「課題先進国」日本: キャッチアップからフロントランナーへ

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120038648

作品紹介・あらすじ

環境、エネルギー、資源、住宅、医療、教育…日本の課題はまもなく世界の課題になる。問題解決が新しい社会システムを創造する。東大総長が、課題解決ビジョンと新国家像を縦横に語る。

感想・レビュー・書評

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  • 10年前のシン・ニホン
    フロントランナーとして社会をシステムから作りなおす

    趣旨
    日本が抱える課題をいくつかのテーマに渡って論じていき、具体的な解決策を示す。これまでは「出羽の守」であり、海外をベンチマークにすることで、文明開化〜Japan as No.1まで来た。
    しかし海外にもはやベンチマークは無い。日本が課題の最前線にいる。今後は日本がフロントランナーとして、自ら課題を解決していく事例を海外に示していかなればならない。

    感想
    国家戦略、社会を作りなおす、という点では学びの多い本。シン・ニホンと並ぶ。もちろん異なる観点、主張はあるけれども。

  • 昔読んだ本の読み直し。仕組みの模倣はやめて、仕組みを作ることをしなければ。

  • 10.6.1
    社会問題 : 「 低炭素社会実現に向けた工学の挑戦」
       今、低炭素社会の構築というのが人類が直面している重要課題の一つでもある。東京大学工学部広報室主催の講演会のご紹介を。東大の小宮山前総長の基調講演とともに工学部の同分野のエキスパ ートが様々な「工学の挑戦」についてのセミナーが開かれる。関心がある方は是非ご参加ください。事前登録が不要というのもいいですね♪
    タイトルは 「 低炭素社会実現に向けた工学の挑戦」 です。

    1.日時 2010年6月1日(火) 18:00〜20:00

    2.会場 東京大学教養学部 1323講義室
      (アクセス&地図)http://www.c.u-tokyo.ac.jp/access/index.html

    3.参加費 無料(事前登録必要なし)

    4.プログラム 
    プログラム詳細はこちら

     < 基調講演 >
      テーマ 「低炭素社会実現のための戦略とシナリオ」
      講師 小宮山 宏(東京大学・前総長、三菱総合研究所・理事長)

     < 講演 >
      テーマ1 「太陽・化学エネルギー」
      講師 堂免 一成(化学システム工学科・教授)

      テーマ2 「都市とエネルギー」
      講師 花木 啓祐(都市工学科・教授)

      テーマ3 「原子力エネルギー」
      講師 関村 直人(システム創成学科・教授)

      テーマ4 「熱エネルギー」
      講師 鹿園 直毅(生産技術研究所・教授)

      テーマ5 「電気エネルギー」
      講師 谷口 治人(ユビキタスパワーネットワーク寄附講座・特任教授) 

     

  • 2007年のベストセラー書籍には「女性の品格」(坂東真理子著)が入りました(書籍流通大手の日販とトーハン調べ)。硬いイメージで敬遠されがちだったこれら新書の復権は2003~4年の『バカの壁』(養老孟司)がきっかけと考えられますが、その後2005年の「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」(山田直哉)や「下流社会」(三浦展)、2006年の「国家の品格」(藤原正彦)などを経て定着したものと思われます(過去のベストセラー一覧はこちらへのリンク)。品格ブームとも言われる昨今ですが、これにはほんの数年前まで日本人なら当たり前とされていた倫理観や日常規範が今日では崩壊しつつあることへの危機感が背景にあると分析されており、古来より脈々と受継がれてきた日本人本来の姿を学ぼうとの意識の広がりと解釈されています。

    このような日本人の原点回帰志向が高まる中で、単に「昔の日本は良かった」というような懐古主義や温故知新レベルにとどまらず、新しい日本の国家像を示し、日本が世界のフロントランナーになる道を示したのが本書『課題先進国』です。まず本書のタイトルにもあるように、日本を「課題先進国」と定義した小宮山宏東京大学総長の慧眼に敬服させられます。すなわち、日本にはまだどの国も解決したことのない課題(エネルギーや資源の欠乏、環境汚染、ヒートアイランド現象、廃棄物処理、高齢化と少子化、都市の過密と地方の過疎、教育問題、公財政問題、農業問題など)が山積しており、遠からず世界の課題になるであろうこれらの問題に日本は世界に先駆けて対峙している点に著者は着目しています。第二次世界大戦に敗戦した極東の一島国でありながら戦後20年足らずでGDP世界第二位となり今なおその座を守り続けている日本は、平野部が少ない地形、高温多湿の気候、都市部への人口集中、国民の高い生活レベルなどから環境問題や人口問題などが大国に比べ速いスピードで進行するある種のバイオスフィア(閉鎖型生態系実験施設)にも見立てられるということなのでしょう。なんだかアリゾナのBiosphere-2やジム・キャリー主演映画「トゥルーマン・ショー」を連想してしまいますね。

    社会システム変革の提唱なども含む日本発の新しいモデルを創出し、世界の未来型モデルにしよう、「課題先進国」から「課題解決先進国」になることによって人類のサスティナビリティ(文明の持続性)に貢献する世界史的な役割を日本が果たそう、との小宮山提言は、とかく欧米の後追いに安住してしまっている私たち読者に勇気をも与えてくれます。そのために細分化された知の統合が欠かせないということで、まずは総長として「俯瞰講義」や学際領域創出に代表される東京大学の学術統合化プログラムに着手したとのこと。「不都合な真実」で地球の環境破壊に警鐘を鳴らし今年のノーベル平和賞を受賞したアメリカ前副大統領のアル・ゴアを、「こういった警告型の仕事ではすでに済まなくなっている」と一刀両断。その答えやモデルを創出する仕事が大切だとポジティブに説く姿勢に日本人としてそして東京大学総長としての気概が見てとれました。

  • ・議論でのひらめきによって「正反合」へと飛躍する
    ・英語圏でのジョーク一例

  • 課題を課題だと認識する力、課題を率先して乗り越えていく勇気が必要。

  • この本は勉強になった。今ある課題に対して、批判ではなく「どうすれば解決できるか」という姿勢で書かれている点と、その取り上げられている課題が盲目的な視野ではなく全体をマクロに俯瞰してミクロにひとつずつ見ていこうとしている視野の取り方がすごく読みやすかったです。目的に向けて知を統合していくことの大切さを教えてくれた感じがした一冊でした。小さくとも、全体を見ながら自分にできることを考えていきたいと思いました。

  • 日本は課題を多数抱える国であり、その課題を解決するチャンスを持つ国であるというもので、2007年に書かれている。
    環境分野における可能性を多く述べている。
    20世紀は科学の黄金時代で、21世紀は細分化、深化した科学をつなぎあわせる必要がある。

  • エネルギーや資源の欠乏、環境汚染、少子高齢化、都市と地方の問題、教育、公財政問題、農業…挙げたらキリがない。
    この本では主に、エネルギー問題を取り上げている。

    江戸時代まで、日本の文化は進んでいた。
    それが黒船がきて、あーこれはやばいなって日本人は思うようになった。

    > アメリカでは、こうだから日本でもこうしよう。

    それは日本の合言葉になった。
    それから日本はアメリカの真似をして大きく育った。
    今まであった文化を犠牲にしながら。大人になることを知らずに。
    これからの時代、日本が、アジアが、世界が、人間が、
    物語の主語になることは、もうないだろう。

    地球。

    今まで変わるはずのないと思っていたこの地球が、
    人により変わりつつあって、確実に悪い方向に向かっている。

    今僕らが行なっていることは、
    僕らの子供を圧倒的に苦しめるものであるし、
    どこかで変わらなくてはいけない。
    それが、今なのだろう。


    think Earth

    きっとこれからの合言葉になるだろう。
    そのために何をすべきなのか。

  • こちらも小宮山氏が東大総長だった頃に書いた本。日本は、先進国家ならではの課題(古くは公害など、現在では少子高齢化など)に、他の国に先駆けて直面してきた国なので、日本が先にソリューションを開発することで、後進国にソリューションを売り込むことができる、というビジョンを掲げている。ビジョンそのものには反論が思いつかないんだけど、出版から5年たって何かが一気に進んだかというと、そういう話はほとんど聞かない気がする。それどころか、むしろ後進国の方が、先進国よりも早く先端のITインフラをどんどん取り入れているようにも見えるし…。レガシーインフラを持たない後進国の方が、新しいインフラを一気に普及させるのに都合がいいのは確か。すでにレガシーインフラが網の目のように張り巡らされている先進国は、新しいインフラの導入に際して、関係者間の利害調整のコストが大きすぎるのが問題だということまでは、みな認識しているハズだけど、「問題を認識すれば、問題は解決する」ほど世の中は単純ではない。
    それに、このビジョンの通りに進んでしまうと、子供の頃から格下だと思ってきた後進国が、そのうち日本よりも繁栄することになりかねず、頭では納得できたとしても、感情的には絶対に許しがたい。だから、私としては、とにかく傍観に徹することにしましょうかね。(まあ、どちらにしても、日本の衰退は確定的な未来だし…)

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著者プロフィール

前東大

「1990年 『速度論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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