SOSの猿

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 6575
レビュー : 902
  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120040801

感想・レビュー・書評

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  • 他人のSOSに過剰に反応してしまう悪魔払いと、ミスター因果応報。
    このふたりがいつどんな形で接触するのか。伊坂さんの作品を読んだことがある人ならついつい読み始めたときから気になっちゃいますよね。
    わたしも最初からwktkしまくり
    そして何回でも予想の遥か上を越えた雲上の結末を読者に見せてくれる。最初はばらばらだった要素が、最後には丸く収まりあう収束感が気持ちいい。

    ストーリーも大好きだけど、人物描写もかなり好き
    さらっと表面だけ見てるようで、その人の特徴や性格を的確に抽出してるところ。だから親子に首輪をしてる男の虐待の様子も、どろどろした感情は生み出さないけれど、普通に同じように言及されてるから、ぎくりとくる
    異常な事態だけ棚にあげないで、同じ表面上においてるところとか独特だなと思うんだけど・・・なにを言ってるのか自分でもよくわからん

    五十嵐大介さんの「SARU」という漫画と対をなすらしいです。でも漫画って図書館においてないんだよなー。機会があればぜひ読みたいです。

  • 主人公の能力のタネは結局明かされなかったが、人物描写に一役買っているからそれでいいのだろう。ギャグとしての孫悟空だったが、だんだんとぞっとするような生々しさと残酷さを備えて、物語の核になっていった。たたみかけるような事件の連続が好き。

  • 孫悟空とSOS。
    誰彼構わず助け出したくなって”しまう”遠藤二郎。彼は変哲もない家電量販店の店員でエアコンを売る。そんな彼はイタリアでエクソシストという「人を救う仕事」を目の当たりにして、その本筋を得ていた。それを頼りにして「辺見のお姉さん」から息子である眞人の悪魔祓いを依頼される。
    一方、システム会社の社員、五十嵐真は取引先の誤発注事件の原因を探るべく調査を始める。聞きとり調査をしていくと同社のシステムエンジニアの女性は妖艶な蠍の妖怪に、誤発注事件のあった相手会社の部長は牛の魔王に。現実に入り込んでくる西遊記の世界。

    西遊記の世界と、誤発注があった現実世界が交差する。ばらばらの世界が一か所に集約するのは伊坂さんの得意技といったところでしょうか。
    誤発注は証券会社のことなので少し難しいところもあるが、その事件が中心でありながらそれぞれの登場人物と孫悟空がこの物語の中心を掻っ攫っていった。

    今までの作品のように円満な終わり方をしていないから余計に不完全燃焼のようかもしれない。最後の決定的な場面で肩透かしをくらったようだが、それでこそこの物語の良い終わり方だと思う。もしその場で孫悟空の言われるがままに行動し、それが成し遂げられていたら、眞人も、その場にした雁子も二郎も五十嵐も、みな延々にその幻覚に縛られたままになっていたことだろう。

    錯綜し、一貫していない状況が、ピースを嵌めていくかのようにまとまっていく。眞人がいったいなんだったのか。本当に孫悟空に憑依されていたのか定かではないが、少なくとも眞人の「助けて」を二郎は聞き入れたのだし、虐待されていた少年の「助けて」を眞人は訴えることができたのだし、ハッピーエンドと言えるのではないだろうか。

    それにしても伊坂さんの作品は久しぶりに読んだのだが、登場人物それぞれの信念というか理念が明白で突飛ながらもすとんと落ちてくる。それが爽快で気持ちが良いのだが、それも引き継がれている。

    西遊記を知らないから話しにもいささかついていけないところもあったけれど、丁寧に説明してくれているから楽しめた。一般的な西遊記の知識さえあれば充分だろう。たしかに魔物や強敵の知識がなければ誰だろう、となってしまうかもしれないが、そのキャラクターさえも巧みに物語の中に滑り込ませてエッセンスを与えているあたり、末尾にあった参考資料を見ても今回は特に熱心に物語を構成したことがうかがえて私は楽しかったところもある。

    エンターテインメントとしては『ゴールデンスランバー』といった怒涛の展開と緊迫感はないものの、それでも私は『アヒルと鴨のコインロッカー』や『オーデュポンの祈り』のように、もう一度読み返したくなるような、伊坂ワールドを作り上げて面白可笑しくしておきながらも、どことなく寂しさとやるせなさを含んだ優しい物語だった。

    こうして小説の感想を書くのは久しぶりなため、いつも以上に支離滅裂になってしまった。だが、この作品を読み終えたとき個人的には久しぶりに触れあえた伊坂ワールドの爽快でありながらどこか哀愁を漂わせる独特の世界観を味わえて本当に楽しかった。どうしてこういった優しくも爽やかなものが書けるのか不思議に思う一方で、伊坂幸太郎という作家の敬愛を再び感じざるを得なかった。

  • いかにもファンタジーな話ではなく、現実感のあるストーリーに少しずつ非現実なエッセンスを盛り込んで行く。そして音楽と言う要素を散りばめる。過去に書いた話の登場人物をさらりと割り込ませる。あるいはこの物語の中の誰かが、またはエピソードが、後に書かれるであろう小説に挟み込まれるんだろうなぁ、と想像させる場面が出てくる。

    ストーリーや文章の面白さ・軽やかさだけでなく、過去の作品や今後のネタ振りにまで思いを巡らせさせてくれる。それがこの作家のワクワクするところであり、読んでいて飽きないところ。さらに、文体はサッパリとしてリズムがあってとても現代的で読みやすいのに、全体的に何だかもやもやとした恐怖を感じさせる内容になってる事が多い気がする。

    今回も、孫悟空(西遊記)の話を下敷きにしてユングやエクソシスト等の要素を絡め、そして時代は当然現代な訳で、訳が分からない。やけに生々しい孫悟空や未来を言い当てるとか虐待とか。本当にこの人の書く話は、雑多な点と点が複雑に組み合わされ繋がれて、最後には形が出来上がっている。何と言うか、面白い。ほんと、それに尽きる。

    競作企画のマンガも読みたくなった。

  • 物語の効力すげぇ、幸不幸の正体かも

  • 別々の話しが一つにまとまるところがおもしろいです。

  • 二つの物語が平行して進んで、最後に融合する、1Q84のパクリか。伊坂幸太郎らしくない…と思った私が恥ずかしくなるような、伊坂らしく、ファンタージーなんだか現実なんだか煙に巻かれるような終盤。やっぱり、孫悟空の分身二匹が帰ってこなくて、一匹はフォークランド紛争でやっつけられ、もう一匹は世界中に散らばってしまったんだよ。そしていろんな人の中に入ってしまった。所詮分身だから、本体ほど完璧な未来予想はできないから、実際に起こったことと少し違う予言になっちゃったんだよ。だからイガグリさんも二郎真君も雁子も眞人も、みんな孫悟空をみて話しかけられていたのに、それが現実と思えず、言わなかっただけなんですね。予言が普遍的なイメージから来る偶然っていうユングの説がもっともらしいようでミスリードなんでしょう。そして今回は伏線が全部回収されている。まさか段ボールまで伏線だっとは…。しかも実際には車はやってこないっていう肩すかしまで^_^;「あなたは何でもきちっとやるから凄いわね。素直に感心する」という嫌みを女性に言われることはありますが、私程度だとポロッと時々抜けますが、そんな時みんなが喜ぶ理由がなんとなくわかりました。「『誰かを救いたい』と思う自分の自身をもう一度考えないといけない」は自分も考え直したことがあるので、すごい共感しました。そして「いつまでもくよくよしてればいいんですよ」も。そう全ての目の前にいる困っている人を救うことは出来ないんですよね。

  • "誰かが、どこかで、痛い痛いって泣いてるんだよ"

  • 2012年読了55冊目
    悪魔祓いの副業をする主人公 遠藤二郎と、300億円の誤発注事件を調査するシステム監査のMr.因果関係の五十嵐真の2つの物語を中心に進んでいく伊坂氏らしい作品。ちょっと純文学的なところも見え隠れする。
     時折、現れる孫行者(孫悟空)が不思議なエッセンスとなっているが、終盤になると、分かってくる。
     いろんな布石を置いておいて、最後には上手く回収していく。こうゆうのがうまいんだよなぁ伊坂氏は。
     

  • おもしろかった。

    「猿の話」での読み手を馬鹿にした感じの語り口が小気味好くて読んでて笑えた。

著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

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