箱の夫

著者 :
  • 中央公論社
3.81
  • (9)
  • (14)
  • (13)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 83
レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120028663

作品紹介・あらすじ

夫を運ぶのにちょうどいい大きさの箱はあるかしら?"小さな"夫との奇妙で幸福な日々。しかし、ある日…。たしかな手ごたえを持っていたはずの現実が、ふとあやうくなる瞬間を鮮やかに描き出す、待望の作品集。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 大好きな川上弘美さんの書評集で紹介されていて面白そう…と思って直感を信じて、即予約しました。
    平成11年の泉鏡花賞を受賞作品。
    蛭とか蛇とかは出てこないけど『聖高野』っぽい山奥深い雰囲気。
    あと日常の世界から少しだけズレてしまって異世界で迷子になってしまったかのような幽玄な世界観がとてもいい。

    箱の夫
    母の友達
    遺言状
    泳ぐ箪笥
    天気のいい日
    恩珠(うんじゅ)
    天(アマ)
    水曜日

    どの章も全く関連がないようで単語が共通していたりするので、
    読んでいて「あれ?」と感じたり、この人とあの章の人が兄弟なのかしら…と思ったり。
    何とでも(解釈できる)自由に読めて楽しい。
    お墓に関するものが多くて少し調べながら読みました。

    『箱の夫』は、夫の正体は結局わからず仕舞いで、(たぶん…)大きさは変わらないけど毛がはえたり、ミルクを飲んでみたり、人の言葉を話してみたり…自在に変化(へんげ)しているように思えた。

    いちばん好きなのは『遺言状』。
    死んだら死んだ、それでスッパリとおしまいにしたい老人と、そうはいかないでしょ…という周囲の人物の心情の描かれ方が面白かった。

    “死者はもう死者自身のものではない。死者の子供や配偶者のものだ”(76ページ)

    タイミング的に、しみた。
    老人は自分が死んだら…と遺書を書くんだけど、本当に好き勝手に書くの。
    その後、遺書がどうなったかは秘密です。

    『水曜日』は、じわじわと展開し見事。まるで落語のようでした。

    親戚と昔話をして、周囲の人と自分が覚えていることが違っていて、“え?そうだったっけ?違うような気がするけど自信ないよ…”というモヤモヤと似ている。記憶って一体なに…と思えてくる。曖昧さって案外こわいことなのかもしれない。

  • 吉田知子さん好きならたまらないだろうと思う短編集。冒頭の『箱の夫』からして面白すぎるというか、なぜ『箱の夫』なのか、『馬絹』ってどこ?という疑問を一切受け付けないし、あえて説明もいらない。『箱の夫』『遺言状』は良いお話だが、あとは全部怖かった。一番ゾクッとしたのは、『母の友達』それから『遺言状』に出てくる東堂は、『東堂のこと』の東堂と別人みたいだけど、何か関係があるのか、同じく『遺言状』に出てくる『エス』が『恩珠』の最後にいきなり出てきて、ひょえ〜っとなったり、細かい事がいちいち気になった。ありふれた日常がくるっと反転し、その境目があやふやで本人も無条件にそれを受け入れているような様、あるいは狂っているような主人公の言っている事が、本当に起こるように思われる時間の歪み。うん、面白かった!

  • 正常だと思っていた人が、狂気の人へと頭の中で変化を遂げる。
    いつの間に変わったのか分からないほど、じりじりと。
    まるで読者を弄ぶように、ゆっくりと狂気の世界へ導くその道程の
    えっ?何?という不穏な空気が何とも怖い。

  • タイトルの「箱の夫」に魅かれて読んでみた。初老女性の日常が不気味にねじ曲がる様を描いた短編集。夕方に迷子になって、家に帰れなくなったときのような心細い気持になる。

  • ねじれていく日常の先にある異界を描いた八篇。『夢十夜』や『冥途』に通じる不条理。この人の著作に関しては、強く再版を希望します。

  • 家の中だから、安心とは限らない。家の中でも、妖しいものはやってくる。どのにいても、不穏はつきまとう。見えないふりをするのは簡単だ。でも、恐ろしいものはいつでも近くにあるんだと思う。そんな作品でした。面白かった!

  • どうしてこんなに高水準なのに文庫化していないのか疑問すぎる一冊。じわじわ奇妙さへ踏み込む様が堪らない。夫と外出するときは箱に詰め込まないと「箱の夫」、本当にこの人「母の友達」?、しんみりする普通小説も書けます「遺言状」、行き過ぎた無料譲渡「泳ぐ箪笥」、死体発見記事で陽気な気分の主人公「天気のいい日」、外国人らしき人との上手くいかないコミュニケーション「恩珠」、兄のナオに関する思い出話が妙な方向へ「天(アマ)」、お手伝い女性にはけじめをつけないと、と思いつつやはり…「水曜日」。気持ち悪さと心地良さは紙一重と感じた一冊。

  • 8つの短編のうち多くが、老人性の呆けを題材にしている。認知症の身内がいる自分にとっては、現実と当人が現実と思っているズレた世界とが、知らないうちに交錯し、入れ替わっていく様が、ありありと分かって少し息苦しくなる。どんなにリアルに描かれた物語でも、どこかで「これは本の中の世界」と思いながらページをめくるが、この本は、これまで読んだどの話よりも、現実的だったかもしれない。

  • 『お供え』より読ませるなと思った。粘っこさ不気味さが薄くなってるけど、さっぱりした分よりシュールだし、オチがワンパターンじゃない。
    「箱の夫」は意味不明だけども、なんだかハッピーエンドのような読後感。何故だ。夫が謎の可愛さだからか。1番怖かったのは「恩珠」。「母の友達」は正常との繋がりである母との電話を切りたくない、というところが怖かった。「水曜日」は途中までほんの少しハートフルストーリーを期待したけど、。現実にも起こりそう。「遺言状」、好きでした。老人→若者の構図から生まれるものとはまた違う切なさ。だんだんと、手が届かない存在になっていく対象を想うのは、なんとも言えない気持ちになる。

  • 計り知れない怖さ。

全21件中 1 - 10件を表示

吉田知子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ジュディ・バドニ...
村上 春樹
J.L. ボルヘ...
岸本 佐知子
三浦 しをん
岸本 佐知子
川上 未映子
アゴタ クリスト...
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印
ツイートする