与謝野晶子 (中公叢書)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 28
感想 : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120040108

作品紹介・あらすじ

「情熱の歌人」と呼ばれる与謝野晶子は、短歌だけでなく、詩、社会評論、童話・童謡など、さまざまな分野で多くの仕事を成し遂げた人物である。しかしその活躍が多岐にわたるがゆえに、「君死にたまふことなかれ」や「母性保護論争」など限られた側面しか知られていないのが実情である。本書では、晶子の幅広い業績をたどるとともに、教育や労働について鋭く論評し、多くの子を産み育てた「ワーキングマザー」でもあった、ひとりの等身大の女性像を描きだす。

感想・レビュー・書評

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  • 与謝野晶子の評伝。といっても、編年的なものではなく、「科学へのまなざし」「里子に出された娘たち」「「母性保護論争」の勝者は誰か」「童話作家として」「聖書への親しみ」という5つのトピックを論じる。

    なかでもやはり中核的なのは「「母性保護論争」の勝者は誰か」で、論争を単に「国家対個人」の図式にあてはめずに理解しようとしている点は勉強になった。そして、女性の自立には、女性の労働が欠かせず、しかもしれは単に生活の糧を得るためのものではない。晶子の詩作は、現代における「アンペイドワーク」のようなものであり、それも含めた「労働」の重要性を提起する。

    ただ、やはりそれでも最近検討されている与謝野晶子における「国家」の問題(住友陽文とか児島翔とか)がどうなのか、というところは気になった。また、アジア太平洋戦争時における晶子の著作にまったく触れない、というのも評伝としては不十分であるように感じる。顕彰じゃないんだから、せめて冒頭の「晶子の生涯」のところででも触れていればと思うが、そこでも完全に無視。それでいいのか、と感じた。著者は研究者でなく、新聞記者から著述業に転じた人みたいなので、こうなってしまうのかもしれない。むしろ中公の選書レベルでも、与謝野晶子についてちゃんと書く人が実はいない、ということなのかもしれない。

  • #与謝野晶子 #松村由利子 #短歌 子を産んで子を育てる母親の視点確かな由利子と晶子

  • 与謝野晶子といえば、情熱的な歌を歌う人というイメージしかなかったのですが、それだけでなく計算が得意で数学の才能があったことや、沢山の子を働きながら育てる悩みや、男女平等な世界を目指していたことなど、今まで知らなかった与謝野晶子を知る事の出来る本でした。晶子はとても芯の強い女性だったと思います。興味深く面白かったです。

  • 平塚らいてう、山川菊栄、山田わからによる母性保護論争。国家による母性保護を主張したらいてうの勝利にも見えるが、女性の自立、仕事と家庭の両立、男女の賃金格差の是正、育児の社会化、家庭教育の責任など幅広い論点で議論され、かみ合わないことも多かった。

    らいてうが、女性の妊娠、分娩、育児は、国家の問題であり、不払い労働、経済活動として保護すべきという立場に立ったのに対し、晶子はあくまでも町人として、「国家が個人の延長であって、国家が個人を支配するものでなく、個人と国家が一体のものであるというのは、なんという合理的基礎があるのか」とし、個人を国家に優先させて考える町人、市民の思想が息づいている

    時代は、育児を社会的、国家的仕事であり、良妻賢母になることが女性の地位向上の第一歩と考えていた。そのなかで、晶子のルネサンス的個人観は
    、時代に逆行していた。

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著者プロフィール

松村 由利子 1960年生まれ。毎日新聞社で科学環境部、生活家庭部などの記者として20年働き、退社後は文筆活動に専念している。著書に『子育てをうたう』(福音館書店)、『短歌を詠む科学者たち』(春秋社)、『少年少女のための文学全集があったころ』(人文書院)、歌集に『耳ふたひら』(書肆侃侃房)、絵本に『夜空をみあげよう』(ジョン シェリー絵/福音館書店)、訳書に『風の島へようこそ―くりかえしつかえるエネルギー』(アラン ドラモンド作/福音館書店)など。沖縄県の石垣島在住。

「2017年 『みどりの町をつくろう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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