仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120032172

感想・レビュー・書評

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  • 読んでみれば20年も前の本。刊行当時まさに若年だった私。そしていまだに曖昧な不安のなかで何となく仕事しているその後の私……。
    本書ではデータを裏付けにして仕事にまつわる雇用不安やフリーター問題、転職といった曖昧な不安に迫っている。データによって曖昧さがなくなるのは総じて若年に厳しい状況にあること、そして世の通説がデータ的には誤っていることだ。例えば、定年延長を含め中高年の雇用を守るような施策が打たれているが、より厳しい状況にあるのは若年層だということ。転職を重ねる人の多くはあきっぽいのではなく、逆に仕事へのこだわりが強いからこそであること。満足のいく転職を支える第一の要因は職場以外の友人・知人の存在というデータも。
    いまの時代、本当に働き続けられるのか、満足のいく仕事ができるのか、生活に十分な収入が得られるだろうかといったことは多くの人が不安に思っているだろうけど、20年前に書かれたこの本を通じて、こうした暗い風潮ってサブプライムローン以降とかでなく、少なくとも20年前からだし、もっといえばバブル崩壊の1990年代に入ったあたりからずっと続いているんだなあ。
    「曖昧な不安」の曖昧は解消され不安がはっきりするような読後感もあるけど、著者はデータを引く以外の部分でいろいろと希望を呼び起こすようなことを書いている。仕事に向かうのって気のもちようでもあるんだなあ。

  • うむ....統計学的な....堅い感じでした。
    でも最後の「17歳に話をする」の章は、著者自身のことばで、リアルな思いを綴っていて、とっくに17歳を過ぎてる私の心にも響いた。

  • 「フリーエージェント社会の到来」からの流れで図書館から借りた。タイトルからはあまり想像できなかったが、雇用・労働に関するデータを分析することで問題点を明確にしている。
    内容的には「世代間格差」「格差の固定化」「非正規雇用問題」「仕事への不満」「将来への不安」「成果主義」など、今では様々な場面で話題になっているテーマがほとんどで目新しさはない。それもそのはずで、10年前に出版されたこの本がその嚆矢だったそうな。しかし何よりこの本で提起されている問題点が現在でもことごとく変わっておらず、むしろ悪化していることに驚かされる。

    ということで、この種の社会問題について幅広く扱われ、よくまとまっているので「おさらい」としての価値は十分にあった。残念な点は、データを多用しているわりにその示し方がイマイチなこと。数値を漢数字で本文中に表記されているのでわかりにくく、つい斜め読みで飛ばしてしまう。図表と本文を交互に見比べないと数値は理解できないので、そこに工夫がほしかった。

    【印象に残った点】
    ・若年層の所得格差は広がっていない。逆に、所得に差が無くても仕事内容や厳しさが異なることによる「満足度」の格差が広がっている。

  • 「NEET」で有名な玄田氏がサントリー賞を取った著作。終章に集約されるが、これは「高校生のタメに書いたのかな?」と思わせるくらい、何というか無責任な論が続く。、専門が計量経済学の人だとはいえ、このての論で、もはや問題提起で終わるのは物足りないの一言に尽きる

  • 統計データをもとに、日本の雇用について考える本。具体事例とかは一切なくて、数字が満載のマス視点。ニートをはじめ中高年や女性や転職など話題は幅広い。

  • ささやかな誇りを持って、自分の仕事を自分の言葉で語ることそれができなければ能力があっても転職だってできない働きがある雇用機会が減るのならば、自ら仕事を初めて仕事の中身を決断する。自分で自分のボスになるべきなのだ。幅広い人間関係が武器になる。

著者プロフィール

1964年生まれ。88年、東京大学経済学部卒業。ハーバード大、オックスフォード大各客員研究員、学習院大学教授等を経て現職。博士(経済学)。
主著
 『仕事のなかの曖昧な不安』(中央公論新社、2001年、日経・経済図書文
 化賞、サントリー学芸賞)
 『ジョブ・クリエイション』(日本経済新聞社、2004年、エコノミスト
 賞、労働関係図書優秀賞)
 『孤立無業』(日本経済新聞出版社、2013年)
 『危機と雇用』(岩波書店、2015年、沖永賞)
 『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』(慶應義塾大学出版会、
 2017年、編著)
 ほか多数。

「2022年 『仕事から見た「2020 年」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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