人質の朗読会

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 3018
レビュー : 622
  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120041952

感想・レビュー・書評

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  • 006 人質の朗読会

    人質として拘束された日本人の回顧録的な短編集。

    異国の地でテロリストに拘束された8人の日本人。
    不安な夜を過ごす彼らが毎夜開いた朗読会をまとめたもの。

    カンボジアからタイに向かうミニバスでこの本を読む。
    荒野を走るこのバスがハイジャックされたら、
    いつ解けるか分からない拘束の中、
    僕も彼らのように朗読会を開くかも知れない。
    そんな時、自分なら何を話そうか。

    物語の中の彼らの話は実に取り留めも無い話。
    人間、最期の時に心に浮かぶのは
    意外にも些細な日常の一瞬なのだろうか。
    いや、日常にある小さいな一瞬こそが
    人生で一番幸せだったと死ぬ前に気付いたのだろうか。

    何故彼らはこの話をしたのだろうか、と
    当人達の気持ちを想像しながら読むと、なお感慨深い本。

  • 図書館からの戦利品。かなり好き。小川さんの小説は、あったかいストーリーと文章なのに、どこかサラッとしてて(ある意味残酷なのかも?)、そこが好き。起きたまま夢が見られる感じがするのも好き。

  • 地球の裏側にある、一度聞いただけではとても発音できそうにない込み入った名前の村からもたらされた、日本人旅行者と添乗員の拉致事件。
    事件はやがて犯人グループ5名、人質8名全員の死亡により幕を下ろす。
    残ったのは、人質たちが己の過去の物語を語った、肉声入りのテープのみ。
    人質生活のなかで行われた朗読会とは、はたして何物であったのか。

    形式は短編連作。
    人質生活自体について語られることはなく、ひたすら過去だけを見つめている。
    この作品を通して、私はたしかに死者の声を耳にしたのだと感じた。

    <収録作品>
    杖/やまびこビスケット/B談話室/冬眠中のヤマネ/コンソメスープ名人/槍投げの青年/死んだおばあさん/花束/ハキリアリ

  • 独特の世界観ですが、小川洋子の作品で5本の指に入るかと問われれば、そこまでのものでは、、、と思う。
    ごく普通の日常の営みを、非日常の極みとも言える設定の中で淡々と語り紡ぐことにより、より一層の効果を出そうとしたんだろうが、正直言ってあまり有効なものとして機能していないと感じる。
    この感じが全体の評価につながってるかな。
    ただ繰り返しだが、個々の短編は光を放ってはいると思う。

  • 「コンソメスープ名人」では、「ぼく」がコンソメスープの味を忘れていました。同じように主人公が本の内容をなぜか忘れてしまう「七夜物語」というお話があります。上・下共面白いので、是非読んでみて下さい。又、読んだ人は教えて下さぁい!!!!!

  • 冒頭から、ショッキングな結末を提示されます。
    でも、そんな中で静かに語られる一人一人の人生の一場面が、とても心に沁みてきます。

    それは、幼い頃の場面であったり、数年前の場面であったり様々ですが、語られるすべての物語に宝物の時間を感じました。

    中でも、『やり投げの青年』が好きでした。
    黙々と投擲をする青年とただ見続けている私。
    言葉が交わされるわけではなく、青年の動きだけが静謐な雰囲気を醸し出しています。
    静かな時間の流れの中に、脈打つ鼓動の強さが響いてくるようです。

  • 人質という死と隣り合わせの中で自分は何を語れるだろうかと考えると、もしかすると泣き叫ぶのではなく、こういう日々のちょっとした心に残った話を語りだすことで自分が生きているという証を感じられるのではないだろうか。

  • いいですねぇ
    この静かな昂揚感
    一遍一遍を読んだ後の余韻が
    たまらなく愛しい

    九篇の最後に添えられている
    各語り手たちの
    プロフィールが秀逸です

  • 海外で捕まった人質8人が語るそれぞれの物語。 読み終わってすぐにアルジェリアの人質事件があり、不思議な気分になった。

  • 地球の裏側くらいに日本と離れた土地で起こった、反政府ゲリラによる日本人拉致事件。
    その際に、人質たちが朗読していた自分たちの書いたお話が八本と、彼らの朗読を聞いていた特殊部隊の男性一人のお話が書かれています。

    人質たちがどうなったのかは最初に語られてしまうので、
    この先どうなっちゃうの?!人質はみんな助かるの?!
    といった緊張感はない。
    収められている話も、大きな事件が起こった話ではなく、自分たちの経験や人生の分岐、出会った人のことなどありふれたお話ばかり。
    これで作品が成り立つんだろうか、と一瞬思ったけど、朗読された物語を一つ、一つ、読んでいくたびに、それがあまりに身近でどこにでもありそうな出来事なせいで、人質になった人々が確かに生きてきた証なんだと思い知らされるのです。

    事件の結末が既に分かっているからこそ、一つ一つのお話が、切なくて、尊いものに感じられた。
    静かに胸に迫る良作。

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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