人質の朗読会

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 3022
レビュー : 622
  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120041952

感想・レビュー・書評

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  •  小川洋子さんらしい連作短編集! とっても静かで、淡々と…ほんの少しだけ時空がねじれているような空間に連れて行かれたような気分になります。
     前半の5つのおはなしが好きかな。後半、ちょっとだけダレてしまいました。

  • 枠組みと中身のギャップに苦しみました。
    こんな枠組みじゃなければ、もっと面白かったかも。
    途中、「これ、どうやって終えるつもりなんだろ?」と心配までしてしまいました。

  • 「人質の朗読会」
    悲しい事件の背景。


    突如飛び込んで来たニュースは、一度ではとても発音出来ない村で起きたバスハイジャック事件だった。犯人グループの反政府ゲリラは、乗客8人を拉致し、仲間の釈放と身の代金の支払いを求めた。


    この事件は長期化し、最悪の終幕を迎えた。特殊部隊がアジトに強行突入し、ゲリラ側と銃撃戦になり、結果犯人グループ全員を射殺したが、人質8人は犯人の仕掛けたダイナマイトの爆発により、全員が死亡した。


    2年の歳月が流れ、事件は思わぬ姿で帰ってきた。アジトで録音された盗聴テープが公開されたのだ。そこに録音されていたのは、人質による朗読会だった。


    人質と朗読会、全く噛み合わない2つを組み合わせるという難解作業をやり遂げている一冊。ゲリラに拉致された中で、自らの話を朗読する。彼らの姿を想像すると、とても怖い。


    しかし、彼らの朗読には、怖さがない。彼らが話す一つ一つの物語は、縁側で孫に聞かせているような穏やかな空気が流れている。とても人質になっているような緊迫感が無い。


    個人的に好きなのは、「死んだおばあさん」。「あなた、僕の死んだおばあさんにそっくりなんです」から始まる朗読は思いがけない出だしで、最後の締めは、思ってもみないあったかさとほのかに香るしんみりさ。


    また、「やまびこビスケット」はどこか童話的で、「B談話室」はちょっぴりホラー、「冬眠中のヤマネ」は、2番目にお気に入り。「ハキリアリ」も好きな物語。


    人質と朗読、ぱっと見れば、アンバランス。でも、人質になっている一人一人は朗読者として世界観を確立している。だからか、人質として感じるだろう恐怖や緊迫感は排除されているように思うし、アンバランスは感じない。


    このアンバランスに見えて、読んだらアンバランスではない感じが好きです。

  • 何の人質で、その後どうなったのかは序章で語られる。
    その時点で「ええええぇ!」であった。
    人質たちの朗読内容は、≪世にも奇妙な物語≫チック。

  • 不思議な話が多かったです。
    人にはだれも物語がある。著者がそうコメントを残しています。

    人がいざピンチ絶望的な状況に陥ったとき、こういう話をするのでしょうか。
    不思議です。

  • 冒頭で、人質が亡くなっている事実を知るからか、どこか一編一編に悲しさが残ります。
    私の人生は私目線でしか進まないけど、きっと一人一人語れる人生の物語があるのだろうなと思いました。

  • 小川洋子さんの作品を初めて読んでみました。どこか寂しげで静けさの中の物語だなと感じました。

    冒頭で人質になった人々がこの世に居ないことを語られ、机や床などに霞んで見えにくくなった文字があった事、人質で捕まっている最中朗読会が行われた事が書かれ、その後1人1人のどこか不思議な日常が短編小説のように語られていきます。どっか不思議でさみしげな物語たちは、もうこの世に居ない人々の悲しさを現しているようだった。

  • お墓参りに行った時、並んでいる墓石に没年月日、名前、年齢が刻み込まれているのを見ると、それが全く知らない人なのに、この人はどうしてこの歳で亡くなったのだろうかと感慨を催すことがある。この小説はおそらくはそんなところから発想されたのだろう。まさに小川洋子さんならではの想像力(創造力でもあるが)の賜物が本書である。そして、8人それぞれの話の後に付された短い情報が読者の想像力を刺激する、なんとも巧みな構成である。例えば、「夫の赴任先からの帰途」とあり、「ああ、この人は再婚したんだなあ」と思わず共感を寄せるのだ。
     8篇のいずれも捨てがたい。ただ、9篇目の政府軍兵士は余計だ。

  • 某国で誘拐され、人質となった8人が語る物語。とはいえ、事件の内容とは関連はなく、何とも不思議な話。心にほわんとひっかかる。

  • あの出来事が自分にとってどんな意味も持っていたのか、価値があったのか。
    よくわからない。
    でも、思い出深い。
    たぶん、大切な出来事。

    …そういう感じの。
    そういう感じの出来事が、人生にひとつあるって、
    切ないけど素敵なことだな。

    一番最後に収録されている「ハキリアリ」という作品は
    人質ではなく、救助に携わった存命の人が書いた回想録なのだけれど
    これが、ぐっときた。
    この作品は、動きのある物語になっているし、
    そこはかとなく生命力や希望を感じさせる。
    「ハキリアリ」を読むと、突然、人質たちの作品とのコントラストが明確になり
    「この人は生きている」「あの物語の人々はもういない」ということを実感した。

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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