読書について

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120045400

作品紹介・あらすじ

「批評の神様」に学ぶ実践的読書法。

感想・レビュー・書評

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  • ■ひとことで言うと?
    読書=文章の奥にある作家の思想を能動的に見出す営み

    ■キーポイント
    ・文は人なり→文の奥に人がいる(片言隻句から作家を感じる)
    ・読書の技術→文章を再び元の人間に返すこと、自分を失わない(自身の経験に照らして文章を理解しようとする)
    ・文章の鑑賞→文章のありのままの「姿」を感じる(虚心)、趣味感(教養+自己の気質)を持つ

  • 大学の授業で、ある先生から勧められていた本。ずっと読みたかった。
    併読していたので、貸出期間を延長してもなかなか全部は読み通せなかったけど、印象に残ったフレーズは多かった。

    「美しいものは、諸君を黙らせます。美には、人を沈黙させる力があるのです。これが美の持つ根本の力であり、根本の性質です。」

    「現代人には考えることは、かならずわかることだと思っている傾向があるな。つまり考えることと計算することが同じになってくる傾向だな。計算というものはかならず答えが出る。だから考えれば答えは出るのだ。答えが出なければ承知しない。」

  • 読書に限定することなく、「読む」「見る」「聞く」など、ものの受け入れ方、考え方、表現のしかたなどについての持論(評論?)を展開する。心に残るフレーズが多かった。どれも考察し抜かれ、かつ批評の技術を巧みに用いつつ、読者に伝わりやすいように率直に表現されたものだから思う。一部難解なテーマもあったが、全体的に読みやすかった。

    ■ものの見方、考え方の参考になった心に残ったフレーズ
    ・読書の最初の技術は、どれこれの別なく貪る様に読む事で養われる他はない
    ⇒今の読み方に不安だったが、かつての小林秀雄と似た読み方を今しているのだと分かり、ちょっと安心。

    ・(見るとか聴くとかを簡単に考えてはいけない、絵をわかるようななるにはまず絵になれるまで見る努力が必要だ、という主張の補足)
    私達が、普通、私達の生活の中で、どんな具合に眼を働かせているかを考えるとよい。特になんの目的もなく物の形だとか色合いだとか、その調和の美しさだとか、を見るという事、謂わば、ただ物を見るために物を見る、そういうふうに眼を働かすという事が、どんなに少いかすぐ気が附くでしょう。

    助言
    1 つねに第一流作品のみを読め
    いいものばかり見慣れていると悪いものがすぐ見える!この逆は困難だ。

    2 一流作品は例外なく難解なものと知れ
    近づき難い天才の境地は兎も角、少くとも成熟した人間の爛熱した感情の、思考の表現である。

    3 一流作品の影響を忘れるな
    真の影響とは文句なしにガアンとやられることだ。心を掻き廻されて手も足も出なくなることだ。こういう機会を恐れず掴まなければ名作から血になるものも肉になるものももらえやしない。ただ小ざかしい批判などして名作の前を素通りする。

    4 若しある名作家を選んだら彼の全集を読め

    5 小説を小説だと思って読むな
    文学に何んら患わさればい眼が世間を眺めてこそ、文学というものが出来るのだ。巧いとか拙いとかいってる、何派だとか何主義だとかいっているのは、いつまでたっても小説というものの正体がわからない。


    ■実践してみたい
    ・一流の作家なら谁でもいい、好きな作家でよい。あんまり多作の人は厄介だから、手顷なのを一人选べばよい。その人の全集を、日记や书简の类に至るまで、隅から隅まで読んでみるのだ。
    そうすると、一流と言われる人物は、どんなに色々な事を试み、いろいろな事を考えていたかが解る。

  • 読書についてというだけでなく、本について書かれているところに
    納得できる文章が。
    軽くて理解しやすい、ストーリーだけの文章で紡がれた小説からは
    受けられる影響は軽いというような。
    古典などは基本「ウケない」ので、流行りはしないが、
    人の心に残るのはやはり重たいものだったりするのだろうと思う。
    軽い物語を否定するのではなく、どこか考えることを楽しむあまりに、
    小説にすらそういったことを求めたくなるような、文字中毒者においては
    きっとそういう部分がある気がする。
    飲み物を飲むようにさらりとライトノベルを読み、
    お菓子を食べるように漫画でひとときを楽しみ、
    息をするように新書や専門書から学び、
    三食でバランスよく栄養を取るように古典にて思考を広げる、
    そんな読書がとても楽しいので、まだまだ小林秀雄の域には行けそうにもない。
    ※後で書き直しますので一部印象だけで書いているような部分は
    修正します。

  • 読書、文章を読むこと・書くこと、喋ること、批評すること、教養、文化、美について。

    実践的で平凡(普遍的)な助言もあるが、全般的に文は人なり、読書のみにて閉じることなく、善く生きることを自ら考えるよう説いているのか。

    ⒈つねに第一流作品のみを読め
    ⒉一流作品は例外なく難解なものと知れ
    ⒊一流作品の影響を恐れるな
    ⒋若し或る名作家を択んだら彼の全集を読め
    ⒌小説を小説だと思って読むな

    ・絵画、音楽に言葉を介在させず、ただ目と耳で受け止める

  • 自分が考えてることを的確に言葉にしてくれたり、
    自分とは違う考えを明晰に示してくれたり、
    自分が考えもしないことを提示してくれたりと、
    なんだこの人間は!?という驚きと爽快感を持って読了。読書メモに自分用に書いたのみで、あまり感想には書かず。一読、いや多読の価値あり。

  • 小林秀雄の、書くこと・批評することに対する苦悩は色んなものに共通する感覚の気がする。好きなこと、熱心に取り組んでいることだからこそ上手くいかず、でもその悩み抜いた末に得るものはたしかにあるということ、それを彼ほどの人が教えてくれる。

  •  ショーペンハウアーと簡単に比較。優れた著作だけを選んで読むことを推奨する点は同じ。濫読の是非に関しては見解がわかれる。小林秀雄は濫読を推奨していた。

  • 「読書について」、「美を求める心」、「教養について」が良い。何度でも読みたい。

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著者プロフィール

小林秀雄
一九〇二(明治三五)年、東京生まれ。文芸評論家。東京帝国大学仏文科卒業。二九(昭和四)年、雑誌『改造』の懸賞評論に「様々なる意匠」が二席入選し、批評活動に入る。第二次大戦中は古典に関する随想を執筆。七七年、大作『本居宣長』(日本文学大賞)を刊行。その他の著書に『無常といふ事』『モオツァルト』『ゴッホの手紙』『近代絵画』(野間文芸賞)など。六七年、文化勲章受章。八三(昭和五八)年、死去。

「2022年 『戦争について』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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