ぼくもいくさに征くのだけれど: 竹内浩三の詩と死

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120035548

作品紹介・あらすじ

お姉さんっ子で、レコード店の娘に恋し、映画監督に憧れつつ太平洋戦争に従軍、23歳で戦死した若者が残した詩は、時代を越えて人の胸を打つ。25歳の書き手による、瑞々しいノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • フィリピンで戦死し骨すら帰ってこなかった青年、竹内浩三が残し、さまざまな経緯を経て世に知られることになった詩を通して、戦争とは何か、詩とは何か、を問いかけるルポルタージュだ。

    職業詩人ではなく、映画監督になりたい学生だった竹内浩三。姉の目を通して語られる姿はお調子者で甘えたところもある憎めない青年で、そんな彼が遺した何気ない言葉が、胸に迫る。
    まだ若い伸びやかさと諦念が入り混じった言葉。平明な単語で語られ、でもだからこそはっとさせられる。

    本作の著者(稲泉氏)が若いのにも驚かされた。
    浩三が死んだ23歳という同じ年齢で彼の詩に触れたために興味を持った、といい、刊行された年に25歳。語り口や視点は落ち着いていて、いっそ老成した印象さえ受ける。

    四半世紀も生きていないふたりの青年が不思議に共鳴した一冊だった。

  • 「恋人の眼や ひょんと消ゆるや」小林察(新評論)
    をずいぶん前に読んでいたのですが…
    ほとんど記憶のかなたになってしまっている
    それでも
    「骨のうたふ」をこの世に残した
    竹内浩三さんは
    ずっと
    気になっている詩人のお一人です

    稲泉連くん(!)のまっすぐな志が
    竹内浩三さんのご遺族、
    そして、彼の存在を遺しておこうと
    された様々な方たち、
    の気持ちを開かれたのだと思う

    竹内浩三さんには
    もう逢うことは叶わないけれども
    その純粋な気持ちを持った若者である筆者が
    その純粋な気持ちを持ったまま戦場に消えた
    優れた詩人の輪郭を描きとどめた
    一冊になっている

  • 「そんなまぬけなぼくなので
    どうか人なみにいくさができますよう
    成田山に願かけた」p.23

  • by『復興の書店』←読まず
    大宅賞受賞作
    ----------
    『僕らが働く理由、働かない理由、働けない理由』
    『命をつないだ道 東北・国道45号線をゆく』
    『仕事漂流 就職氷河期世代の「働き方」』

  • 昔、戦争から帰還した教師が「戦争で死んだ友人たちは本当に優秀だった。彼らが生きていたら日本は変っただろうに」とのコトバを思い出した。

    映画監督になる夢があった青年は戦争に出かけ23歳で戦死。竹内浩三の詩は、自分は何であったのか、何であろうとするのか・・戦争とは何なのか、を平明な言葉で綴る。

    23歳の青年(著者)はその詩に感動し竹内と今の自分の接点とは何かを語り継ごうと筆を起こした。

    自分で生き方など選べなかった世代の深い慟哭を知ること。それが自分の生き方を考える糧になる。

    竹内のなんと瑞々しい感性。大好きな姉の哀しみの深さも素晴らしい筆力。

  • 自分が死ぬこと、大切な人が死ぬこと。
    まだ実感できない私は甘ったれ。
    それでも同い年で、
    同じように空を見上げながら、消えて逝った彼は。

    生きる実感がもてないってことは、
    死ぬ実感がないってこと。
    死を意識しながら生きるのが難しい今は
    幸せだけど怠惰で。

    なんて陳腐な言葉たち。
    もっと、もっと 自分の言葉で綴りたいのに
    どうしたってどこかでg売りしているようなものばかり。
    もっと、もっと 自分で言葉に出来たらいいのに。
    こんな安い言葉で書くのは無礼きわまりない。
    漠然としたコレをうまく伝えることのできる力が欲しい。

    私はアウトプットがすごく苦手で。
    今日までたくさん
    言葉に出来なくても、確実に伝わるものが
    あったのです。ありがとう。

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著者プロフィール

稲泉 連(いないずみ・れん):1979年、東京生まれ。早稲田大学第二文学部卒。2005年に『ぼくもいくさに征くのだけれど 竹内浩三の詩と死』(中公文庫)で大宅賞を受賞。主な著書に『「本をつくる」という仕事』(ちくま文庫)、『アナザー1964――パラリンピック序章』(小学館)、『復興の書店』(小学館文庫)、『サーカスの子』(講談社)などがある。

「2023年 『日本人宇宙飛行士』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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