月光の東

著者 :
  • 中央公論新社
3.21
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本棚登録 : 128
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120027529

作品紹介・あらすじ

ワタシヲオイカケテ。謎の言葉を残して消えた女。待望の最新長編。

感想・レビュー・書評

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  • 長編です。しかし、ドンドンと読み進めました。主人公を追い求めていた二人が結局、主人公の周りの人々から主人公の生い立ちや人柄を知るという形態が、面白かったです。

  • リアル過ぎたら逆にファンタジー。その逆も然り。ファンタジー過ぎたら逆にリアル。そんな感じ。物語全体はボヤッとモヤッとつかみどころがないフワフワした感じなんだけど、読んでいるその瞬間は、しっかりと一本の明瞭な線が見えている。米花と加古はカラチで何があったのか、また月光の東とは何のことなのか、不明瞭で、あらすじを紹介してといわれたらすごく困る。だけど、読んでいる瞬間瞬間のその世界に潜伏させる重力感は凄まじい。不思議な本だが、個人的には新しい読書の楽しみ方に繋がる光明。

  • 名作

  • パキスタンのカラチのホテルで自殺した加古慎二郎。
    その時彼と一緒にいたのが塔屋米花という女性。
    居所の知れない彼女が残した手紙には「月光の東まで追いかけて」とだけ書かれてあった。
    二人の同級生であり、友人である杉井と加古の妻は別々に塔屋米花の行方や足跡を追う。
    その中で、杉井は当時の記憶を思い返す。

    追憶によりよみがえる彼女のこと。
    そして行方を追う事により、新たに見えてくる彼女のこと。
    「月光の東まで追いかけて」
    当時中学生だった杉井と48歳になった加古に投げかけられたこの言葉にはどんな意味があるのか-。

    この女性嫌い!
    以前私はこの本を読んだ時はっきりそう思い、ずっとその印象だけが残ってました。
    この女性とは米花のことです。
    多分あまりに魅力的なこの女性に嫉妬をしたのもあるし、自分の魅力を十分知っていて、人を、特に男性を振り回すこの女性に苛立ちを覚えたからだと思います。
    年月を経て読み返してみると、単純に好き、嫌いで読めた頃は幸せだったように思いました。

    6歳で見知らぬ男に数日間誘拐された経験。
    アル中の父親と父親に暴力をふるわれ仕事場ではセクハラを受ける母親。
    障害をもつ妹。
    その一家にいつもつきまとう悪意ある噂・・・。
    そんな不幸な少女時代を過ごした女性は18歳にして50代の男性にパトロンになって欲しいと言う。

    結局その真実は全て彼女の口から語られず、彼女からこう聞いた、という人からまた聞きの形で少しずつ明らかになっていきます。
    だけど彼女の果てしない淋しさとか孤独とか、そういうものは想像するしかなくて、それが「月光の東」という言葉に収縮されているように思いました。
    彼女の中には常に淋しさと共に猛烈な怒りがあって、それが時折突拍子もない形で表れるのではないか?
    そう思うと、この女性を単純に「嫌い」とは思えませんでした。
    そして一冊の本の中に結論や結末が出ない事がかえって自然に思えました。

  • 塔屋米花という存在感のある女性の物語。
    50歳という人生の境目にいる。

    糸魚川・・日本海に面したさみしい街で、成長する。
    杉井が、米花を探しにまわる。  
    杉井が、結婚するときに、
    「月光の東に追いかけて」という電報をうけとる。

    杉井の同級生、加古慎一郎は、カルカッタで、自殺をする。
    そのホテルには、米花が同宿していた。

    加古の妻 美須寿が、米花をさがしはじめる。
    米花は、杉井の名前で、手紙を出していたのだ。

    アイロンをかけてもらって、着たのであるが、
    着ているうちによれよれになって、しまった。
    シャツよりもボクの心は、よれよれであった。  

  • 友達の、宮本輝作品一押しの物語でしたが・・・私にはよくわかりませんでした。

  • 作中多くの人物が出てくるけれど、彼(女)らは米花を通じ、見えないところで確かに繋がっている。 他人の目を通して描かれる、1人の女性の話。

  • あたし好みの作品。
    米花の気持ちわかるなぁ・・・。

  • なんとなく花村萬月の「皆月」を思い出しましたが、宮本輝の作品の中では「錦繍」の次に好きな本です。

  • 「追いかけてきて。月光の東まで 私を追いかけて」
    という言葉を残して去った 塔屋米花。そしてその言葉は自分にだけ残されたものではなかった。

    隠れているわけでもないのに 探している塔屋米花は確かな形で姿を見せることはなく 探す人たちときちんと対面することもない。そして タイトルにもなっている謎のキーワード「月光の東」の謎もきちんと解き明かされることはない。それなのに これ以上の終わり方はないという風にどこか納得してしまうのである。それが何故なのか、塔屋米花の圧倒的な生き方を垣間見たことで 彼女を探す人たちの中のなにかが変わったことは おそらく間違いないだろう。塔屋米花が生きている限り 謎は謎として生き続けるのかもしれない。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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