人質の朗読会

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 3008
レビュー : 621
  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120041952

感想・レビュー・書評

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  • 読みやすく、静寂で物を語り継げる話だった。8人の人質が語った物語に引き込まれ、大切なものとは何かを問いかけ、心にすっと入り込んだ。生とその隣にある死のことを考えさせる。命には限りがあること、普段自分でも気づかずに生活を送っているのだなと感じさせる。彼らもそれぞれの人生があり、語り手の職業、年齢、性別、語った時の状態がよりいっそう強く感じ取れる。人生はどう転がるのか未知数であり、こんなハズでは…と思う人生もあると感じられる。どの話もしんみりと感動するものだが、ビスケットと槍投げの青年の話が印象に残った。

  • 外国で人質に取られた日本人達が、一人一人自分の物語を語るという形式の短編集。
    どの話も底流に時にはっきりと時にうっすらと死の匂いが漂う。
    しかしながら、とても品があり深遠で心の深いところに響くような物語となっている。
    このような形で死を扱うことのできる作者の力量は流石である。

  • 最初の第一夜に入る前の数ページのあらすじを読んで、この物語の構成の上手さに鳥肌がたちました。
    人質として拘束された7人が、一人一人自分の物語を朗読したテープが、事件後に見つかり、それを公開したという形。
    あまりにもリアルで、まるで本当にこの事件が起こったように感じました。

    ただドラマチックな冒頭と違い、人質達が語る本編は平凡で静かな日常に起こった、ほんの少し風変わりな出来事だったのが、読んでて少し中弛みを感じました。
    死ぬかもしれないという場面で、こんな風な小さな繊細な出来事を語らせるあたりが、小川さんぽいし、そこがまた魅力なんだろうとは思います。まあ、ただ単に私には合わないお話が多かっただけだと思いますが。

    第八夜のスーツ会社に務めていた男性が、唯一のお得意様から貰った花束のお話と、第九夜の朗読会を発表される前から聞いていた捜査官の初めてみた、外国人(日本人)のお話は凄く好きでした。
    第八夜は登場人物が自分に近い大学生の頃の話で、第九夜は端から見てる側の話だったからだろうなあ……!

    第一夜 杖
    第二夜 やまびこビスケット
    第三夜 B談話室
    第四夜 冬眠中のやまね
    第五夜 コンソメスープ名人
    第六夜 槍投げの青年
    第七夜 死んだおばあさん
    第八夜 花束
    第九夜 ハキリアリ

  • 読了後に良さがじんわりくる本。内容は、孤独な人について語る孤独な人の話なのだと思う。
    正直に言えば勧められなければ読まなかった。平凡な人物による、なんてことはない思い出話の短編連作。しかし設定は「地球の裏側の山岳地帯でゲリラに捕らえられて爆死した人たちが残した話」だ。死を意識してでなく暇つぶしにそれぞれが書いた話なのだが、誰も家族との喜びや幸福について語っていない。人が意識せずに思い出す取っておきのこと。それは意外に心の中に住み着く静謐な孤独であって、それが生きるよすがになっているのかもしれない。

  • 人質たちが語る内容はどれも面白かったです。8人とも記憶に刻みこまれた深い思い出と共に生きてきたんだなあと感じました。で、この後、二転、三転すると勝手に思っていたので、あの結末に拍子抜けとまでは言いませんが、え?って感じでした。作者がなぜ敢えてこういう設定にしたのかが分かりません。表紙の子ヤギ?は可愛くて好き。

  • 小説読んだの何年ぶり。最後には全員亡くなってしまう人質たちの監禁下での朗読会。話の終わりの短いプロフィールがいい。B談話室と花束が心に残る。表紙がいい。土屋仁応作/子鹿

  • 地球の裏側にある、一度聞いただけではとても発音できそうにない込み入った村の近くで、日本の旅行会社が企画したツアーのバスが拉致された。バスには日本人が8人乗車していた。
    犯人グループは政府を相手取る、ゲリラ。
    ゲリラと政府軍との交渉は長引き、遠い国のこととてやがて人々の記憶が薄れかけた頃、軍の特殊部隊がアジトに強行突入、激しい銃撃戦となり、その場にいた犯人グループは全員射殺、人質8人は犯人が仕掛けたダイナマイトにより全員死亡・・・という痛ましい結果に。
    その後現場から、細かく文書がぎっしり書かれた板きれや、壁などが発見される。
    そののち政府側が差し入れ時に偲ばせておいた盗聴器によって録音されたテープが公表された。
    人質が時間に任せて、一人ずつ語り合った朗読が入っていた。板きれなどに書かれていた文章はその下書きと見られた。
    以下の章は8人の人質の朗読の内容である。
    今まで生きてきた中でのほんの一コマであったり、特異な体験の模様であったり、その人の人生そのものであったり、非常に興味深く引き込まれて読んでいくうちに、どういう状況で、誰が語っているのかわからないまま読み終わると、巻末に誰それ、職業、年齢、今回このツアーに参加した理由、が記されていて改めておっ、これは人質になった人の朗読なんだ、とその都度現実に引き戻されるということの繰り返しだった。
    聞き手は人質同士と、見張り役の犯人たち、そして盗聴器の向こうにいる特殊部隊の一員だけ。
    毎回控えめな拍手とともに始められる静かな静かな朗読会、それは犯人や人質などの立場を超えたある種の一体感を持った、まるで憩いのひとときのようだ。
    しみじみとした何とも不思議な読み物に出会った。

  • 小川洋子さんの作品は、『博士の愛した数式』以来でした。

    反政府ゲリラにより異国で人質にされた日本人が一人ずつ、自分の人生の最も印象的な部分を小説にし、朗読会をするお話。

    序章で終わりが示されているからこそ、年齢も性別も職業も異なる人達の人生の1ページがささやかにも輝いて映る。

    「やまびこビスケット」。
    こういう、二人だけの秘密のコミュニケーションっていいな。
    ビスケット工場で労働していたのが最終的にはパティシエになっていてすごい。

    「B談話室」。
    世の中にはマニアックな会合がたくさんあるよな。。と妙に納得。

    「冬眠中のヤマネ」。
    全く売れない手作りの動物のぬいぐるみを売るおじいさんが何だか切ない。
    ビスケットにしてもこの話にしても博士の愛した数式にしても、
    小川さんは愛すべき変な老人を書くのが得意なのだろうか。

  • 今ここに亡き人々の語り事によって、「生きていた時間」がありありと感じられた。
    心に刻まれ蓄積された記憶たちを語る日が、いつか訪れてほしいような、なんだか怖いような......

  • 人質になった人たちの話。

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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