八日目の蝉

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120038167

感想・レビュー・書評

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  • 愛人に自分の子をおろさせられた女が、愛人の子と逃げに逃げる、その先は
    八日目の蟬
    2011.01㈱大活字発行。字の大きさは…大活字本。2022.02.09~28音読で読了。★★★☆☆

    第1章
    1985年2月3日。野々宮希和子29才は、愛人・秋山丈博(たけひろ)の生後6ヶ月の女の子を攫い行く当てもなく逃げていく。所持金は、父の残してくれた四千万円ほど。女の子に「薫」と名前を付ける。警察は、希和子を誘拐犯人として指名手配する。新聞に写真入りで希和子の記事が載る。居る所のなくなった希和子は、お金をむしり取ると噂されるエンゼルホームへ逃げ込む。
    1987年8月13日。薫を連れてエンゼルホームに逃げ込んで約2年半、エンゼルホームに警察の立ち入り調査が入りそうになり所持金など10万円ほどをもって、薫と一緒に小豆島へ逃げてくる。ホームに入る時にもっていた全財産は、ホームに差し出しています。
    小豆島に来たのは、ホームで知り合った久美さんからお母さんに「無事だ」と一言託された伝言を伝えるためです。そして久美さんの実家の素麺店で薫と二人で楽しく生活している。そんなさなか花火大会の折に撮られた写真が新聞に載ったことで…警察に捕まり薫は、生みの親である秋山夫婦のもとに戻される。不倫相手の子供を誘拐して、3年半の逃亡生活に終止符がうたれます。

    第2章
    それから18年。2005年。薫こと秋山恵里菜は、「誘拐犯に育てられた子」という目で見られ。そんな中で大学に進学し、親元を離れひとり暮らしをし、家庭を持った岸田と肉体関係を続けている。アルバイト先にエンゼルホームで一緒だった、当時11才か12才のマロンこと安藤千草が、エンゼルホームでの薫の事を本にして出版しょうと近づいてくる。
    恵里菜は、岸田の子供を妊娠していることに驚き、子供をおろそうとするが医師に「緑の頃に生まれる」と言われると。ふと岸田と別れて、ひとりで生むことを決意する。千草の勧めで、希和子と生活していたエンゼルホームや、小豆島へ行ってみことにする。
    恵里菜は、小豆島に渡る岡山港まで来たときに、今まで覚えていなかった小豆島での楽しい思い出が次々に思い出されて行く。そして後ろから「薫」と呼ぶ声に振り返るが、そのままフェリーに乗って行く。そこには、8年の刑期を終えて世間から逃げ続けてきた希和子が、小豆島へ渡れずに時間があればフェリー乗り場で小豆島へ立つフェリーに乗る薫がいないかと見続けていた。

    【読後】
    ラストが刑務所から出て、世間から逃げ続けて来て、薫との一番楽しかった思い出の小豆島へ渡れないでフェリー乗り場で薫を見続ける希和子。希和子との思い出を封印してきた恵里菜が、私は希和子と違う、この子を生むと決めて小豆島での楽しい思い出を同行の千草に語る恵里菜、このまますれ違っていくのか。こんなラストでいいのか。これからもうひと話あってもいいのではないか、と思えて仕方がありません。

    【音読】
    2022年2月9日から28日まで、大活字本を音読で読みました。この大活字本の底本は、2007年3月発行の中央公論新社から発行された「八日目の蟬」です。本の登録は、中央公論新社で行います。株式会社大活字発行の大活字本は、第1巻~第3巻までの3冊からなっています。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    【令和4年(2022年)2月に読んだ本】

    2月に読んだ本は、22冊です。
    今月読んだ中で特に印象に残った本は、角田光代さんの「対岸の彼女」です。
    読んでいる時に、なにか自分の知らない世界がそこに有る。そして、そこに生き生きと、力強く生きて行く人たちがいるのを感じました。
    そして感想を書こうと考えると、ふと思いがまとまらず、もう一度見直していたら。強く心が揺れ、不安定になっていくのにビックリします。よほど影響されています。そして自分の高校生時代を振り返り考えているのに驚きます。
    皆様の応援で2月も楽しく読書が出来ました。
    ありがとうございます(⌒-⌒)ニコニコ...

    今月のベスト本は、下記の2冊です。
    ★★★★★は、今月はありません。
    ★★★★☆は、下記の2冊です。
    対岸の彼女 ―――――――――――――――――――――― 著者/角田光代
    https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4163235108#
    精霊探偵 ――――――――――――――――――――――― 著者/梶尾真治
    https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4104402028#
    ※令和2年(2020年)1月から、その月の最後に読んだ本に、その月のベスト本をのせています。

  • 社用で警察署に行って来ました(悪いことしたわけでもされたわけでもありません)
    指名手配犯や行方不明者の写真が所狭しと貼ってあり、探しても見つからない人見つけられない人がこんなにいるんだなぁと妙に感心してしまいました

    タイムリー(なのか?)に『八日目の蝉』です

    角田光代さん初読なんですよね
    初読でこれは失敗したな〜って思いました
    これ、感動とかしないですよね
    角田光代さんも感動させようと思ってないでしょうけど
    特に1章はどこを切り取ってもプラスの感情は感じませんでした
    希和子が薫に向ける無償の愛も嫌悪感の対象でしかなかったです
    なにそれ?なにも共感できないしなにも肯定できない
    2章を読んでも自分勝手な大人たちに人生を壊された二人の物語としか思いません
    はたして『八日目の蝉』は幸せだったのか?
    もし二人が『八日目の蝉』なのだとしたら「幸せ」としてはいけないような気がするのです
    もちろんこれからは幸せになってほしいと思います
    幸せな九日目十日目を生きてほしいと思います
    思いますが八日目をわずかでも良しとすることは自分には受け入れられないのです

  • とてもおもしろかった。
    けれど、作者は流産も出産もしたことはないんだろうな、とは思った。

  • 図書館よりレンタル。
    言葉では言い表せない母親としての思いや、女性特有の本能ということだろうか。
    サクサクと読み進めることはできたのだけれど、共感できる部分が少なかったためか、話にのめりこむことはできなかった。
    角田光代の作品は、『対岸の彼女』に続いて2作目。彼女の描く世界観には、いまひとつ浸れないでいる。

  • 淡々とすすむ感じがずっと続く。
    最後に二人の心が多少救われつつあるのが、物語のすくいか。
    最後の展開がなければ星2つにしたかもしれない。そんなビミョーな感じ。

  • さらりとしているようで
    とても重いお話でした。
    読み終えた後、これだ!という明確な何かが心に残るのではなく、何か、何かが残るけどうまく言葉にできない、、
    という感じです。
    母親とは、家族とは、罪とは、いろいろなものが私の心の中でぐるぐる回っています。

    何か出来事があっても、見る視点が違えば、何が正解で、誰のためなのか、誰が悪かったのか、そういうのが違ってきてしまうんだ、
    と強く思いました。

    人の一生をのぞいた感じがしました。

    子供の3年間なんて、とても短いのに。
    それを支えに大切に失わないように必死だった希和子。

    過ぎてからも、過去のその生活だけを思い生きてきた希和子。

    誘拐はいけない、いけないけど、どうしてここまでできたのだろう、


    何がいけなかったのか、どこから間違えていたのか、そういうのを私たちは考えてしまい、答えを求めたくなるけど、そんなの分からないことのほうが多いんだと、思いました。

  • 子をさらって育てる話。

    自分も2児の母親なので、誘拐犯の主人公や誘拐された子供よりも、子供を誘拐された母親の方にどうしても同情してしまう。

    浮気していたとか、子供を10分程度一人にして外出したとか、同情するほどかいのない母親ではあるけど、子供を奪われるのはやっぱりかわいそうだと思った。

    帯に最後の数ページ震えがとまらなかったという大田光のコメントが載っていて、最後を楽しみに読み進んだけど、読後感はそんなによくなかった。

    ふたりが知らぬ間にすれ違っていたっていうのは、小説によくあるご都合主義じゃない?

  • やっと地上に出てきたと思ったら1週間で命が尽きる蝉。八日目まで生き残った蝉は果たして何を見るのか

    取り違えもそうだが、子供を自分で育てない時期があると実の我が子だと言われても急に愛せるものではないだろう
    それは自分がいた環境とか生活とか全く異なるものでそれが怖かったり受けいれられなかったりする理由なのか

    自分も被害者なのに 犯人のムスメのような感覚で育ってきたんではないか 「自分はあの人のようにはならない」と思っているところがある

  • 長編の割りにあっさりしていた印象。

    終わり方が良い。

  • 引きこまれてどんどん読んでしまったが、全体的に暗くてドロドロしていて、後味の悪い作品だ。

著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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