恋愛書簡術 - 古今東西の文豪に学ぶテクニック講座

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  • 中央公論新社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120043147

作品紹介・あらすじ

略奪愛、ダブル不倫、遠距離恋愛、そして時々、倒錯へ…。恋の渦中で身を焦がし、巧みに駆使したレトリックを分析、ラヴレターの魅力と世界を揺るがせた名作誕生の背景を探る。図版多数収録。

感想・レビュー・書評

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  • ヨーロッパの19-20世紀あたりの話が多い中、我らが谷崎潤一郎のエピソードが載っている。けど、屈折率高すぎ!

  • 古今東西の文豪のラブレターはやはり凄かった。そのラブレターに著者の解説やツッコミなどが入るのでより興味深い。まさか当事者たちは後世の人に読まれるとは夢にも思ってなかったでしょうけど。でも人が人を恋うる時に発する情熱はやはり美しい。

  • いつものごとく、カバーもせずに、満員電車で読んでいたが、改めてタイトルを見ると、「古今東西の文豪に学ぶテクニック講座」とのサブタイトルが急に気恥ずかしくなり、途中からカバーをかけて読んだ1冊。
    恋愛書簡は、一緒に暮らす夫婦や恋人同士ではなされないという、当たり前のことに改めて気づかされ、当人同士の手紙を解説付きで読むという、屈折した面白さが詰まった、素敵な1冊であった。
    西洋、東洋取り混ぜた、12の恋愛書簡の中で、アベラールとエロイーズの巻が一番気に入ったし、エロイーズの秘めたる激情を吐露する手紙は是非とも読んでみたい気にさせられた。
    とにかくおすすめの1冊だ。

  • 12人の文豪が書いた〈ラブレター〉を読み解き、解説されたものをまとめたもの。
    有名な詩人・作家・音楽家・芸術家・神学者、等々。
    私が知っていたのは、内田百閒・谷崎潤一郎・ドビュッシー・ユゴーくらいだったけど。
    たまたま図書館にあったので、手に取ってみた。
    ちょーおもしろい!
    破廉恥で、情熱的で、ひとりよがりで、自分勝手で、妄想しまくり。
    人のラブレターなんて読んだことなかったし、自分だって書いたことあるかどうか。
    こんなこと書くのか?と思うような破廉恥極まりない表現とか、
    勝手に妄想の世界に入ってしまうものだったり、
    事情があってなかなか会えない愛する人に、自分の気持ちを
    良く言えば率直に、悪く言えば、うーん、押しつけがましく、書いてある。
    いや、本来、ラブレターというものは、押しつけがましいものなのかな。
    それにしてもこれは芸術的に才能がある人だから、表現が奔放で豊かなんだろう。
    私がこれを貰ったら、どう思うのか、考えてみた。
    うれしい?ひいてしまう?嫌気がさす?
    愛していたら、きっと素直にうれしいんだろうなあ。
    それにしても、書いた本人たちは、将来こんな風に世間に出るなんて思いもよらなかったはず。
    ちょっと可哀想。

  • 芸術家の情熱と奔放さには驚かされる。
    ところどころにある作者の突っ込みも切れがあって面白い。

  • 綺麗な表現、文章を学びたくて読んだ本ですが、想像以上に破廉恥な内容*
    だが、芸術家ならではの感性は、恋愛にもそのまま生きていて、溢れ出す言葉は破廉恥なんだけど、なぜか色気があり、美しかった。

    半分は読まれることを意識して書くが、どうしても感情の高まりを抑えきれなくなり、結果、支離滅裂になることが多いのが恋文。とのこと。
    確かに、他にはあまり存在しない特殊なものなのかも。

    しかし、他人に1番読まれたくないのが、恋人への手紙であることは間違いない。
    この本に出てくる作家、芸術家たちもまさか後世に、こんな私的な手紙が読まれるなんて思いもしなかっただろう。 少し可哀想になった。

  • 書評に釣られて読んでみると、噂通りの赤裸々さと破廉恥さ(笑)。書簡を残していたのは殆ど女性側だったと言うのも意外と言うか、怖いと言うか…(苦笑)

    谷崎潤一郎、ユゴー、ミュッセ、アベラールのエピソードが特に印象深い。

  • (2012.02.26読了)(2012.02.16借入)
    この本について著者が「あとがき」であれこれ述べていますので、拝借しておきます。
    「本書を『恋愛書簡術』と題したのは、ラヴレターとは、一般に人が信じるように純粋な愛の告白などではなく、相手に向かって自分の愛が本物だと説得する技術的な作文だからです。それはあくまでも誘いであり、駆け引きであり、演技であり、戦略であり、獲物を捕まえる蜘蛛の巣のような罠でさえあるのです。
    もうひとつ、恋愛書簡の面白さは、本書の中でも何度も書いたことですが、一緒に仲よく暮らす夫婦や恋人の間では成り立たないという逆説です。よんどころない事情や障害があって、二人の間に距離があるときにしか、手紙は書かれないからです。」(251頁)
    この本で取り扱われている人物は、アポリネール、エリュアール、内田百閒、バルザック、ユゴー、谷崎潤一郎、フロベール、コクトー、ミュッセとサンド、スタンダール、ドビュッシー、アラベールとエロイーズです。二人の日本人以外はフランス人です。
    「フランスの作家の恋愛書簡はどこが面白いのか? ひと言でいえば、「あられもない」ということではないでしょうか。フランスの作家たちはあられもなく女を誘い、女に愛をうち明け、女に別れを納得させ、自分を正当化しようとします。それは、最初はそうした目的をもった「書簡術」として始まるのですが、あまりにも熱心に言葉を操るあまり、思わず自身の人間性を剥きだしにしていくのです。」(250頁)

    目次は以下の通りです。
    アポリネールと伯爵夫人ルー  ―官能と陶酔のファンタスム
    エリュアールと芸術の女神ガラ  ―遠く離れた恋人たちをゆさぶるエロス
    内田百閒と憧れの君 清子  ―読まれることを目的とした日記の真相
    バルザックと異国の人妻ハンスカ夫人  ―ファンレターから始まった18年間の愛
    ユゴーと見習い女優ジュリエット  ―最後まで添いとげた生涯の陰の女
    谷崎潤一郎と麗しの千萬子  ―サブリナパンツに魅せられた瘋癲老人の手練手管
    フロベールと女性詩人ルイーズ  ―年下の男のリリカルな高揚とシニカルな失速
    コクトーと美しき野獣マレー  ―禁断の同性愛から至高の友愛へ
    ミュッセと男装の麗人サンド  ―『世俗時の告白』に隠された真実
    スタンダールと運命の女メチルド  ―『恋愛論』の真の作者との悪戦苦闘
    ドビュッシーと「かわいい『私の女』」エンマ  ―家庭内外交の苦手な男の絶妙の書簡術
    アラベールとエロイーズ  ―去勢されて目覚めた修道士と愛欲に殉じた修道女

    刺激的な本でした。アポリネール、コクトー、アラベールとエロイーズあたりには、まいりました。フランスの芸術家たちの知らない側面をかいま見て、もっとフランス文学を読んでみようか、と思っています。サンドについては、ショパンとのことについては読んでいたのですが、他にもお相手がいたとは知りませんでした。

    ●ローランサン(10頁)
    アポリネールは無名の女子画学生だったマリー・ローランサンと出会い、彼女と熱烈な恋に落ちた。一流の画家になったマリーはアポリネールを完全に捨てて、他のドイツ人画家と結婚してしまった
    ●シュルレアリスム運動(34頁)
    シュルレアリスム運動が起こり、エリュアールはアンドレ・ブルトンらとともにこの運動に参加し、新進詩人として活躍を始めることになる。画家マックス・エルンストは親友で、エリュアールの詩集に挿画を描いたりして、一時期エリュアールとガラの家に同居もしていた。エルンストがガラと性的な関係を結んでいることは、周囲の友人たちの目にも明らかがったが、エリュアールはふたりの関係を黙認した。というより、自分の妻をエルンストと共有することを、エルンストとの友情の証と見なしているふしさえある。こうしたエリュアールの奇妙な心理は、後にガラがサルバドール・ダリと関係を結んだときにも表れるものだ。
    ●ドビュッシーとストラヴィンスキー(219頁)
    ロシア・バレエ団との関係がドビュッシーにあたえた貴重な財産は、ストラヴィンスキーとの友情であろう。ドビュッシーはストラヴィンスキーの『ペトルーシュカ』を聴いて手放しで絶賛し、ドビュッシーより20歳年下のストラヴィンスキーは、自分と自分たちの世代の音楽家はドビュッシーからもっとも大きな恩恵を受けていると認めていた。
    ●エロイーズ「第四の手紙」(240頁)
    「わたしたちが一緒に味わったあの愛の悦楽は、わたしにとってあまりにも甘美なものでしたから、わたしがその思い出を不愉快に思うことなどありませんし、それを記憶から消し去ることもできないのです。わたしがどこを向いてもその歓喜がたち現われ、わたしの目の前に迫って、欲望をかき立てるのです。眠っているときも、その幻影がこの身を離れません。」(これは、ほんとうにノン・フィクションなのでしょうか?)

    ☆関連図書(既読)
    「ノラや」内田百閒著、中公文庫、1980.03.10
    「ああ無情」ユーゴー著・塚原亮一訳、講談社、1986.10.17
    「「レ・ミゼラブル」百六景」鹿島茂著、文春文庫、1994.07.10
    「鍵・瘋癲老人日記」谷崎潤一郎著、新潮文庫、1968.10.25
    「ボヴァリー夫人」フローベル著・白井浩司訳、旺文社文庫、1967..
    「恐るべき子どもたち」ジャン・コクトー原作・萩尾望都作、集英社、1980.06.10
    「愛の妖精」ジョルジュ・サンド著・宮崎嶺雄訳、岩波文庫、1936.09.05
    「新版ショパンとサンド」小沼ますみ著、音楽之友社、2010.05.10
    「ショパン奇蹟の一瞬」高樹のぶ子著、PHP研究所、2010.05.10
    「赤と黒(上)」スタンダール著・小林正訳、新潮文庫、1957.02.25
    「赤と黒(下)」スタンダール著・小林正訳、新潮文庫、1958.05.20
    (2012年2月27日・記)

  • 図書館の新刊コーナーでこっぱずかしいタイトルにビクビクしながら立ち読みしたら面白くて・・・借りちゃった。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ
東京大学大学院博士課程満期退学
パリ大学文学博士
学習院大学文学部助教授
主な著書
『最後のロマン主義者−バルベー・ドールヴィイの小説宇宙』(中央公論新社)
『映画作家論−リヴェットからホークスまで』(平凡社)
『小説家になる!』(メタローグ)

「1996年 『ギル・エヴァンス音楽的生涯』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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