新・帝国主義の時代 - 左巻 情勢分析篇

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  • Amazon.co.jp ・本 (433ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120044854

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  • 新・帝国主義の時代 - 左巻 情勢分析篇
    (和書)2013年06月02日 22:17
    佐藤 優 中央公論新社 2013年3月22日


    この本を読んでいて先ず思うことは平等と不平等についてである。新・帝国主義とは簡単に言うと他の国を犠牲にして民族・ナショナリズムという平等を得るということである。だからそれは今までの国家でも同じであり、国家とは帝国主義でしかありえないという話である。そして日本も品格ある新・帝国主義であらねばならないという話である。

    ここまでの僕の話では、佐藤優さんは不平等を前提にした平等ということを主張しているように見える。しかし彼は不平等に対する不満というものが彼の置かれた前提に生じているようにみえる。

    全ての人間が平等であるということはユートピアでしかなくそういったものを冷笑し不平等を推し進めようとする。新自由主義とかグローバル資本主義はそういったイデオロギーである。佐藤さんはそういった不平等に対する不満として国家がどうありえるかを自らの経験や研究から示そうとしている。僕はどちらかと言えば国家なんてなくてもいいというアナーキストである。だから僕にはそういった発想はあまりない。しかし参考にはなる。

    この本を読んでいてルソーのことを思い出した。

    すべての人が平等であるという世界はユートピアではないと考える。それは絶えず目標として存在する。それは現にある前提から不平等への不満が生じることであり、それを表明することとしてありえる。

    資本主義が死滅するという予想を柄谷さんはしているが、それはこういった不平等に対する不満からなる哲学からありえる。

    橋下などは従軍慰安婦について日本が不当に貶められていて不平等であるという不満を表明している。しかしそういったものが不平等に対する不満からなる政治思想というよりその貧困からなされているように思う。戦死したものがそんなに偉いのか!戦死以外で死んでいった先祖の霊を不平等に扱うことに不満を覚える。彼は戦場での極限状態置かれた兵士の慰安を語っているが、そういったものは人間の不平等を前提にしてなされる。そういった不平等に対する不満こそ表明すべきことだと思った。

著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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