へ転進、終戦に至るまでの様々な体験が克明に記される。
大卒の見習士官として叩き上げの下士官から様々な嫌がらせを受ける北支那時代、ハルマヘラ島へ移動する艦内の様子、米国の潜水艦に撃沈され海上を十数時間漂流した体験、生きて島に着いた喜びから一転、食糧不足やマラリアなどの病との闘いの日々、圧倒的な米国の爆撃になすすべもなくジャングルを逃げ惑う日々、突然訪れた終戦。その時々の会話、表情、心理、服装、気象など細部にわたる記憶力は驚異的だが、アイロニーやユーモアを交えて飄々と語られる軍隊生活から浮かび上がるのは、平時にも通じる人間模様である。この自伝がまるで小説を読んでいるような印象を与えるのは、著者が名優であったことと無関係ではないだろう。