ウィトゲンシュタイン家の人びと: 闘う家族

  • 中央公論新社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120041334

作品紹介・あらすじ

天才哲学者を含む八人きょうだいは、芸術家も出入りするウィーンの大邸宅で育った。音楽への異様な執着、兄たちの相次ぐ自殺、そしてナチとの攻防…ルートウィヒと、「片腕のピアニスト」として名を馳せたすぐ上の兄パウルを中心に、不屈の精神で荒波に挑んだ一族の百年を描く。

感想・レビュー・書評

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  • かのウィトゲンシュタインの家族の物語。世紀末から2つの戦争という時代を背景とした想像もつかない大金持ちの家族の歴史。読みやすく、おもしろかった。

  • 今夏ウィーンを訪れた際、一番印象に残ったのがクリムトを中心としたウィーン分離派のセセッション館(黄金のキャベツ)。この美術館の建設支援をしたのがユダヤ系大富豪カール・ウィトゲンシュタイン。
    本書はカールの9人の子供(と子孫)についての評伝だが、主に戦争で右腕を切断された後も片手ピアニストとして活躍した四男パウルを中心に語られる。
    一般には、五男の天才哲学者ルートウィヒが有名だが、この一家が、こんなにもエキセントリックだったとは全く知らなかった。
    ナチスの時代にウィーンに残された家族の必死の脱出劇は手に汗にぎるものがあり、兄弟姉妹の愛憎劇も、それぞれの性格を考えると回避できなかったのも仕方がないとは思うが、各人の人生があまりにも波瀾万丈過ぎること、家族の中にあまりにも自殺者が多いことに驚きを隠せなかった。

  • 「論理哲学論考」で有名なルートウィッヒ・ウィトゲンシュタインとのその家族について書かれた本。しかし、ルートウィッヒの話はあまりでてこず、片腕のピアニストであったパウル・ウィトゲンシュタインの話がメインと言ってもよいくらい。そして後半はナチスとの争い。特殊な時代ではあったものの、全員の個性がもの凄い。また兄弟や親戚が多く自殺しているのも特殊。もう少しルートウィッヒについても書いて欲しかったが、そのような本は他にもあるからかな。

  • ウィトゲンシュタインに興味関心のある人にはぜひオススメ。こんな家族だったとは、ちょっと予想を超えてた。

  • ルートウィッヒもポールも聞いたことがなかったが、読んでみると、なかなかおもしろかった。
    第1次、第2次世界大戦中のオーストリアの状況もバックにありながら、財産持ちの感覚というか、庶民とは違う育ち方をした人たちの想像しにくい人生を分かりやすく、書かれてあって、とても読みやすかった。

  • (要チラ見!) 一族の百年

  • 興味はあれど題材が題材だし…(なにしろ「あの」哲学者とそれを生んだ家族の物語だ)と腰が引けていた、私のような人にこそお勧めしたい。この厚さ・この値段・この装丁からはとうてい予想もつかないが、驚くほどに読みやすかった。
    本書には難解な哲学の知識も、クラシック音楽の素養も必要ない。揃いも揃って「キャラの立った」「濃い」家族の、しかも人類の長い歴史においても二つとない激動の時代を背景にした生きざまを、たっぷりと堪能すればいいだけだ。

    本書が取り上げるウィトゲンシュタイン家の場合、きょうだいの最後の一人が鬼籍に入ってからでも、すでに半世紀が経過しようとしている。さらにかれらがはぐくまれた家庭に至っては、百年も前にその実体——すなわちかれらの父親——は失われ、せめて往時の面影なりと求めても、舞台となった壮麗な邸宅さえ、第二次大戦の戦火により今や跡形もないのである。ためにもっぱら書簡に頼った、やや曖昧な書きかたとならざるをえない点は、「見てきたような」臨場感あふれるやりとりを望む向きにはもの足りないかもしれないが、やむをえないと言うべきだろう。

    またファミリー・ストーリーというジャンルは原則として、生き残った誰かの協力を得る以外にない。である以上、その「誰か」の立ち位置によって、微妙な偏向を免れにくいものであるが、本書はその点でも、明らかな不利にもかかわらず健闘を見せている。
    なにしろ五男四女のうち夭折一名、青年期の自殺三名、生涯未婚が二名おり、子孫を残した者のほうが少ないのだ。その一人、四男の「左手のピアニスト」パウルの子女が本書の主要な情報ソースであるらしいが、著者の筆致は「パウル寄り」などとはけっして感じさせない。あくまでも淡々と、この「おそるべき兄弟姉妹たち」の実態を描き出すことに専念している。

    著者は「あの」イヴリン・ウォーを祖父に持ち、みずからのファミリー・ストーリーを著すことで世に出たというが、ぜひそちらも読んでみたくなった。訳出が待たれる。

    2011/1/11〜1/12読了

  • パウルを中心に、ウィトゲンシュタイン家の一族の歴史を描きながら、オーストリア(ウィーン)を軸に世界の情勢を描いて妙である。

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著者プロフィール

アレグザンダー・ウォー

一九六三年生まれ。曽祖父は文芸評論家のアーサー・ウォー、祖父は国民的作家のイーヴリン・ウォー、父はコラムニストで母も作家という一族で、自身の系譜について書いた Fathers and Sons が高い評価を呼んだ。Mail on Sunday や London Evening Standard でオペラ批評を担当し、各国で翻訳された『クラシック音楽の新しい聴き方』などの著書がある。


塩原通緒

一九六六年生まれ。立教大学文学部英米文学科卒業。主な訳書に、ピンカー『暴力の人類史』(共訳)、プフナー『物語創世』(共訳)、リース『私たちが、地球に住めなくなる前に』、クリスタキス『ブループリント』(共訳)ほか多数。

「2021年 『ウィトゲンシュタイン家の人びと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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