政治を生きる――歴史と現代の透視図 (中公叢書)

著者 :
制作 : 牧原 出 
  • 中央公論新社
3.14
  • (0)
  • (1)
  • (6)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 34
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120043574

作品紹介・あらすじ

政治を動かすのは、人間か、あるいは制度か。本書では、近代・現代の日本の政治を題材にした七本の論文により、政治家や官僚や知識人や運動家が、それぞれに政治を生きた、その姿を説きあかした。政党政治、リーダーシップ、メディア、地方政治、司法活動、社会運動、防衛政策と、現在の政治を論じるさいの重要論点がひと通りそろっている。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 司法制度に関する論文「『部分社会』と『象牙の塔』――三淵忠彦と田中耕太郎」だけ読んだのだけど、非常に面白かった。感銘をうけたといっても言い過ぎでない。戦後すぐ最高裁長官になった、三淵氏と田中氏。

    自由を支える「部分社会」の中では「不自由」が実感され、そのためかえって「塔の窓」から外を眺め、「自由」な思考を保とうとした三淵と田中――なかなか哲学的な言い回しではあるけれども、裁判官としての否定できない強烈な「不自由」さを引き受けた上で、自己限定せず、文人、学者、宗教家さらには政治家等いろんな人たちと親交を深め、それを公論を介して外へ公表しつづけ、裁判所外に踏み出すことにより、裁判官の自由を支えたのだという。

    内側に立てこもることで確保可能な自由もあるかもしれないけれど、不自由な中での最大限の自由を拡げていくための不断の活動、というように捉えたのだけどこの理解でいいのだろうか。

    一方で、官邸からの直接指示を避けるために、その意向に反しない裁判官人事を行い、違憲判断を抑制することで外部の作用を遮断し、これによって、中に構築されたのは、内部での上意下達の権威的関係との指摘も同著者が別論文で…うーん。不自由さはやむないからというべきか。

    専門能力を磨くために専門にとらわれない教養を培い、自治を守るために部外へ拡張する。

    こういう考え方を自分も忘れずにやっていきたいと思いました。

    戦前から戦後にかけての裁判所の立ち位置、思想統制との関係から、戦後、葛藤のなかで他の政治機関との立ち位置を裁判所が確立した過程の話などなど。今の「裁判所時報」「法曹」「法曹時報」も三淵氏の時に始まったらしい。

    夫が、読んだ本の参考文献としてひかれているのを教えてくれて、読んだものでした。

  • オーラルヒストリー=政治家の自己反省の機会をつくる重要な手段(pp.34)
    →思えば、オーラル・ヒストリーの試みは、日記や手紙がほとんど残らない現代政治の解明のための必要性に迫られた側面がある。

    現代の政治学では、実証主義的志向を持つアメリカ政治学の影響力が強くなっている。すなわち、普遍主義的な理論を一定データに基づき検証するというタイプの研究が有力である。

    イギリス、フランス→自由主義が覇権を握った。
    スウェーデン、ノルウェー→労働者階級と自営農民の連合が成立し、社民主義をもたらす。
    ドイツ、イタリア→中産階級と自営農民の連合:ファシズム

    ・経路依存、配列:歴史すなわち時間的次元の重要性。
    →自称や過程の順序が帰結に決定的な影響を与える。

  • 政治学をかじっている者としては、面白かった。特に内山先生の小泉政権の分析の序論にあたるところには強い共感を覚えた。

  •  政治学とか行政学というのは、生ものを扱っているから、あまり高尚な理論をいわれてもおもしろくない。

     歴史が、国際比較か、現状分析か、どこかに焦点を絞って欲しい。

     例えば、高坂さんと坂本さんの論争など、自分は当然高坂派だが、あんまり分析していても興味がもてない。

     なまもの情報としておもしろかったこと。

    (1)2006年に小沢さんが代表になって、民主党はこれまでの構造改革路線から、格差是正、わるくいえば「ばらまき路線」にかわった。(p113)

     一生懸命、小泉改革のころまでは構造改革を民主党は言っていたのですよね。何か思想的な心棒なんでしょうか。

    (2)鳩山首相の「おもい」重視は、普天間飛行場問題で、重大な結末を迎えた。(p23)

     なんか、施政方針演説も人を大事にするみたいなフレーズを連呼していましたよね。友愛で政治問題は解決できないという結末がはっきりしたということでしょう。

    (3)(東京都性論で)利益集団は、政策的に首都圏開発・アーバンレジーム、都市再生を求めるよりは、単都市「無」計画であればよい。(p159)

     不愉快だな。別に不動産会社を設けさせるために都市計画行政をやっているのではない。次世代に快適な都市を残すために、都市計画をやっている。これが既得権の利益のためにならないために、きちんと常に筋を考えていたい。

全4件中 1 - 4件を表示

飯尾潤の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×