神変―役小角絵巻

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  • 中央公論新社
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レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (425ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120042584

感想・レビュー・書評

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  • 児童書???

  • 今年は山本謙一を読み進めてみよう。この本は飛鳥時代の律令国家が急速に進む頃の話。これまで読んだ歴史小説で最も古い時代背景で持統天皇や藤原不比等の時代。山の民、小角(おずぬ)というおそらく架空の人物が主人公で絶えず修行して神通力を身につけて天皇に対立するおよよよな展開。。。確かに天皇家が神に変わって日本を治める根拠は薄弱だが。。 飛鳥時代の律令国家とは、その周辺のローカルなものと思っていたが、この頃すでにほぼ全国を手中に治めるくらい急成長していたとは知らなかった。ということを知っただけでも読んで良かったと思うことにしよう。
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  • 修験道の始まりを作ったと言われる役小角の話。

    小角の考えは、人は天地に満つる神仏にこそ従い、ひれ伏せば良いのであり、人が人にひれ伏す必要はないと考えていた。小角の時代は、蘇我氏が滅ぼされ、天武天皇の后の持統天皇と藤原不比等が新しい日本の国を興し、中央集権体制を磐石なものにしようと各地から租庸調をとり、地方の豪族達をひれ伏させていた時代だった。

    そんな飛鳥朝廷が藤原に京を移すこととなり、民百姓は過酷な労働を強いられていた。小角はそれに反抗したのだ。しかし、小角が思った以上に中央集権体制は強くなりつつあり、とても一人の力ではどうにもならないものに強大化していた。小角は山に籠り、蔵王権現という神を自分に乗り移らせ、持統率いる朝廷と戦ったのだ。

    小角は葛城山の麓に生まれた。役という姓の者達が住む村だ。役というのは、飛鳥の連中が小角たちの仲間に付けた姓だった。そもそも役という姓は飛鳥の連中に仕えるために存在していた。飛鳥でのうのうと暮らす連中のために、役の者達が田を耕し、畑に作物を作り、薪を切り、家を建てた。自分達の田地は持たず、飛鳥のために使役されるだけが仕事であった。役とは何たる残酷な姓であろうか、と、小角は子供の頃から思っていた。同じ人なのに何が違うのか、さっぱりわからなかった。百官たちは自分達が何をしているわけでもないのに威張りちらし、役の者たちをこき使う。そこが小角の強い不満であり、朝廷に向ける刃を研いできた所以であった。

    小角が蔵王権現を取り入れようというのは訳があった。蔵王権現は、釈迦如来、千手観音、弥勒菩薩の三尊の合体したインドに起源を持たない日本独自のものとされ、釈迦如来は過去の世、千手観音は現在の世、弥勒菩薩は未来の世が権化されて、過去・現在・未来の三世にわたる衆生の救済を誓願して出現されたある。修験者小角の考え出した仏であるともいえる。いごこちの良い極楽は海のかなたにあるのではなく、今自分のいるところを極楽にしなければならない。それ以外に極楽はないという考えに至り、仏を恃むのではなく、全て自分の力で成し遂げなければならないと考え、蔵王権現を恃まず、自分の中に取り入れたという。

    話の最後の方は、ファンタジーのようになるが、まあ、役小角という実在したかどうか疑わしい者の話であるので、仕方ないだろう。

  • 持統天皇と円の小角の戦いがザックリと書いてある。蔵王権現の登場が少しユニークだった。

  • この著者の小説好きなんだが、これは凡作。
    支配されぬ自由を求めて、飛鳥時代の持統政権に逆らいゲリラ活動をくりひろげる役小角が主人公。ファンタジーっぽくて、あまり時代性が感じられない。小角と鵜野の闘争が、なんか近所の仲の悪い爺さんと婆さんの喧嘩にしか思えなかった。蔵王権現が降臨して無敵になって無双ぶりって、ライトノベル的な展開だった。

    この人は戦国時代の職人を描いた方がやっぱり上手いのではないだろうか。

  • 持統天皇の御代の話。
    飛鳥の宮の政に従わず、豊かな田野を逐われ、葛城の山に暮らした民たちと、修行により、御仏の力を得た小角の物語。

    日本という国の祖を築いたのは綿々と続く皇(すめらぎ)の一族の力。
    ただ、その国造りの大元の時は、確かに飛鳥の朝廷の者たちは盗人と言えるかもしれない。
    自らをして神と言うのも、とんだ大法螺とも言えようが。

    ただ、どちらの方にもつけなかった。
    どちらが悪くも正しくもない。

  • 歴史上の人物で興味があるのは武内宿禰と役小角です。その片方である、修験道の開祖とも言われるこの役小角をどのように描くのか、興味津々でした。はたして、一定の満足感とわずかな失望感が入り混じった読後感でした。
    満足できたのは、天地・宇宙と人との関わり、言の葉の力、祈りからくる仏や鬼の実在、などが描かれていた部分にすごいパワーを感じることができたこと。
    失望したのは、それほどの霊験あらたかな小角でさえも、結局は何事もなし得なかったということ。また、届くべき高みに届かないままに物語が終わってしまったこと。
    中央政府の持統天皇(鸕野)と庶民代表の小角がそれぞれの信念でそれぞれの正義を戦わせる展開は面白かった。どちらにも一理あり、どちらにも弱みがある。互いに「よかれ」と思ってやっていることが、互いの障壁になっているという構図は、現代でも様々な場面において通じる真理ではある。小説としては、この構図にもっと寄り添って最後まで突き進んだほうが成功したのではないかな、とか余計なことを思ってみたりもして。

  • 最後が尻すぼみで途中までの面白さが半減してしまった感が…。
    実際に大和朝廷が力を持ち国を支配したと言う史実があるから仕方が無いのかも知れませんが天地の理を理解し正しくあろうとする小角が身勝手な皇族や役人に対して優位に立てないのは歯痒いです。

    富を蓄積しようとする者と分け与えようとする者、規律で縛る者と自由でいたい者、相反する二者が歩み寄って落としどころを見付けるのは不可能なのかも知れない、と思ってしまった。

  • 役小角と言えば、思い出すのは藤川桂介の『宇宙皇子』。
    あの作品の中では、ほとんど全能な感じだったので、どうしても比較してしまいます。
    あ、黒岩重吾の遺作となった『役小角仙道剣』もありましたね。
    あちらよりは読みやすかったかな?

    本作の役小角も後半はかなり人間離れしていきますが、前半は朝廷の力に対して仲間を救えずに苦悩するような、“人間・小角”として描かれています。

    どんなに小角が頑張っても、結局は朝廷が日本中を支配していく史実があるだけに、無力感がぬぐえないのは残念なところです。

  • 役小角を修験者としてではなく、1人の人間として書かれているところは前半は面白かったのに、中途半端な感じで終わってしまった気がする

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