「肌色」の憂鬱 - 近代日本の人種体験 (中公叢書)

著者 :
  • 中央公論新社
3.00
  • (0)
  • (1)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 47
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120046278

作品紹介・あらすじ

明治以降、「西洋化」を追求、日露戦争後に「一等国」の地位を獲得し、唯一の非西洋国として列強に参入した近代日本。だが、待ち受けていたのは、昂揚する黄禍論、パリ講和会議における人種平等案挿入の失敗、アメリカの排日移民法制定など、西洋からの人種的排除であった。本書は、近代日本が人種的差異をいかに捉えられてきたのか、タブー視されてきたその心性の系譜を、洋行エリートたちの人種体験を通して考察する。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 著者:眞嶋亜有
    装幀:細野綾子

    【書誌】
    初版刊行日:2014/7/10
    判型:四六判
    頁数:392ページ
    定価:本体2300円(税別)
    ISBN:978-4-12-004627-8

    【目次】
    題辞 [002]
    まえがき [003-007]
      身体という運命/西洋という最も重要な他者
    目次 [009-012]

    序章 近代日本の自己矛盾 015
    西洋の権威化 016
      「西洋化」の選択/日本の悲哀/エリート
    近き、そして遠き他者 024
      人種的同質性/人種的異質性
    注 029

    第1章 差別化という模倣――日清戦争後 031
    内村鑑三とスコッチリー 032
      「日本人離れ」/二つのコード
    「シナ人」との同化 040
      「最果て」の終焉/「黄色い大河」/「支那人」という蔑称/洗濯屋の「ジョン」/弁髪とpig tail
    モンゴロイド 054
      「蒙古症」/脱亜の共時性
    和装と洋装のはざまで 057
      「ジャップ」/「サーカス・ショー」/「大和魂」/見世物か国威発揚か/「日本の天職」/二つの写真
    注 073

    第2章 〈一等国〉の栄光とその不安――日露戦争後 083
    語られぬみじめさ 084
      夏目漱石の風貌/神経衰弱と人種意識
    自己醜悪視 093
      「小人国」/安住の地である日本/見劣り/気が引ける/「猿の顔」/「劣等人種」/「黄色の汚名」/罪悪としての「黄色」
    「東洋人」の境界 118
      ナショナル・プライド/埋めきれぬ隙間/「人格問題」/最後の砦/「同じ顔色」/「我々のお仲間」
    所属感の欠如 137
      不運/「大暗礁」/新運命の開拓/紐帯/疎外感
    注 146

    第3章 華麗なる〈有色人種〉という現実 155
    「平等」の裏側――パリ講和会議 156
      檜舞台/人種差別撤廃案の提唱/牧野伸顕の演説/反論と本来の意図/矛盾/アンチテーゼ/「失敗」の代償/挫折
    排日移民法 178
      排日傾向/煽動の時代/「写真花嫁」と第二次排日土地法/日本の対応と誤差/「同化」の限界―― 一九二二年小沢孝雄最高裁判決
    自尊心のありか 190
      「激昂」/「日米戦争はまさかないと思ふが」/怒りと自尊心/「泣き寝入り」
    注 202

    第4章 「要するに力」――日独伊三国同盟とその前後 213
    現実主義と精神主義 214
      現実主義的人種認識へ/「貧乏人の子沢山」――安岡秀夫/「軽薄」――稲葉君山/「机上的価値」――稲原勝治/「人種相互寛容論」――松原一雄/「ヘマ」――高木信威/「斯かる特殊な地位」――田中都吉/現実主義ゆえの精神主義/「武力が最初に口をきく今」――武者小路実篤
    「黒い眼と青い眼」 232
      日英同盟廃止から親独傾向へ/浮かび上がる矛盾/『我が闘争』邦訳版をめぐる問題/英国による日独離間策/可視的差異/「ナチスは日本に好意をもつか」――鈴木東民
    乖離し、乖離しえないもの 244
      「悪魔と手を組む」/「積怨の刃」/「聖戦」/「夢ならばとぞ思ふ」
    注 256

    第5章 敗戦と愛憎の念 263
    ふたりの写真――昭和天皇とマッカーサー 264
      「転向」の構造/玉音放送の涙/まぶしさ/「天皇と外人」/手中にあった震え/擁護という利用/神格性の否定
    崇拝と落胆 281
      心理的依存
    埋めきれぬ空虚 286
      否定/「それから生まれる淋しさ」/「アメリカ人に生まれたらよかつた」/「総決算」
    注 296

    第6章 永遠の差異――遠藤周作と戦後 301
    神々と神と 302
      光と影/合わない洋服
    皮膚のかなしみ 312
      「サール・ジョンヌ」/リヨンへ/黄色い人の哀愁
    血の隔たり 320
    ポール遠藤/「無縁な者」/血/「神さまは外国人ですか」
    一流の二流性 330
      九官鳥/寂寞の感/鍍金/食客/桜/内在化された自己否定/永遠の差異
    注 351

    終章 近代日本の光と影 357
      明暗/烙印と誇り/「複雑な構造」/偏見の本質/美醜/自己否定/日本人であることの不安/悲哀/振幅/翳り/憂鬱
    注 385

    あとがき(二〇一四年 春を迎えつつある米国マサチューセッツ州ケンブリッジにて 眞嶋亜有) [387-390]

  • 「肌色」ってどんな色でしょうか?おそらく日本では、〝日本人〟の肌の色をイメージされることが多いことでしょう。それは「白色」でもなければ「黄色」でもない、曖昧な位置を占めているように思われます。この曖昧さに象徴される屈折した心性を本書は巧みに描いています。
    明治以降、日本は「西洋化」を追求してきました。日露戦争後は唯一の非西洋として列強に名を連ね、「文明」を獲得した「一等国」として国家的自尊心を肥大化させていきました。だが、悦に入るのも束の間、黄禍論の昂揚や排日移民法制定(米国)といった人種的排除に直面します。西洋と非西洋を分かつ可視的媒体として、身体の特徴(肌の色)が強く意識されたのです。本書では、肌の色という宿命的差異をめぐる憂鬱の系譜が辿られています。明治から戦後にかけてのエリート層の心性が垣間見られることでしょう。
    「日本人離れした」という褒め言葉は今でも時折耳にします。本書が描く憂鬱が尾を引いているのでしょうか――。「グローバル」や「国際」が喧伝される今、多くの人に手に取ってもらいたい一冊です。
    (ラーニング・アドバイザー/国際 OYAMA)
    ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
    http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1617302

  • 第6章、遠藤周作のフランス留学との絡みが面白かった。あと、占領下の米兵と接触した日本女性の恍惚感って珍しい切り口なので、もっと踏み込んで欲しかった。悪趣味だけど。

  • 面白そう

全4件中 1 - 4件を表示

眞嶋亜有の作品

ツイートする