オジいサン

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 158
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  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120042096

感想・レビュー・書評

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  • あまりに淡々としていて物足りない…と思いながらも、あの独特な理屈っぽい京極節にクスクス笑える。最後はきっと物凄い何かが、そう期待しながら読了。・・・エッ?何だろうこの穏やかな心温まる感じは。何の事件も起こらない、奇想天外なトリックやアクロバティックな論理展開もない、毎日慎ましく暮らす独居老人の思考をただ繰り返すばかり。かといって、何か説教性があるのではない、不思議な小説という感触だけが手の中に残った。

  • ある一人暮らしのおじいさんの7日間.ほどけていく記憶と結び直していく記憶のせめぎあいのようなものがブツブツと繰り返される7日間.商店街の電気屋の息子もとい今は店主、優しくてほっこりしました

  • 独居老人・徳一さんの1週間のぼやき。

    益子徳一、七十二歳、独身。

    公園で少女に「オジいサン」と呼ばれたことを思い出すだけでも相当の時間を要したことから、地デジ化、ゴミ出し、電気屋との付き合いなど、私たちが何の不思議もなく過ごしている日常の些細なことに、真面目で、可笑しく、切なくぼやく。

    そのぼやきが読み進めていく毎にじわじわと沁み、クスッと笑ってしまう。

    でも物事の本質を説いていたり、難しい漢字の読みが分かったり、勉強にもなります。

    タイトルのニュアンスが何となく分かったような気がします。

  • すっごい一人称。
    思考の流れにシンパシーを感じる。
    ラストのエピソードが秀逸。

  • 前々から気になっていた作家でしたので初挑戦しました。

    しかし京極夏彦と言えば妖怪小説。

    この作品はと言えば老人の普通の一週間を綴った平凡な内容。

    京極夏彦の最初の一冊としてこの本から読む人はかなり稀かもしれない。

    しかし・・・。

    この本、すごい面白かった。

    老人の独り言のような会話がとても軽妙で読みながら何度もくすくすと笑ってしまった。

    これはかなりの高評価の小説です。

    京極夏彦の作品はこれから色々と挑戦してみようと思う。

  • おじいさんと呼ばれる年齢はいくつからなのでしょう。そんな問いかけがあるようなないような。
    主人公である徳一の日常生活が淡々と描かれていて、面白い。
    徳一は、偏屈じいさん?として、案外、傍にいそうな。
    リアルなオジいサンです。
    京極夏彦のちりばめらている細かな表現がとても好きです。

  • 定年後に慎ましく暮らす独居老人の日常を淡々と描いた作品。
    何ごとにも真面目で正しくあろうとするが、時に億劫になったり思考がループして物事が進まなかったり。いつもと違う料理をつくるだけで一大事件になってしまう老人の独白は、最初はかなりうざいと思ったが読み進むうちになぜかじわじわ来る。
    トリッキーで絢爛なストーリーの作品群とはまったくちがって面白いかと言われると首を傾げたくなる話だが、奇妙な味わいでこれはこれでありかも。

  • 本当にオジいサンの頭の中をのぞいたような小説だった。ストーリーも何もないが、不思議とほっこりする内容だった。外歩いている時見かけたのんびり腰かけているオジいサンも、頭の中ではこんなにも色々と考えているのかと想像してしまい少しおかしかった。

  • 独居老人益子徳一の日常。
    昨日は何をしたか、あれをやったのはいつだったか。そういう些細なことから、近隣住民とのやりとりと地域の移り変わり、地デジや携帯電話についてまで。生真面目な「オジいサン」益子徳一の口から地デジや塩辛いウィンナー、回覧板のおばさんなどが語られると、どこかユーモラスで、そして切ない。

    京極夏彦って老人が好きだよね、というのはおいておいて。老人って、そうだよ。自分が思うんじゃなくてまず周囲に認識されてしまうんだよなあ。それは切ないぞ。地デジの話、携帯電話の話も、独居老人ゆえの寂しさがしみた。枯れた老人ゆえの、面白さと寂しさが詰まってたなあ。

  • もしこの作品を映像化するなら・・・
    「ねこばん(主演:伊武雅人)」みたいな感じになるのかもしれない。
    益子徳一(72)、独身。いわゆる、独居老人である。
    そんな老人の日常がかかれている。
    徳一は、ちょっと理屈やサンだけど、筋の通った良識のある老人。
    時代の変化と流れに取り残され、孤独を感じつつ、受け入れ日々を送る。
    世間の人は、自分のことを「役立たずの老人」だと思ってるのだろう
    というベースで物事を思考する。
    実に筋が通ってるのだが、ちょっと古い認識なので、
    周りとのペースがあわない。
    古き良き時代を懐かしみつつ、今を生きる老人。
    少しほろ苦く、考えさせられた。
    電気屋の二代目との関係が素敵だった。

    なかなか面白い作りの装丁で、
    偶数ページには、ページ数と本のタイトル、
    奇数ページには時計のイラストと章のタイトルが載っている。
    ここで注目したいのが、奇数ページの時計のイラスト。
    よく見ると時間が、少しずつ経過している。
    流石は、京極の本である。
    おそらく本の装丁に名前を連ねているのだろうと思っていたら、
    やはりである。
    装画:ヒロミチイト
    装丁:山影麻奈
    組版:京極夏彦
    DTP:嵐山英治

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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