数えずの井戸

著者 :
  • 中央公論新社
3.73
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本棚登録 : 1394
レビュー : 204
  • Amazon.co.jp ・本 (771ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120040900

作品紹介・あらすじ

数えるから、足りなくなる。それは、はかなくも美しい、もうしとつの「皿屋敷」。人口に膾炙し怪談となった江戸の「事件」を独自の解釈で語り直す人気シリーズ第三作。

感想・レビュー・書評

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  • [再読] 2012年07月11日

    [再々読] 2013年4月17日


    なぜうらめしやとお菊さんがお皿を数え続けると言う怪談のお話になってしまったのか、そこを現実の出来事として怪異などとしてではなく書き綴られていて、すごくすごく切ないけどとってもステキなお話。

    「数え」「数えず」の交互の繰り替えしが催眠のようにじわりじわりとココロに深く重く、静かにどんどんと深い井戸に潜っていくような静かな狂気に時にぞっとしたり、時にココロを乱されたり。最初から最後までしっかりと京極さんの用意した仕掛けが施されていて、内容はもちろんだけど、京極さんの構成のすごさに改めて感動した1冊。

    人間の心の崩壊を切なく美しく昇華はさせない。死は死。罪は罪。崩壊は崩壊。一見殺伐としていて冷たいような思える事柄も、ちゃんとしたブレない論点で間違った正義をかざすことなく、しっかりと真理とたくさんのことを教えてくれたり、コトバにできなかった整理のつかない気持ちの収まりどころがみつかるというか。

    それぞれに抱える闇はそれぞれのカタチで。執着する、執着しない、数える、数えない。それぞれにまったく違う思考だけど。虚無感や焦燥感、恐怖を感じているその書き表しが少しずつ少しずつ沸点を上げていくような、じわじわと吹き零れていく展開が絶妙でラストは読んでいるというよりその場にいる、という感覚。

    映画の「ジョゼと虎と魚たち」で衝撃を受けたように、文章で初めてガラガラと音を立ててすべてが壊れていく有様を見てしまったというような、とても痛くするどく刺さるラストへの疾走。

    とてもとても切なくて苦しくて深く重い現実と、でもやっぱり人の業や愚かさ、残酷さとともにあったかさが存在していて、とても好きな1冊に。裏返しの空の星は3人にとって満ちた世界だといいな。

    • kwosaさん
      あやさん!

      この本、とっても気になります。

      以前、NHKの演芸番組でたまたま講談の『番町皿屋敷』の一部を聴いたとき、いままでは皿を割った...
      あやさん!

      この本、とっても気になります。

      以前、NHKの演芸番組でたまたま講談の『番町皿屋敷』の一部を聴いたとき、いままでは皿を割った女中が手打ちにされて化けて出た怪談だと思っていたものが、実は惹かれあっていながらも、互いにそうせざるを得なかった悲しいラブストーリーであると知り、衝撃を受けました。
      あまりにも長い話なので抜粋だったようで、それ以来結末が気になって仕方がありませんでした。

      これは『嗤う伊右衛門』の系統の話なのでしょうか。
      京極さんが、どう料理しているのか読んでみたいです。
      2013/04/17
    • 山本 あやさん
      [♥óܫò]∠♡kwosaさん

      kwosaさん、こんにちは[*Ü*]

      NHKで番町皿屋敷を扱われてたんですね!
      わぁ~、ぜひ見たかったで...
      [♥óܫò]∠♡kwosaさん

      kwosaさん、こんにちは[*Ü*]

      NHKで番町皿屋敷を扱われてたんですね!
      わぁ~、ぜひ見たかったですーっっ。

      嗤う伊右衛門のように、京極さんが番町皿屋敷を
      想像して書いたら…という感じで、
      すべてが京極さんワールドに変換されて
      新しい物語になっててすごく新鮮でした♡

      悲しさが苔むすように全体を覆いつつなんですが
      なんとも叙情的で美しささえ感じるお話でした[*Ü*]
      kwosaさんのレビューが読めるの楽しみにしてますーっ♪
      2013/04/18
  • ちょっとした小箱のようなこの本の感触がたまりません。久しぶりにおどろおどろした独特なリズムというか京極節を堪能しました。江戸時代の怪談『番町皿屋敷』のストーリーを元に新解釈で書き直していて、巷説百物語の又市や徳次郎などが登場している。これはこれで楽しめたけど、虚しさの救いが見あたらないのがやりきれないこの限りではなく、やはり『鉄鼠の檻』や『嗤う伊右衛門 』のような神懸かった作品とは言いにくい。それでも、文章の美しさは音だけでなく、流麗な文字の配列にすら美学を感じました。

  • 新訳番長皿屋敷。単体でも読めるが、巷説百物語を読んでいると更に楽しめる、はず。前半は正直読むのが辛いが、後半多少盛り返してくる。
    とにかく揃いも揃って拗らせ系。なにか欠けている、やる気がしない、やらかすまで気づかない播磨、何もかも壊せばいいと言いつつ、結局狭い世界でしか生きられぬ主膳、馬鹿だから仕方がないという言い訳で結局事態を悪くする菊、分かりやすく悪いお嬢様吉羅、それぞれ方向性は違っても、面倒なことに変わりはない。主役級では柴田も面倒だが、一番分かりやすく、ある意味ヒトに近い。

  • 読んだか読んでなかったか分からなくなって読んでみたら読んでた。
    何が悪いということもないのだけれども、結末は惨劇へ。
    ままならないな~
    吉羅のツンデレっぽいキャラと主膳のやり過ぎな執着っぷりが素敵でした。

  • このストーリーも“欠けている”けど、そこがいい 

  • さすが京極夏彦氏。安定感のある読み応え。文句なし。
    前半は、それぞれの “虚ろ” “業” を抱えた登場人物の性質、性分、性格が盛りだくさんでストーリー展開はスローリーでじれったさもありましたが、徐々にスピードアップし後半はあっと云う間でした。

    ~番町皿屋敷~
    数々の物語が綴られてきたであろう物語。
    おどろおどろしい部分ばかりが前に出てしまいがちですが、こんなにも儚く美しい物語になるのだという驚き。
    結局は血なまぐさい陰惨な結末なのですが、それでも美しい怪談である。

    播磨、菊…2人が禁断の恋仲になって、吉羅が猿と播磨の両方を欲しがって…などと云う、俗っぽい展開でなくてよかった。
    しかし虚しい…しかし切ない。

  • 番長皿屋敷を、京極夏彦流に解釈。「嗤う伊右衛門」の方が
    良い作品のように思う。」

  • 番町皿屋敷が京極夏彦によって、書きかえられた。
    「一枚、二枚、・・・」

    数えなければ有るのに、数えてしまうと足りなくなってしまう。

    数に対して様々な考え方をもつそれぞれ。

    それが悲しい結末につながる。

  • いわゆる皿屋敷、お菊さんの井戸のお話。

    章ごとが登場人物たちの一人称で描かれていて、それぞれの章扉の○や●が印象的でした。

    自分は身分の低いバカな娘だと自覚しているお菊さんの純粋な生き方は、他からみたら悲劇かもしれないけれど、本人は案外数えられない空を見ながら一瞬で死ねて良かったのかも…。

    自分の人生には何かが欠けているとずっと思いながら生きた来た青山の殿さまや、手に入れられるものはすべて手に入れる努力を惜しまずに生きてきた大久保吉羅姫とか、いろんな人生を読めました。

    それぞれ共感できるところがある。
    人ってたぶん複雑なんだ。
    このお話に出てくる登場人物たちは、ある意味シンプルに突き抜けていて、それはそれでうらやましい。

    この作家さんのお話にしては読みやすかったし、文章や内容も簡潔である意味すがすがしくて、とても良かったと思います。

    脇役2人による後日談でお家断絶の結末を知るラストはちょっと微妙だったけど、まぁこの形しかなかったのかな…。

  • 読了日2011/09
    辞書かと思うほど、気が遠くなるほど、分厚い本。しかも、登場人物の独特なべらんめい口調で、読みにくい・・・
    けど、思った以上に早々と読み終わった。

    日本人なら誰もが知ってる怪談「番町皿屋敷」を下敷きに書かれた本。
    でも、こちらは怪談話ではありません。
    怪談ではないけど、終始ドヨ~ンとした鬱鬱感が京極氏独特のいい雰囲気です。
    京極氏の本は、「暗いけど美しい」が特徴だなぁと感じます。
    しかし、おかげで2日続けて怖い夢を見てうなされました(笑)
    最後は、やりきれない結末で、読後感までドヨ~ン。
    でも、面白かった。

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著者プロフィール

’94年『姑獲鳥の夏』でデビュー。’96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞受賞。この二作を含む「百鬼夜行シリーズ」で人気を博す。’97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、’04年『後巷説百物語』で直木賞、’11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞を受賞。’16年遠野文化賞、’19年埼玉文化賞受賞。

「2020年 『文庫版 今昔百鬼拾遺 月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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