どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?―現代将棋と進化の物語

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120041778

作品紹介・あらすじ

勝負師、研究者、芸術家の貌を併せ持ち、40歳の今も最高峰に立つ「考える人」。その真の強さとはいったい何か?10篇の「観賞」と「対話」が織り成す渾身の羽生善治論。

感想・レビュー・書評

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  • #3234ー57

  • 「三月のライオン」以降の2ヶ月強、自分の中で将棋本ブームのうねりがとまらない。「ハム将棋」にこてんぱんにされながら、将棋連盟のHPをチェックし、(ルールすら知らなかったで)小学生用の「やさしいこども将棋入門」にまで手を出している。本著は、「羽生」だけを語ったものではなく、伝統と理数系的技術が融合した将棋の魅力、データ・研究合戦、新しい一手の権利関係、戦国時代に突入した若手を含めた棋界の状況等を紹介している。ルールを知らないものでも十分に楽しめる。ただ、棋譜がわかり、棋士の戦略の凄みがわかるのであれば、麻薬のように面白い本なのだと思う(頑張ろう)。いずれにせよ、勝ったのに、「もっとうまく指してくれれば、もっともっと楽しめたのに、簡単に終わらせてくれるな」と対戦者の投了直後に怒りを見せる羽生など、棋士は非常に魅力的。

  • 【概要】
    羽生さんの対局を通じ、現代の将棋界とその中での羽生に迫る本
    【著者】
    シリコンンバレー在住の会社経営者
    【感想・印象に残った点】
    ・羽生の優れている点として、下記が挙げられている。
     ①人間的な強さ:不調時でも快活に振る舞い、弱点を人に見せない
             準備を怠らず、準備が大変であるという日常を喜ぶ
             先入観を持たず本質を抽出し、シンプルに物事を見る明晰さ
             過去の成功体験に縛られず、日々結論が変化することを受け入れ
     ②将棋への没頭:楽しみながら苦労を続け、将棋の心理の解明を望む
             勝負を楽しみ、局面が複雑化することに喜びを感じる
     ③棋士としての強さ:対戦相手の心理をつかみ、個性ともあわせて予測をする
               若手が主役の研究競争にもキャッチアップ
    ・印象的だったのは、山崎線で勝った直後に怒りを見せたシーン。山崎は時間がない中、羽生相手に差し合う難しさを感じ投了したが、羽生にしてみればまだ勝負は分からない場面であった。勝敗よりも将棋の展開に関心を示す、羽生らしいエピソード。
    ・また、出てくる棋士の個性も興味深かった。
    木村:勝率の高い実力者だが、気使い屋で、タイトル戦となると集中が出来ず(普段は夢中になるとハンカチを噛む癖があるが、それも押さえている)、力が発揮しきれない。
    山崎:芸術家肌で、準備してきた手順を捨ててでも、その場で閃いた新しい手を指したい衝動に動かされる。語り口にも味があり。筆者曰く「華」のあるタイプ
    三浦:研究熱心でひたすら情報を集めて対局に望む
    深浦:精神的に非常に強く、若手棋士曰く「深浦さんより才能のがあると思っている棋士はたくさんいるが、深浦さんより精神が強いと思っている棋士は一人もいない」

  • 真っ当な問いだけど、決して羽生さんだけが強いんじゃないんだよ、と説く本書。「詳しいことなど知らないほうが、かえって本質を射抜くこともある」将棋がこれほど愛されるのはなぜでしょう。囲碁で同様の書籍は見たことない。知らないだけかな。
    将棋の進化はとどまることを知らない。著者が付き合ったわずか5局の番勝負でも、新しい試みがなされ、それに対して多くの棋士が異なる意見を持ち、議論を交わす。一手に込められた思いがわかりやすく書かれている。
    表題の問いの答えは別段、記されてない。強さは客観的な評価では判断できないものだからだろう。「トップランナーではない」と羽生本人も語っている。そこに将棋の深みがある。

  • 同様の天賦の才を持った多くの人にも畏敬の念を抱かせる天才の中の天才。それでいて人格者なのだからもう、凡人はただただ讃えるだけです。

  • ウェブ進化論でおなじみ、梅田望夫氏の将棋をテーマにした新刊。今回は、羽生氏の強さの理由にフォーカスをあてながら、現代将棋を考察する一冊となっている。自分は、将棋を指すことにも、観ることにも全く興味がないのだが、羽生氏関連の書籍は必ず目を通してしまう。大局観、構想力といったキーワードに、ついつい引きつけられてしまうのだ。

    「将棋が強くなるための高速道路は敷かれたが、高速道路を走り抜けた先では大渋滞が起きている。」という現代将棋をあらわした羽生氏の言葉はあまりにも有名だが、本書においては、”将棋における情報共有と進化”に関する記述が、非常に興味深かった。

    ◆将棋における情報共有と進化のポイント
    ・進歩を最優先事項とするなら、情報共有はさけられない
    ・新手に権利関係がないおかげで、ここまで急速に進化してる面もある。
    ・自らの矜持によってフェアネスを模索していくしかないのだろう。
    ・大局観で勝負できる局面に持ちこむために、最新研究をきちんとしておく。
    ・自分が考えた手が檜舞台で使われたとしても、その先を見たいと思う棋士が大半で、自分の手を盗まれたと思う人は少ないのではないか。
    ・新しいアイディアなんてないんだ。ただ、初めて世の中で実現できたアイデアというものは存在する。

    昨今のソーシャルメディアの広がりによって、トレンドとなっている領域のことを、もっともらしく語ることが、ものすごく簡単な世の中になっていると思う。例えば”ソーシャルメディアと共感について”、”ソーシャルメディアの普及による情報収拾の変化について”、”TwitterとFacebookの違い”、”電子書籍とプラットフォーム”について等、意見や見解はそこらじゅうに偏在しており、自分の感覚にフィットするものを選べばよいだけである。すなわちそこは、高速道路の世界である。

    大切なのは、その先の渋滞をどうやって抜けるのかというところにある。将棋の世界における情報共有とは、自分が大局観で勝負できる局面に持ち込むための、トラフィックを目的として行われているにすぎない。つまり、ソーシャルメディアで得た文脈を、自分のプロフェッショナル領域にどのように導き、何を成し遂げるかというところにまで至らないと、進化は生まれない。

    大局観や構想力は、シェアもRTもできないのである。

  • 今ならさしずめ「どうして藤井さんだけが、そんなに強いんですか?」タイトルになりそう。
    題名を見ると、無邪気な感じだが、そういう「残酷な」問いに対する答えとして書かれたという。
    印象に残るのは棋士が行っている研究の凄まじさ。
    現代はさらにコンピュータを用いてさらに深く研究されているのだろう。

  • 1

  • 途中で挫折。駒の動かし方や禁じ手など最低限のルールしか知らない超初心者には難しかった。試合の解説が出てくるので・・・。

  • 将棋に相当詳しくないと何書いてるのか良くわからない。
    個別の細かい話やエッセイが多く、まとめが少ないので読んだ後に残りにくい。
    コンピュータとの話は面白かった。それだけについて書いてある本が読みたい。

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