ミーナの行進

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120037214

感想・レビュー・書評

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  • 中学一年生の朋子が、従姉妹の小学六年生のミーナと暮らした一年間のお話。
    訳あって、母と離れて暮らすことになった朋子。でもその一年間は、寂しくなる暇もないほどキラキラしたときめきでいっぱいだった。
    ミーナのお父さんは飲料水会社の二代目社長、おばあちゃんはドイツ人。お屋敷はとても広く立派で、異国の香りが漂う。そして、何よりも目を奪われたのは、庭の池で飼っているコビトカバのポチ子!体の弱いミーナはポチ子の背中に乗って毎日登校するのだ!
    一つ違いの朋子とミーナ。すぐに姉妹のような親友のような関係になる。
    自分の心配をしてくれる大人ばかりに囲まれた生活だった体の弱いミーナにとっても、朋子との毎日はときめくものだったに違いない。
    二人とも淡い初恋も経験し、本当にキラキラした日々なのだけれど、子どもなりに大人たちの間にある決して皆が言葉にはしない悲しい何かを感じ取ったりもしている。
    そして、たった一つとはいえ年上の朋子。一年間での心の成長にグッときます。ミーナにとっての本当の姉になったようか気がしました。
    また、何よりも本好きな私たち読者の心を掴むのは、朋子が通う図書館の司書さん!
    心地良さの詰まった一冊でした。

    • hiromida2さん
      こっとんさん•̑‧̮•̑こんばんは!
      お久しぶりです*ˊᵕˋ)੭本棚には遊びに行って
      顔を合わせてる感覚ですが…ꉂꉂ ( ˆᴗˆ )

      「...
      こっとんさん•̑‧̮•̑こんばんは!
      お久しぶりです*ˊᵕˋ)੭本棚には遊びに行って
      顔を合わせてる感覚ですが…ꉂꉂ ( ˆᴗˆ )

      「ミーナの行進」小川洋子さんの中でも特に大好きな本です❤︎*.(๓´͈꒳`͈๓).*❤︎
      随分前に読んだので本棚登録もしてないし、
      内容も細かい部分は覚えてないのですが…(´._.`)
      ミーナがカバに乗って登校するところは鮮明に覚えていて、最初読んだ時は驚きよりも発想の面白さと読んでいるだけで、その情景が見えるようで、とても楽しくてワクワクした気持ちになったことを思い出します(〃'∇︎'〃)

      こっとんさんのレビューを読んで( ˘͈ ᵕ ˘͈ )
      もう一度再読したくなりました。
      ありがとうございます(*ˊ˘ˋ*)。♪︎:*°
      2022/12/13
    • こっとんさん
      hiromida2さん、こんにちは!
      コメントありがとうございます♪
      ステキな本でしたよね〜
      小川洋子さんの小説は読む度に、
      この世界観好き...
      hiromida2さん、こんにちは!
      コメントありがとうございます♪
      ステキな本でしたよね〜
      小川洋子さんの小説は読む度に、
      この世界観好きーーー!と思います。
      でも、まだそんなに数は読んでいないので、
      これから少しずつ読み進めていきたいなーと
      思っています。
      hiromida2さんの本棚も参考にさせていただきますね♪
      2022/12/14
  • あぁ、夢のように美しい思い出。従姉妹ミーナと共に過ごした中学時代の一年間。カバのポチ子、夢中になったミュンヘンオリンピック、六甲山ホテルの出張レストラン、素晴らしいクリスマス。
    悲しい結末を迎えるのかなとなんとなく予感があったけど、あまりにもハッピーエンドで安堵したと共に、実際の結末は別にあるのかなーと思ったり。
    大好きな小川洋子さんの長編、最近ではあまりないので大切に嬉しく読みました。

  • 今まで読んだ小川さんの本を一冊一冊思い出すと、全てに柔らかい光を感じる。少し冷たかったり、朝の少し青みがかったようだったりなど。
    この本は夕暮れ時の光の印象。
    読みながら何か起きるんじゃないか、はらはらしていたけれど、全て流れのままに解決していた。ページを捲りながら、どうかこの物語が終わらないで欲しいと思っていた。でも終わりは来る。でも確かにそこにちゃんとある。
    静かで大きな盛り上がりは無いかもしれないけれど、それが人生なのかもしれない。私たちは淡々と、でも悲しみや喜びを感じながら生きている。楽しかったあの頃には戻れないけれど、過去の思い出は生きてきた証で、そしてこれから生きていく支えになるのだと思う。戻れないからこそ眩しくて切なくて大切になる。
    あと三十年経って読み返して見たい。私はどうなっているだろう。

  • 豪邸での夢のような豊かで優しくてときめきに満ちた日々。
    とんでもなくセレブな人たちなんだけど、なぜか居心地のよさを感じてしまうのは、
    みんなユニークでどこかしら寂しさを抱えた人たちだから。
    この人たちの温かさに癒され、この独特の世界にどっぷり浸れた。
    最後の方はもうすぐ終わってしまうキラキラした生活を名残惜しむように読んだ。
    終始儚さとノスタルジックを感じさせる文章にこの家の悲しい終焉を想像しながら読んでいたけれど、
    最後は爽やかな読み心地。

  • 小川洋子さんの言葉で語られる芦屋の洋館の日々は、一つ一つが大切な宝物のよう。これと言った山場がないので上り詰める感覚はないけれどじんわりと余韻が残ります。

    特にマッチ箱の物語の美しさ。シーソーする象や、タツノオトシゴや星を集める少女のお話の完成度の高さ。

    他の作品同様、どこか陰がある儚い世界観なので病弱なミーナの身によからぬことが起きるのではないかとハラハラしながら読み進めたけど、危惧した展開にはならずホッとした。

    コビトカバの背に乗って登校していた痩せっぽちの少女は、自分の足でしっかりと踏み出していける大人になれたのだなぁ。

    • まろんさん
      小川洋子さんの作品の中で、いちばん好きな本です♪

      ほんとに、ミーナがいつ召されてしまうのかと、ハラハラドキドキしましたが
      溌剌と生きる女性...
      小川洋子さんの作品の中で、いちばん好きな本です♪

      ほんとに、ミーナがいつ召されてしまうのかと、ハラハラドキドキしましたが
      溌剌と生きる女性に成長しているラストに、ただただ感動でした!

      誤植探しを生き甲斐にしてるミーナの母とか
      マッチ箱のおはなしとか、けなげな動物たちとか
      お話にぴったり沿った挿絵とか
      細部までぎっしりと、私の好きなものが詰まった作品でした(*^_^*)

      2012/07/29
    • hetarebooksさん
      10年変わらなかったベスト3に割り込んだとレビューされていましたね。
      実はまろんさんのレビューに触発されて手に取った次第です。

      誤植...
      10年変わらなかったベスト3に割り込んだとレビューされていましたね。
      実はまろんさんのレビューに触発されて手に取った次第です。

      誤植の「フ」と「ヌ」、一文字違うだけで印象がずいぶん変わるなぁとくすりとしてしまいました。
      ローザさんと米田さん、ふたりのおばあさんのデュエットのシーンもいいですよね。

      それにしても「眠れる美女」についてのミーナの考察は自分とまったく違っていて焦りました(@_@;)
      2012/07/30
    • まろんさん
      私の拙いレビューを見て読んでくださったなんて、感激です!うれしいなぁ♪
      (ちなみに、ミーナと入れ替わりになった本は『夏への扉』でした。。。も...
      私の拙いレビューを見て読んでくださったなんて、感激です!うれしいなぁ♪
      (ちなみに、ミーナと入れ替わりになった本は『夏への扉』でした。。。もちろん今でも大好きな本ですが)

      そうそう、なんだかかわいいローザさんと、しっかりものの米田さん。
      性格は真逆ともいえるのに、心がしっかり寄り添っている、
      あのふたりのおばあさんもとても魅力的でした。

      「眠れる美女」についての、「死ぬことになじもうとしている」というミーナの感想は
      ずっと死と隣り合わせだったミーナならではの見方なのかもしれませんね。
      それにしても、中学生にあの本を勧めるとっくりさんって勇気があるというか、なんというか(笑)
      2012/07/31
  • 10年以上変わらなかった、大好きな本ベスト3に割って入った1冊。

    死や喪失の匂いにむせ返るような小川洋子さんの作品の中では異彩を放つ物語です。

    他の小川さん作品に登場していたら、絶対に途中で儚く亡くなってしまいそうな病弱なミーナ、学校まで歩いて通えずに、コビトカバのポチ子に乗って登校していたお嬢様の彼女が、いろんなものを喪いながらも、自分の選んだ道を生き生きとしっかり歩ける女性に成長しているラストに感動!

    表紙をはじめ、中のイラストも、本の背表紙からマッチの意匠に至るまで、お話にちゃんとリンクしていてすばらしいので、これから読まれる方はハードカバーで読むことをおすすめします!

  • 現実世界の形を保っている切なさ漂う寓話です。架空の飲料フレッシーから漂う昭和感。カバのぽち子が漂わせる童話感。そして過ぎ去ってしまった過去をさらいながら読む我らの寂寥感。心から血を流すような悲しみも、抜ける青空のような喜びも無い淡々とした物語はまさに小川洋子節だと思います。
    装丁が素晴らしく、読みながらその表紙、裏表紙、見返しなどを時々眺めながら、頭の中に2人の少女とカバのぽち子の姿を思い浮かべながら読むのがお勧めです。

  • 少女の頃の記憶というものは美しく、どこか頼りないけれど、誰にも壊すことができない。
    本当は決して美しく楽しいばかりではなかったかもしれない日々の思い出も、少女たちの宝となって胸に残り続ける。
    そしてかつての少女たちは今日も世界を行進する。

  • 従兄弟のミーナの住む芦屋の家に、居候することになった主人公の朋子。10代の女の子2人の交流と成長を描いているのですが、芦屋の家に住む人たちの、お互いを思いやる温かい空気に包まれた物語です。

    ミーナと朋子の2人がはまる、男子バレーボール。舞台は1972年ミュンヘンオリンピックです。
    喘息もちで身体の弱いミーナの、空想バレーでは、憧れのセッター猫田選手の美しくて謙虚な動き、バレーボールの奥深い魅力が、小川さんならでは、美しく表現されています。
    そしてドイツ人のローザおばあさんが、主人公朋子の名前に使われている「朋」の漢字について語る台詞が印象的。
    「同じ大きさで、上と下じゃない。横に並んでる。そこがいいのね。平等なの。一人ぼっちじゃないの」

    芦屋の家で暮らす人たちの、お互いを思いやる優しさやあたたかさが、静かに心に響く一冊です。

  • 主人公・朋子は家庭の事情で、ミュンヘンオリンピックの年の一年間、芦屋の裕福な叔母の家で過ごす。そこには一歳年下の従姉妹、ミーナがいた。 小学校の卒業式を終えた翌日に1人で新幹線に乗り、岡山から神戸までやってきた朋子。父を病気で亡くし、残された母と娘1人だったのだが、これからの生活のため、母が一年間だけ東京に洋裁の修行に行くことを決意したゆえだった。

    何年かぶりの再読です。
    初読時には、ゆったりした文体の中にどこか哀しみが感じられ、何か悪いことが起きるのではないか、(従姉妹が意地悪だったら? 喘息に苦しむミーナが儚くなってしまうのでは? 火事で家が焼けてしまうのでは? 海水浴に行って叔父さんと従兄弟が溺れてしまうのでは?などなど)と、先周りをして心配してしまい、終始、ハラハラしていたような気がするのですが、今回は、突然、とんでもないお金持ちの家に住まいすることになった少女の素直な気持ちにしっくりと寄りそいながら楽しんで読むことができました。

    ミーナは、ドイツ人のお祖母様を持つ、美しいクォーターの女の子。血管ばかりか、その中を流れる血液さえ見えるような白い肌、と朋子によって描写される佇まい、そして、病弱なゆえに小学校までの道のりをコピトカバのポチ子に乗って行くという、童話の世界のような、また、別の見方をすれば、人と違うことをしても気に病まないという気持ちの強さが深く心に残る女の子です。

    朋子とミーナはとても良い友だちになり、特に、朋子は年下の彼女から大きな影響を受けます。
    マッチ箱集めに情熱を傾けるミーナ(そのマッチ箱を持ってきてくれる“フレッシー”の配達員の若者との淡いエピソードも好きでした。)が、その絵柄に合わせて紡ぎだす短いお話の数々。森田・猫田・大古・嶋岡らがいた時代の男子バレーボールに熱中する様も、同じ時代を生き、同じ試合に声援を送った身として、不思議なくらいにあのころの匂いや色が蘇る思いでした。

    朋子から見るミーナの家族はみな好ましく、素敵な人たちではあるのですが、優しくハンサムな叔父さんは別に家庭を持っているらしく、叔母さんは小説でも新聞でもチラシでも、と印刷されたものの校正に一日の多くの時間を費やしているのが哀しい・・。そして、そんな中でも(たぶん)意識して穏やかに暮らしてくる家族を、途中からの同居人として心の中でまっとうな感情を吐露している朋子。


    このお話は、一年間の同居から三十年後に朋子から語られているという趣向のため、時に大人の視点が入り、その整理された気持ちがいい具合に読者に落ち着きをもたらしています。

    一枚の美しい絵のような家族にも、もちろん変化は訪れなければならない。人と人とのつながりや状況は変わっていくものなのだなぁ、と感じさせられつつ、それは悪いものではないのですよ、と優しく教えられたようなお話で、うん、やっぱり小川洋子さん、好きだなぁ、と改めて思わされました。(*^_^*)

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小川洋子の作品

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