日本書紀 成立の真実 - 書き換えの主導者は誰か

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120042829

作品紹介・あらすじ

古代史の重い扉がいま、開かれる。衝撃の書『日本書紀の謎を解く』から12年。新たに得られた知見をこの一冊に凝縮。

感想・レビュー・書評

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  • 日本書紀の謎を解く―述作者は誰か (中公新書)に続き、更にその後の研究と他論への言及、成立過程を調査したもの。複数の論文の集合のためやや重複があるが前著から10年を経て進化しているので、読むのならこちら。
    漢文の知識、万葉仮名の音韻の知識に基づく緻密な調査と誠実な研究姿勢が伺える。
    漢文の文字の位置や各巻の文字数など冗長なのを読み飛ばしながらですが、読み価値はある。

  • 日本書紀が音韻学の見地からα群とβ群に大別できる(&実際に書いた書き手を推測する)という内容。
    正直、音韻学の内容については、素人には全くついていけないが、結論はとても面白く感じた。

  • 日本書紀の歌謡はいわゆる万葉仮名で書かれている。森さんがそれに2種類あると言ったのは、ぼくが愛知大学に就職した1977年のことだった。(『文学』)そのうちα群と呼ばれる巻々は、渡来中国人によるもので、一貫した漢字の使い分けが行われているが、β群と呼ばれる巻々は、日本人の筆になるもので、そこには統一した用字法がなかった。α群の万葉仮名の用字は、当時の中国語の音韻変化を反映するものであるし、同時に古代日本語音を再構成する手立てとなるものであった。さらに高山倫明さんによって、万葉仮名の使用には、当時のアクセントも反映していることがわかってきた。森さんはこの論文を出発点とし、1991年に『古代の音韻と日本書紀の成立』(大修館書店)を書き、音韻に関してはほぼ完成させ、金田一京助賞を受けた。森さんはその後『日本書紀』の文章論にとりくみ、それは日本書紀の作者は誰かという問題にすすんでいったのである。本書はその後の研究の深化の集成である。『書記』の研究はβ群、α群の発見によって、単に言語の問題だけでなく、書記編纂にかかわる人々という歴史学の分野にも波及していった。当然、それに対する共感もあれば反感もある。森さんの交感神経はフルに発動し、相手をばったばったとなぎ倒していく。その得意げな様が眼前に浮かんでくるようである。もっとも、音韻論は科学的な分析が可能であるし、例外と思われたものを突き詰めることで新たな真実が見つかることもあるが、いわゆる文章の和臭を判断するのは難しい。たとえば、本書でVOの間に於が挟む例を筆僻とみなしているが、森さんもあげるように古代中国語には同じ動詞目的語関係でもVOとV於O両方の形をとるものがあり、太田辰夫さんや何楽士さんにたしか専論がある。筆僻というより、こうした古代中国語の模倣と見なしてはいけないのか。中国語は存在を表す動詞に有と在があり、日本人学習者も意外に間違うのだが、漢文を自由にあやつり史書を書こうとする古代日本人が、こんな基本的な動詞を間違うというのもちょっと信じられない気もする。和臭と言われるものにはそんなものがいくつかある。ともかく森さんは、『書記』の非中国的要素を発見するために50歳を越してから韓国へ語学留学をした。ぼくは、その当時、妻と森さんを訪れている。森さんはその後韓国語で研究発表をしたり、韓国人研究者と議論を交わすまでに韓国語力を高めた。本当に鬼神も驚いたことであろう。

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