ミーナの行進

著者 :
制作 : 寺田 順三 
  • 中央公論新社
3.85
  • (280)
  • (281)
  • (369)
  • (17)
  • (7)
本棚登録 : 1738
レビュー : 361
  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120037214

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 最初、我儘なお嬢様なのかと思いましたが、繊細な、芦屋一利発な少女・ミーナでした。
    ほんの一年でしたが、ミーナと朋子の大切な時間だったのでしょう。

    思いがけず、懐かしい『ミュンヘンへの道』が出てきてワクワク感を共有してしまいました。
    あの時もテロがあったのですね……

    ポチ子やマッチのイラストが可愛くてページをめくるのが楽しみになります。

  • 小川さんって回想の描き方がすごくいい。
    主人公が少女時代にすごした親戚の芦屋のお屋敷での一年の物語。
    登場人物たちは現在はもう老いたり死んでしまったりしていることが最初に明らかにされているので、描かれている一年がとても濃密に、貴重なものに感じられる。
    みんなが深く愛しあっていて、お互いを思いやりながらしずかに暮らしている。
    大会社の社長であるお父さんには大人の事情もあって不在がちだったりするんだけど、そして中学生の主人公はそれがどういうことがうすうす気づいていたりもするんだけど。
    それでもこの家族のしあわせは大きくは崩れない。
    あたたかくて、愛にみちていて、安心できる場所。
    読んでいると、一緒にそこにいるようなしあわせな気持ちになります。
    時間とともにさまざまなものが失われ、そのかわりにまた得るものもあったり、確実にうつろっていくんだけど、記憶のなかの幸福な時間というのは一生そこなわれることはなく。
    カバに乗って登校していた病弱なミーナは、やがて勇ましく世界にはばたいていく。
    守られたままではいられないけど、完璧に守られているしあわせな子ども時代があってこそ時がくればはばたけるのかもしれないなあ。

    それにしてもフレッシー、ってすごくいい名前。
    なんだか味が想像できてしまう。おいしそうだなあ。

  • ホテルアイリス以来遠ざかっていた小川洋子さんを久々に読んだ。
    ちょっと苦手だったのでホテルアイリス。

    芦屋の叔母の家で過ごした宝物のような1年間を描いた作品。
    豪邸での日常を淡々と描きながらも、家族がそれぞれに抱える問題を描いている。

    主人公の回想が無くしてしまったものを慈しむ感じに溢れていたので、何か不吉な予感がしつつ読み進めて行ったが、最後は物質的な豊かさはないかもしれないけど、幸せに暮らしている感じが良かった。

    ミーナがマッチ箱に描く独創的なお話と挿絵がとてもマッチしていた。

  • 一年間、芦屋の叔母夫婦の元で暮らすことになった朋子と、喘息もちで美しい叔母夫婦の一人娘ミーナ。バレーボールに熱狂し、本を愛し、恋をする、ふたりの少女の物語。 芦屋に暮らす社長一家だし、お手伝いさん付きだし、おばあさんはロシア人だし、ペットはカバのポチ子だし。とても私の暮らしなんかとは結びつかないようなのだけれど、それなのに、私と同じようななにげない日常がそこにある。そのことが愛おしく、ほっとする。寺田順三さんの描くレトロなイラストのなんとかわいらしいこと。絵本のような贅沢さが味わえます。

  • マッチ箱の箱、図書館の貸し出しカード、庭で撮影した記念写真、
    今でも手元にあるそれらがあるだけで自分が、過去の時間によって守られていると、感じることができる。

    経済的な理由で伯母の家に一年間住むことになった朋子。
    伯父さんに伯母さん、ローザおばあさん、小林さん米田さんにコビトカバのぽち子に、従兄のミーナ。

    見るもの触れるもの感じるもの、すべてが初めてで新鮮でキラキラと輝いていた、
    傍には家族と、隣にはいつもミーナがいた。

    オトナになっても忘れはしない子供の頃の大切な思い出。
    今はもう、ふと思い出してそれに浸ることしかできないけれど、愛しくていつまでも胸の奥にしまっておきたいあのとき。

    愛しい話。
    何年か前に途中まで読んでたんだけど、
    いまさらになって読み返して最後まで読んだ。

    ほんとに愛しい。あー、好きだなあ、と思った)^o^(

  • 朋子が芦屋の親戚の家で過ごした物語。

    病弱なミーナを中心に、その家族と屋敷に住まう人々は、味がありいい人たちだ。その人々の日常の中でゆっくりと話が進んでいく。
    どこか少し影があるところや静謐でキレイな文章は、小川 洋子の世界を残しつつ、読後は『ほっこり・・』するような作品でした。

    マッチ箱の物語は著者の得意とするところでしょう・・

  • 親の都合で、1才年下の従姉妹ミーナの芦屋のお屋敷で暮らす事になった中学1年生の朋子。
    昭和40年代の芦屋の風景、ベルリンオリンピック、ジャコビニ彗星など、ノスタルジックな雰囲気に満ち溢れた優しい小説。
    カバに乗って小学校に通うミーナや家族は誰もが独特の雰囲気を身にまとっている。
    マッチ箱の絵に基づいて書かれたミニストーリーがどれも魅力的で、挿絵もほんわか優しくい素敵な本。

  • 著者の作品らしくほのぼのした日常の風景を淡々と描く。昔は資産家の豪邸があった芦屋の山手も、今は土地が切り売りされてマンションや駐車場に代わっているとか。阪神山手での優雅な生活が残る昭和40年代をノスタルジックに振り返る。

  • (2006.10.23読了)(拝借)
    読売新聞に週一回(土曜日に)連載したものです。カラーの挿絵がついていました。単行本にもカラーの挿絵が入っています。挿絵は、寺田順三さんの作品です。
    主人公は、12歳、中学生になったばかりの朋子さん、と従姉妹のミーナこと美奈子さん。ミーナは小学6年生。時代は、1972年。著者とほぼ同年代です。
    朋子は、岡山で育ったのですが、父親が死亡し、母親が働きながら朋子を育てないといけないので、洋裁の技術をアップさせるために、東京の専門学校で1年学ぶことにした。
    その間、兵庫県芦屋に住む伯母夫婦のもとに預けられることになった。
    伯父さんは、飲料水会社の社長、おばあさんはドイツ人なので、伯父さんやミーナには、ドイツ人の血が混じっている。叔母夫婦には二人の子どもがいるが、18歳の兄(龍一)は、スイスの学校に留学中。妹は11歳の小学6年生、ミーナ。
    叔母夫婦の家は、部屋が17もある洋館です。屋敷には、住み込みのお手伝いさんの米田さん、通いの庭師、小林さん、それとコビトカバのポチ子がいます。
    コビトカバのポチ子は、おじいちゃまが西アフリカのリベリアから買ってきた。みんなが珍しがって、見に来るので、孔雀、台湾ザル、山羊、オオトガゲを買い足して庭を動物園にしてしまったという。今はポチ子しかいないので、動物園はやっていない。
    ミーナは喘息の持病があるために、小学校へ行くときは、ポチ子に乗ってゆく。小林さんも一緒についてゆく。
    ミーナの趣味は、読書とマッチ箱の収集。読む本は、朋子が図書館に借りに行く。図書館の係員のお兄さんには、自分で読む本のような形でかりてくるのだが実際に読むのは、ミーナである。ミーナの希望をお兄さん(とっくりのセーターさん)に伝え、アドバイスしてもらいながら借りてくる。返す時に読んだ感想を聞かれたら、ミーナの感想をあたかも自分の感想であるかのように伝える。手元に残っている貸出カードには、「眠れる美女」「アーサー王と円卓の騎士」「アクロイド殺人事件」「園遊会」「フラニーとゾーイー」「はつ恋」「変身」「阿Q正伝」「彗星の秘密」・・・。
    マッチ箱の入手先は、週一回、伯父さんの会社の清涼飲料水フレッシーを配達してくれる若い運転手。ミーナはその青年に恋心を抱いているらしい。
    ミーナはマッチ箱のラベルに相応しいお話を作り、マッチ箱に入れている。朋子はそれを読んでもらうのが楽しみだ。シーソーに乗って、楽しそうに遊んでいる子供達を見て、自分もシーソーに乗って同じように遊んでみたい象の話などがあります。
    持病の喘息が悪化して、病院に入院していたミーナは、退院してきたら突然、バレーボールファンになっていました。ミュンヘンオリッピックを目指す男子バレーボールの応援が始まります。
    ミュンヘンオリンピックでも男子バレーボールの応援に熱を上げます。決勝リーグが始まる矢先に、アラブ・ゲリラによるオリンピック選手村のイスラエル宿舎への侵入事件が起きてしまいます。事件は悲惨な結末で終結し、決勝リーグが始まります。
    思いでいっぱいの1年は終わってしまいます。

    中学生前後の少女が読めば、夢中になること請け合いの本です。「赤毛のアン」「若草物語」「ハイジ」などと並ぶ名作といえるかもしれません。
    ☆小川洋子の本(既読)
    「シュガータイム」小川洋子著、中央公論社、1991.02.25
    「妊娠カレンダー」小川洋子著、文春文庫、1994.02.10
    「薬指の標本」小川洋子著、新潮社、1994.10.30
    「博士の愛した数式」小川洋子著、新潮社、2003.08.30
    「偶然の祝福」小川洋子著、角川文庫、2004.01.25
    「ブラフマンの埋葬」小川洋子著、講談社、2004.04.15

    著者 小川 洋子
    1962年3月 岡山市生まれ
    早稲田大学第一文学部文芸科卒業
    1988年 『揚羽蝶が壊れる時』で第7回海燕新人文学賞受賞
    1991年 『妊娠カレンダー』で第104回芥川賞受賞
    2004年 『博士の愛した数式』で第55回読売文学賞受賞
    『ブラフマンの埋葬』で第32回泉鏡花文学賞受賞
    2006年 『ミーナの行進』で第42回谷崎潤一郎賞受賞

    第42回(2006年) 谷崎潤一郎賞受賞
    内容(「BOOK」データベースより)amazon
    美しくて、か弱くて、本を愛したミーナ あなたとの思い出は、損なわれることがない―懐かしい時代に育まれたふたりの少女と、家族の物語。

    • まろんさん
      はじめまして。フォローしていただいて、ありがとうございます!まろんです。

      数ある小川洋子さんの作品の中でも、この『ミーナの行進』が、飛びぬ...
      はじめまして。フォローしていただいて、ありがとうございます!まろんです。

      数ある小川洋子さんの作品の中でも、この『ミーナの行進』が、飛びぬけて好きです。
      小川さんといえば、死や喪失の気配が漂う独特の世界観をまっ先にイメージしてしまいますが、
      この作品では、いつもの小川さん作品なら
      少女のうちに儚くこの世を去ってしまいそうなミーナが
      病弱な身体にも、家族の事情にも、たくさんの別れにも屈せず
      ラストでは、溌剌と生きる女性へと成長した姿を見せてくれるのが、とてもうれしくて。

      あらゆるジャンルを網羅していて、その博学ぶりが眩しいnakaizawaさんの本棚とレビューを
      これからも楽しみにしています。
      どうぞよろしくお願いします(*^_^*)
      2012/12/28
  • 小川さんの小説はどれも脆さと暖かさが交じり合って読み終わった後に「ものすごい感動」とは違った種類の感動を感じる。この作品もまさにそんな感じだった。
    すごく危なげな雰囲気を感じるのに決して崩れないところがこの小説の要だと思う。

全361件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

ミーナの行進のその他の作品

小川洋子の作品

ツイートする