スカイ・クロラ

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 4850
感想 : 715
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120031588

作品紹介・あらすじ

僕はまだ子供で、ときどき、右手が人を殺す。その代わり、誰かの右手が、僕を殺してくれるだろう。

感想・レビュー・書評

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  •  空を飛ぶ視点から見た、青い空、夕景から紫色に移りゆく空、図書館で見た本の表紙がとても印象的で、読んでみたかった作品です。森博嗣の作品は工学博士としての評論は別に初めて。

    Sky Crawlers  空を無限に這い回る者たちというところか。不思議な感覚が残る物語です。

    無機質とも言える短い会話
    戦闘の最中でさえ、冷徹な描写でステップが進んでいく無機質の裏側に制御され、抑制された永遠の生への不安

    「キルドレ」 大人になれないで、永遠の生を生きる存在。目的も大義名分の無く、社会の中で平和の価値を実感するためにだけ存在する”戦争”を演じる企業。パイロットの「キルドレ」達はここでようやく物理的な死を迎えることができる。空の中でしか自分の生を考えられないのか。

    「僕はまだ子供で 時々右手が人を殺す
     その代り 誰かの右手が僕を殺してくれるだろう
     それまでの間 何とか退屈しないように
     僕は生き続けていくんだ子供のまま」

    飛び立ち、戦闘から帰還してくる者たちは地上にあって、自分の終わりのストーリーを考える。

    「ただ滑らかに飛び 風を切って翻る
     その瞬間に、自分の中の無が見える
     しかしその夢心地を地上で思い出すことはできない
     どうしてもできない 自分は何者なのか
     どうして生きているのだろう」

    そして、最後のシーン。
    押井守監督のアニメ作品にもなっているそうです。

  • 森博嗣さんの本は「すべてがFになる」が初めてでした。時代背景は少し古かったけれども、そのストーリー展開に引き込まれてしまった作品でした。もの凄く面白かった。

    この「スカイ・クロラ」が森さんの2作目になります。やはり一気読みしてしまいました。ただ、おそらく本作の前後にかなりのボリュームのストーリーが展開されており、それらのどの部分に位置付けされるのかが、本作を読むだけでは完全に理解することができなかった。本の裏表紙に書いてある説明や解説も読んだのだけれど、わからなかった。

    キルドレンが生まれて来た背景、ヒストリー。ストーリーの背景となっている社会。そういったものを想像はできるのだけれど、全てを把握できなかった。私の感想の問題なのかも知れないのですが。

    おそらく、全体を読み込むとすごいストーリーなのだろうと思われる。

  • 目が覚めるような青い空を飛んでいる。聞こえるのは互いにかき消し合うステレオ音楽と飛行音。
    自由に飛び回る事が出来るのに、ちっとも自由じゃない。爽快の真反対のような気分。何もかもを諦めたような倦怠感、それを否定する所在のない希望。
    感じたのはそんなものたち。

    いつか見た映画の雰囲気と解釈が、作品の難解さを上手く補完してくれた気がします。

  • 戦闘機の戦闘シーンを文章でスピード感を損ねずに豊かな表現をされていることに感服した。

    ストーリーは謎だらけ。なぜ闘っているのかも、キルドレについてもほとんど触れず、最後ちょっとだけ。黒猫?との戦いもクライマックスにあるかと思いきや、全く戦闘シーンはクライマックスにあらず。

    世界観がわかればもう少し違った視点で見れるのかもしれない。続編が過去の話みたいなので、機会をみて挑戦してみたい。

  • 不思議な物語だ。
    この本は映画を観てから読みました。
    独特の世界観、世界のつくり方。普通の頭ではここまで矛盾しない世界は創造出来ないでしょう。
    引き込まれます。
    この本は、是非続編まで含めて全て読んでほしい。
    全て読んで、作者が創造した独自の世界を完成させてほしい。

  • ミステリィじゃない森作品。

    子どもと大人。大人になるということはどういうことなのか。
    大人になれないキルドレ。
    成長する事とは何か、老いるという事は何か。
    生きることと死ぬこと。
    何が幸せで何が不幸せなのか。

    彼らはただ空を飛ぶ。空にいることで生きていると実感する。

    無機質でさらさらと読める感覚なのに深くて考えさせられた作品。
    文章も表現の仕方も登場人物も綺麗な作品だった。

  • 何故、戦闘機に乗るのか、戦うのか、どんな社会なのか、僕ことカンナミが何者なのか、何の理由がわからないまま。
    全体的に虚無感が揺蕩う不思議な作品。
    ハインライン的世界でサリンジャー的少年が静かに生きているみたいな。
    比喩と修飾語がたくさん。どこか哲学的。嫌いではない世界なので、続きも読みたいと思う。

  • 長く静かに虚しさの漂う本だった。
    少しずつ断片的に彼らの運命や葛藤や存在を噛み砕いていく感じだった。

    「自分の弾筋を追うなんて危険な行為だ」

  • 空戦場面で細切れの言葉が連なるところとか、詩的で好き。飛行機と空の自由さと、飛行機を操縦するキルドレの地上での不自由さの対比が鮮やかで綺麗だと思う。

  • 装丁が好き。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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