アンダスタンド・メイビー (下)

  • 中央公論新社 (2010年12月10日発売)
3.59
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感想 : 175
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784120041686

感想・レビュー・書評

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  • 辛いこともあったけど、最後は幸せになれたね…と、いうストーリーではなかった。
    最後まで、どうしてこんなに不幸ばかりが覆いかぶさるのかと…強姦、幼児性的虐待、新興宗教、精神障害と読んでいるのが辛くなるストーリーであった。

    羽場先輩と別れ、賢治と付き合うことになったが、それは賢治の羽場先輩に対する対抗意識からで、そんな罠にはめられた黒江。そのために賢治の友人たちから強姦される。
    不気味な写真が送られてきた日に強姦にあう。未遂に終わったものの、多感な思春期の少女にとっては忘れることのできない恐怖であった。それなのに…
    信頼していた彼からの仕打ち。「なぜ?彼が…」、「なぜ?私だけが…」黒江の頭の中は整理しきれないほどの感情の波に押しつぶされてしまう。

    そして、そのおぞましい体験から逃れるように、カメラマン・浦賀仁の住む東京に転がり込むが、唯一救われたと思ったことは、黒江が師と仰ぐカメラマンは、黒江の気持ちを理解し、接したことである。カメラマンという職業がらレンズを通して、被写体の心の内を読み取り、理解している彼だからこそ、黒江の心を読み取れたのであろうと理解した。

    仁の家で住み込みで弟子として、いつかカメラマンとして独り立ちを夢見る黒江。本来であれば、それは身内の特に黒江の場合は母親であるはずなのに、どうして彼女の母親は、東京に来ることもなく、全く見ず知らずの他人に娘を預けることができるのか。それほど仕事が大事なのだろうか?と、「なぜ?」という言葉がつい口から飛び出してしまう。

    下巻は、黒江が自分と自分以外の人間の間に感じている隔たりが見えた。過去の体験が無意識のうちに彼女を自分の殻に閉じ込めて、他人との隔たりを作っているのが、読んでいるだけで感じる。もし、自分だったらと、考えると確かに『こう思われているのではないか?』、『こう見られているのではないか?』と、黒江が殻に閉じこもるのも納得してしまう。

    そんな黒江に追い討ちをかける出来事がある。それは母親が新興宗教にのめり込んでいたことであった。

    一神教は、人間は神によって創られたので、神に対して絶対服従である。
    宗教に入るということは、神への服従である。
    人間は誰しもなんらかの悩みをかかえ、その悩みと多かれ少なかれ闘っていると思う。そんな心の悩みと日常とのバランスを古来から人間はキリスト教、イスラム教、仏教などの宗教を信仰することで埋めてきたのだと思う。そんな人間の心理をついて繁栄していく新興宗教。悩める人を宗教を信仰するという行為に酔わせ、陶酔させて、あたかも悩みが軽減したかのように思わせて依存させる。そして、その宗教に服従させる。懺悔しその罪を金銭に換える。私の中では、新興宗教はそんなイメージがある。

    黒江の母親が、家族を捨てて身を投じたその信仰が、冷静な立場から見るとおかしいものであっても、悩みを抱えている立場からではそうではないのであろう。結局はさらに悩みを積み重ねてしまう行動へと導き、宗教による娘の幼児性的虐待、そして離婚、最終的には、娘をも巻き込んでしまう。
    中学の時に黒江の自宅に送られてきた裸の自分の上にのる男性の写真の意味がわかった時の黒江の心中を思うと、私なら母を恨むような気がする。

    最初から最後まで、暗く、辛い描写ばかりで、その心の描写は、丁寧であるがために読み手には重く感じる。
    暗いけれど、読み応えのある心理小説で、丁寧な描写であるからこそもう一度読みたいと思えるものであった。

    追伸: カバーは上下が同じで表紙が逆になっていて、好みである。

  • とにかく黒江が不安定。ずっと不安定。最後まで不安定。
    なぜ、こんなことになってしまうのか、最後まで読むとわかりますが‥。

  •  

  • 途中から息もつかせぬ展開でした。
    最後は前向きなラストで良かったです。

    主人公の母が主人公に対してしたことは許し難い行為のはずなのに,
    その母の独白が妙に胸に迫りました。
    上巻のように生理的嫌悪を覚える場面はほとんどなかったので,☆4つです。

  • 上下ともにほぼ一気読み。島本理生作品では珍しく、主人公が大人しい方ではなく、男性キャラも魅力的だったように思う。仁さんも、彌生くんも、羽場先輩も。彌生君とのやりとりは切なかったな。終盤、仁さんの優しさに泣きっぱなしでした。やられた。

  • もうっ! あほか!
    女はなんでみんなこんなにあほで悲しくて、人を落ち着かない気持ちにさせるんだ!
    というのが、総評です。

    そんなに重いものなら手放しちゃえばいいのに、どうしてもそれができないんだなあ。
    自分の悲しみに魅入られて目を離すことができないのは本人には辛いけれど、周りからみたら「なんて不器用なんだ」とあきれられるんだろうな。

    とても心苦しく読みました。島本さんの作品はいつも、壊されたといいながら、再生していくといいながら、その両方ともできていない。
    ただ筋があってその流れのままに沈んだりちょっと浮かび上がったりするだけで。まあ、そこがいいんですけど。

    印象的な言葉が多かったです。
    以前あった、「読者を置いていくよう表現」が1つ2つ復活していたので、ちょっと驚きました。

  • 孤独と繋がりと家族の話。
    彌生君は孤独から黒江の笑顔で救われた。
    だけど黒江は彌生君には絶対的優しさ、無条件の愛情を求めた。
    中途半端に壊れて、中途半端に孤独の中で
    黒江は絶対的に孤独な仁さんと接することで
    繋がりを手に入れることができたと思う。
    大切な人と死という別れをした彌生君と仁さんは
    中途半端に孤独な黒江に惹かれていった気がする。
    許しあうことが繋がることなのかもしれない。

    仁さんの強さと弱さの入り混じった雰囲気が
    とても大好きだった。

    島本理生の文章は
    丁寧な日本語なわけではないのに
    キレイな日本語だと思う。
    間の取り方が上手くて、句読点のつけ方が最高。

  • 資料を読んで、書きましたー、という読後感。ぺらっとしている。

  • 島本理生はひとりの人に伝わればいいって熱を感じる。だから好き。このままで。

  • 2022.1.19読了
    3.5
    最初は、黒江の不器用さや不用意な行動に違和感を感じていたけど、過去が明らかになり腑に落ちた。
    漫画的展開が少々気になるところではあるけど、現実にありえないからこそ、安心して読めるのかも。人物描写が魅力的で飽きずに読み進められた。
    ラストは様々なイベントがたたみかけるように。
    それにしても、現実に搾取されてきた人達はこの本を読めるのでしょうか。

  • 手紙ってやっぱりいい。

    後半はだいぶ予想外だった。
    上巻よりちょっとだけ、黒江に対するイメージがましになった。

    やっぱり仁さんは好き。
    「僕には人は救えない」

  • 上巻では普通の女の子に見えたけどまさかこんなことが、という急展開の下巻だった。
    この本が暗く重たい気持ちにさせるのは黒江の身に起こった不幸な出来事よりも、一貫して付きまとっている不安感のせいかなと思う。
    わけもなく不安で、自分でも説明がつかないけれどもとにかく誰かになんとかしてもらいたい。でも誰といても不安は消えない。
    こんな気持ちに支配されたら人生辛いだろうなと思った。
    写真で成功したら黒江は自分を他人に委ねずに済むのかな。
    辛かった。
    辛い暗い気持ちの逃がしどころは登場する男の人が生々しくてかっこいいこと。仁さんも羽場先輩もどこかにいそうなんだけどちょっとだけかっこいい。このちょっとだけが、絶妙。
    しかし密かに期待していた、彌生くんが再開したらかっこよくなっているという超展開はやはりなかった。

  • うわー、私黒江嫌いだなぁ(笑)たしかに彼女は辛い経験をたくさんしてきたけど、彌生くんに対する態度がなぁ〜…。途中からかなり急展開でんんん…ってなった。結局賢治くんってどうなったの?ヒロインに魅力は感じないけど綾乃さんは素敵だと思った。2012/404

  • 黒江に自分を重ねてしまった…
    そんな風に思う自分が甘えてる。
    でも良かった。少しずつだけど確実な何かに進んで行ってる黒江を応援し続けたい。出逢えて読んで良かった。
    2013.5.22

  • 下巻に来て彌生君が、一瞬ただの男の子になったのは寂しいな。
    行為は好意が伴わなければ意味が無い。
    話の引き波の旨さが好きだ、そして一気にくる殴り合いのような感情の波。
    気づかなくても、人は誰かに助けられている。
    くっそー、死にたくねぇ
    死にたくねぇ!!!

  • なんなんだ?

  • 久しぶりに読んだ島本理生さんの作品。
    1983年生まれでおない年ということでデビュー当時から読んでいる。
    若手作家さんの中では綿矢りささんや金原ひとみさんなんかもいるんだけれども
    私は昔から島本さんの小説の雰囲気やその紡ぎだされる言葉が好きだった。
    この作品はもうデビュー10周年記念とある。
    もうそんなに経つのか!と思わず驚いてしまうのだけれども
    この作品にはなんだか今までの彼女の作品で一貫して出てきたものの
    集結集のように感じられた。

    読みながらじわじわと胸の中に押し寄せられる感覚を振るうことができない。
    なんとなく息苦しい思いで読み進んでいき
    読み終わったあとに、微かな希望の光が見えるものの
    正直爽快感などはなくて、逆に胸の中に痼りが残ったような感覚を覚える。

    読んで一晩経ったいまでもなんとなく小説のなかの
    雰囲気に呑み込まれているようで、胸が軋む。

  • 最後の行を読んで、この物語を読んで良かったと思えた。私は、許されてもいいのだと。

    下巻も一気に読み終わった。島本さんは私をどこまで知ってるのかと言いたいぐらい、代弁された気分に今回もなった。真綿荘に出てくる晴雨さんの姿を、もっと具体的に書いたのが仁さんという印象を受けたのは気のせい?

  • 女版カサノバコンプレックスって感じかな。人間は悪魔にはなれるけど、神にはなれないよ。罪や赦しに性差があるのか?ってのは難しい問題ではあるけれど、同じ状況で皆が同じように勝手な事するわけじゃないって事を考えると、性差ではなく、個人差でしかなくて、女流作家のある種の甘えを感じるかな。この作品に共感する女子はちょっと倒錯しているかもね。

  • ココロが痛い。けど、温かい。

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。03年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。15年『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。18年『ファーストラヴ』で第159回直木賞を受賞。その他の著書に『ナラタージュ』『アンダスタンド・メイビー』『七緒のために』『よだかの片想い』『2020年の恋人たち』『星のように離れて雨のように散った』など多数。

「2022年 『夜はおしまい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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