- Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120041952
感想・レビュー・書評
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人質の朗読会というタイトルから想像していたのは、傷つき疲れきった人達の嘆きのような語りだった。
なんてバカなことをことを考えていたんだろう。
もっとずっとずっと素敵な物語だった。
人質になった8人と朗読を聴いていた特殊部隊員が語ったのは、「自分の中にしまわれている過去、未来がどうあろうと決して損なわれない過去」。
誰にも言わずにいた、お守りのような思い出だ。
こんな物語を語れるなんてうらやましいなと思った。
どの朗読もその特別な時間を一緒に過ごした人への思いやりが溢れていて、とても優しい。
時が経ってから振り返ることで、自分にとってその時間がどんな意味を持っているかが明確になるのかもしれない。
何気なく過ぎていく無数の瞬間の中に、時間が経てば経つほど鮮明になっていく一時が確かにあるように思う。
特に素敵だなと感じたのは「杖」、「コンソメスープ名人」、「ハキリアリ」。
共通点は幼少期の思い出だということ。
9つの物語の中でも特に驚きと好奇心に満ちていて、一際キラキラしていた。
すごくすごくキレイで、スペシャルな時間をお裾分けしてもらった気分。とても幸せな一時だった。 -
私も朗読会に耳を傾ける一人となりました。人質の語る話はすべてどこかに死がまざっている。丁寧に語られた話はずいぶん昔の話で、それから大分時間がたってい、みなおじさんおばさんの年齢だが、今となってはその人たちもいない。2段階に時間が早送りされた感じだ。『やまびこビスケット』が心に残る。お話の最後の1行とプロフィールの1行の行間に詰まった年月に思いをはせる。今のところ今年1番。
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「私も朗読会に耳を傾ける一人と」
小川洋子には、いつも驚かされる、話の構成と表紙の装丁(今回は彫刻家の土屋仁応)に、、、
しかし辛い話です。...「私も朗読会に耳を傾ける一人と」
小川洋子には、いつも驚かされる、話の構成と表紙の装丁(今回は彫刻家の土屋仁応)に、、、
しかし辛い話です。。。2013/02/26
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2015/08/26
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テロ事件の人質という状況下で、たぶん心のどこかに死を意識しながら、8人それぞれが朗読する創作(あるいは実話?)を集めた短編集。この設定が秀逸。
どのストーリーも決して明るくキラキラしたものではなく、どこかもの悲しい雰囲気が漂う中、でも彼らがしっかりと生きてきた証のような素敵なエピソードがちりばめられる。
お気に入りは「花束」と「やまびこビスケット」。地味に毎日を生きる年配者が、やはり地味に生きる若者の心を静かに動かすところがいい。 -
文庫版が出たので再読。
印象深かったのは、やまびこビスケットと冬眠中のヤマネ。癖があり世に背かれてしまうような偏屈さをもつ老人と交流する若者の姿が好きだ。記憶からいつまでも消えない日常の中の些細な非日常を、自分を構成する大切な要素として語る、しかも命の危険に晒されているときに、というのは凄い発想力だと思う。さすが小川洋子。大好きです。 -
静かに進んで行く「誰かの人生」を追体験していくうち、読書会に参加しているような気分になった。夜寝る前に一章ずつ読んでいきたい、「噛みしめる」本。
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あの出来事が自分にとってどんな意味も持っていたのか、価値があったのか。
よくわからない。
でも、思い出深い。
たぶん、大切な出来事。
…そういう感じの。
そういう感じの出来事が、人生にひとつあるって、
切ないけど素敵なことだな。
一番最後に収録されている「ハキリアリ」という作品は
人質ではなく、救助に携わった存命の人が書いた回想録なのだけれど
これが、ぐっときた。
この作品は、動きのある物語になっているし、
そこはかとなく生命力や希望を感じさせる。
「ハキリアリ」を読むと、突然、人質たちの作品とのコントラストが明確になり
「この人は生きている」「あの物語の人々はもういない」ということを実感した。 -
冒頭から、ショッキングな結末を提示されます。
でも、そんな中で静かに語られる一人一人の人生の一場面が、とても心に沁みてきます。
それは、幼い頃の場面であったり、数年前の場面であったり様々ですが、語られるすべての物語に宝物の時間を感じました。
中でも、『やり投げの青年』が好きでした。
黙々と投擲をする青年とただ見続けている私。
言葉が交わされるわけではなく、青年の動きだけが静謐な雰囲気を醸し出しています。
静かな時間の流れの中に、脈打つ鼓動の強さが響いてくるようです。
著者プロフィール
人質の朗読会のその他の作品
小川洋子の作品






タイトルのイメージから、「救いのないお話だったらどうしよう。。。」と
読むのを躊躇っていました。
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タイトルのイメージから、「救いのないお話だったらどうしよう。。。」と
読むのを躊躇っていました。
「未来がどうあろうと決して損なわれない過去」。。。とても素敵です♪
takanatsuさんのこの感動に満ちたレビューのおかげで
もう迷いなく、読むことができます♪ありがとうございます(*^_^*)
でも、心配する必要はなかったなと読み終わった今は思います。
まろんさんのレビュ、楽しみに...
でも、心配する必要はなかったなと読み終わった今は思います。
まろんさんのレビュ、楽しみにしてます!