刑務所で死ぬということ

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 79
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120043864

感想・レビュー・書評

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  • 内容だけを見れば素晴らしい言葉がたくさん書かれており、なかなかに考えささられる本。
    しかし、素晴らしい言葉を、信念を、持っていたとしても著者は犯罪者。
    その事実が頭をよぎり、果たして読む価値があるのかどうかといったところ。
    そんなことを考えずに、獄中生活という未知の世界を垣間見ることを目的に読むと「こんな世界もあるのだな」と思える本。

  • 実際に重い罪を犯した人が発言する
    今の刑務所は無意味という内容が
    真剣に考えるべきものだと感じる。
    所詮人権派とか権利を言う人たちは当事者じゃないんだから。

  • H28/1/9

  • 長く『お勤め』に入っている彼らはこう言うそうです。「10年、15年なんてあっという間だよ」と。本書は二人の人間を殺め『自分は一生社会には出ない』と固く誓う男の書いた手記です。読み応えがあります。

    本書は2人の生命を奪い、裁判を経て無期懲役となって今現在もまだ刑務所に服役し、自らの犯した過ちの償いから、一生社会には出ないと決めた懲役囚の告白する『刑務所における囚人の実態とその末路』という告白集です。

    かつて僕は東京にいたころ、あまりにも当時仕事が忙しかったもので、ある人に冗談交じりで
    『刑務所は俗に『社会の大学』というそうですが、こう忙しいんじゃあ本を読む暇がありません。ですので一回人生経験も含めて塀の中でじっくり本でも読んで来ようかと思うのですが』
    といったところその人は
    「そうか。有坂君は、初犯だろう…(以下あまりにも過激なので省略)」
    というここにはとても書けないようなアドバイスを頂戴したことを書きながら思い出しました。

    それはさておき、一読して筆者の持つ教養の高さというものを使用している語彙や引用している文献や会話の中から垣間見えることができ、筆者の悔恨の日々や、獄の中でも周りの環境に流されることなく、自分を克己してきたのだな、ということが理解でき、『塀の中に落ちる』というあまり体験したくない経験を無為に過ごすのか?はたまたそこで何かを得るのか?ということについて読みながら考えてしまいました。

    ここに書かれているのは囚人ならびに刑務所のおかれている環境。具体的には筆者同様の、無期囚の仮釈放までの平均服役年数は35年程との事で、平成22年末で無期囚は1800人ほとが収容されており、その内7人ほどが仮釈放されたとのことであるとのことや、娑婆と塀の中を行き来するいわゆる『懲役太郎』と呼ばれる人間たちは常日頃から何を考えて生活をしているのか?たとえば、獄中では毎日学ぶこともせず、バラエティー中心のくだらないテレビ番組を見て無為に過ごしている。そんな彼らを筆者は半ばあきれ果てたようなまなざしで突き放して観察しているのがこれまた印象的でございました。

    彼らに言わせると3食きっちり給与され、テレビも毎日見ることができ、施設によって多少は異なるらしいのですが、毎日映画のビデオも見ることができるとのことだそうで、衣食住の心配がなく医療費はタダ、薬も申請すればいくらでも貰え、医療費のかかる社会では決して病院に行かないような連中がすぐに診察をしてもらえる。娑婆では欲望の赴くままに生きる彼らがこういうところで暮らすのを一種の『骨休め』もしくは『バカンス』といっていたのは本当にびっくりしました。ただ、筆者は獄中でそういう風に過ごした人間には『それなりの末路が待っている』とにべにもない言い方をしておりますが…。


    筆者に言わせると現在の刑務所は、少しもつらい所ではなく、一緒にいる受刑者も反省はうわべだけとのことで、娑婆に出たら今度はいかに捕まらないか、ということのみに終始するのだそうです。人を殺めた、もしくはそれに準ずるような罪を犯した代償のために服役する場所が筆者の言うところの『悪党ランド』というようなテーマパーク化しており、いたせりつくせりの対応をしている。これでは刑務所が居心地が良いと考える受刑者が大半で、更生など夢物語と筆者が書いているところが印象に残っております。われわれ一般人は『お勤め』することを『リスク』と捉えますが、世の中には必ずしもそう考える人ばかりではないのだと。改めてこの社会が『複雑怪奇』であるとことを教えてくれたような気がする一冊でございました。

  • 刑務所の状況が分かった。興味のある内容だった。

  • 受刑者側の意見を読んだのは初めてでした。刑務所の実情について有識者が意見を述べる、といった新聞記事を読んだことがありますが、人権をもっと尊重しようという方向だったかと思います。でも、それは少しずれているのかも、と強く感じました。筆者の言うように、居心地の良さもある程度必要だけど、もっと多くの人が更生を決意したり、後悔したりと精神的成長がある環境づくりの方が大切だと思いました。これだけの時間拘束された=代償は払った、罪は償った、という発想の下、どこか幼稚で自分中心の考えは変わらないままの人の方が多く、自分のしたことが招いた思ってもいなかった代償を知り、衝撃を受け、自分の浅はかさを痛感して更生を決意する人はごく少数とのこと。再犯の理由として、社会の受け皿が…というありきたりな表現をよく耳にするけど、もっと具体的な理由があるのだと感じました。

  • 【新刊情報】刑務所で死ぬということ 326.5/ミ http://tinyurl.com/7jbe3qe 人の生命を亡きものにした私には、ふさわしい死に方がある…。無期懲役囚である著者が、獄での生活とは何なのか、獄で老いるとはどういうことなのかなど、受刑者の心理を綴る #安城

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著者プロフィール

美達大和
1959年生まれ。無期懲役囚。現在、刑期10年以上かつ犯罪傾向の進んだ者のみが収容される「LB級刑務所」で仮釈放を放棄して服役中。罪状は2件の殺人。ノンフィクションの著書に『刑務所で死ぬということ』(小社刊)のほか、『人を殺すとはどういうことか』(新潮文庫)、『死刑絶対肯定論』(新潮新書)、『ドキュメント長期刑務所』(河出書房新社)、『私はなぜ刑務所を出ないのか』(扶桑社)、小説に『夢の国』(朝日新聞出版)、『塀の中の運動会』(バジリコ)がある。また「無期懲役囚、美達大和のブックレビュー」をブログにて連載中。http://blog.livedoor.jp/mitatsuyamato/

「2022年 『獄中の思索者 殺人犯が罪に向き合うとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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