仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120032172

感想・レビュー・書評

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  • 10年以上前に書かれた本だが、少しも古びていない。というより変わっていない。この10年でITは劇的進化したにもかかわらず仕事にまつわる環境が変化していないということであり、それは、いいことでは、ない。
    こういう良書が今でも読む価値が十分あるのはよいことだが。

    [more]<blockquote>
    P89 なぜフリーターをしているのか「自分でもわからない」という理由が最も正直な答えだろう。

    P131 格差についての意識と統計上の実態には乖離がある。そのもう一つの原因は、いま生じつつあるのが賃金格差ではなく、むしろ仕事格差が拡大していることにある。(あるときから、Aの仕事は以前と同じである一方、Bだけ仕事が大変厳しいハードなものとなっていった)

    P139 仕事に貴賎はない。しかし仕事には明らかに異なる二種類のものがある。一つは仕事をする過程で学習や訓練の機会が豊富であり、働くことで人々が能力や所得を向上させていく事ができる仕事である。もう一つは、仕事の中で自ら多くを学ぶ機会が乏しい為、その職務自体からは能力向上や働く意味を見いだせない仕事である。一部の人のみが前者の仕事に就いているとき、そこには労働市場の「二重構造」が生じているという。【中略】多くの人にとって内部労働市場が遠い存在になり、外部労働市場の中、仕事を通じて自分の成長を実現できなくなりつつある。

    P142 どんなに努力しても、他者に関する個人の知識には限界がある。むしろその事実こそが相互に尊重し合う精神を育て、社会にモラールやマナーを生むことになる。【中略】大切なのは、働く能力の高低とひとりひとりの人間としての存在価値とは全く別のものだという根本を若いうちから教育し、確認し続ける地道な作業である。

    P153 仕事ぶりに対して「普通は・・・」「・・・が普通だ」を言わない。どんな仕事にも普通な仕事などない。単純に見える仕事も、そこには常に何か異常やトラブルが発生している。「普通なら」「・・・なんて普通じゃない」という言葉を吐いた途端、仕事の中身を細かく読み取ろうとする努力は放棄されてしまう。仕事にこだわってみる。そのため仕事にまつわるあいまいな表現をできるだけ取り除き、自分たちの仕事を自分たちの言葉で語ってみる。そんなささやかな試みこそが、仕事の中の曖昧な不安を払拭する。

    P231 むやみに頑張らないにせよ、何か自分なりにはっきりした意思を持つことは大切だと思うんです。夢なんか持たなくてもいい、夢を持つだけではむしろいけないとあえていいたい。

    P244 社会に未来がないと若者はいう。確かに成長、発展という未来を想像することは、若者にとって難しい。しかし、社会には成熟という未来はある。【中略】マリーシャとはポルトガル語やスペイン語で「ずるがしこい」ということだ。それは同時に「したたか」ということでもある。若者ももっとしたたかさを身につけることで、もっと強くなり、過去の世代より成熟できる未来があるはずだ。
    </blockquote>

  • 図書館で借りた。

    若年が働かないのは中高年が働き続ける
    既得権を持っているためだ、というのを
    データを元に説明している。
    出版当時、失業率が上がっているとはいえ、中高年は
    他の世代に比べ失業率が少ないよう。

    就職活動をしていない無職の若者は
    失業率に含まれず、非労働力にカウントされてしまう、
    ということに驚いた。
    17歳に向かって語っている最後の章の印象が強い。

    各章末にデータからどのようにして推計したか、
    をまとめてあるため、統計の勉強にいいかもしれない。

  • だいぶまえに読んだけど、良かった気がします。一度読んで損はないです。

  • Nくんが入院中にプレゼントしてくれた。玄田先生を知るきっかけ。やっぱり社会学って面白いと思う。

著者プロフィール

1964年生まれ。88年、東京大学経済学部卒業。ハーバード大、オックスフォード大各客員研究員、学習院大学教授等を経て現職。博士(経済学)。
主著
 『仕事のなかの曖昧な不安』(中央公論新社、2001年、日経・経済図書文
 化賞、サントリー学芸賞)
 『ジョブ・クリエイション』(日本経済新聞社、2004年、エコノミスト
 賞、労働関係図書優秀賞)
 『孤立無業』(日本経済新聞出版社、2013年)
 『危機と雇用』(岩波書店、2015年、沖永賞)
 『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』(慶應義塾大学出版会、
 2017年、編著)
 ほか多数。

「2022年 『仕事から見た「2020 年」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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