ドミトリーともきんす

著者 :
  • 中央公論新社
4.07
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本棚登録 : 1381
レビュー : 157
  • Amazon.co.jp ・本 (126ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120046575

作品紹介・あらすじ

不思議な学生寮「ともきんす」。お二階には寮生さんが4人。

朝永振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎、湯川秀樹……
テーマは科学者たちの言葉―高野文子最新コミックス!

高野文子が新作のテーマに選んだのは「科学者たちの言葉」でした。日本の優れた科学者たちが残した文章を、なぜいま読み返すのか。
その意義を、架空の学生寮を舞台に、「科学する人たち」と一組の母娘の交流を通じて丁寧に描いていきます。
「道具を持ち替えることから始めた」と著者が語る通り、画面を行き交う線はさらなる進化を遂げ、
フィクションとノンフィクションのあわいに、唯一無二の世界が生まれました。
本書には、Webメディア「マトグロッソ」で連載されていた表題作に加え、連載への布石となった短編
「球面世界」「Tさん(東京在住)は、この夏、盆踊りが、おどりたい。」の二篇を収録。
漫画単行本としては前作『黄色い本』から12年―大判サイズで絵の魅力をあますことなく伝えた、ファン待望の一冊です。

感想・レビュー・書評

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  • 一風変わった読書案内である。

    本書の著者は「黄色い本」などで知られる漫画家・高野文子。
    紹介される本の著者は、朝永振一郎・牧野富太郎・中谷宇吉郎・湯川秀樹。
    日本を代表する科学者であり、また一般向けの著書もある人たちである。
    彼らは、寮母のとも子さんとその娘の幼児きん子ちゃんが営む学生寮「ともきんす」に住んでいる。そこは時空を超えた不思議な場所である。若き日の朝永が、牧野が、中谷が、湯川が、ときには悩みつつ、ときには生き生きと、自らの研究の萌芽を抱え、それを花開かせる術を探し求めている。

    自分は研究をするしかないとどこかでわかっていながらも、道を模索し煩悶する朝永。
    飄々とした自由人であり、貧窮しても意に介さず、「天然の教場」で学び続けた牧野。
    徹底した観察力の根底に、どこか「非科学的なもの」へのあこがれも捨てなかった中谷。
    天才的でありながらどこか木訥とした風もある湯川。彼が綴る「詩と科学」の一篇はなかなか味わい深い。
    シンプルな絵柄の中に、それぞれの科学者がそれぞれの個性で生きている。
    さりげないエピソードとともに、彼らの著書がそっと差し出される。

    科学は不思議だ。
    というより、世界の不思議さに眼を留め、それはなぜだろう?と立ち止まって考える、それが科学だ。
    ヒンヤリした手触りの科学への扉を開け、科学者たちの言葉に静かに耳を傾けるとも子さんの姿勢がとてもよい。
    静かに、静かに、世界の不思議へ。
    静かに、静かに、科学の手引きで。
    それはまた自分の内へと向かう旅のようでもある。

    読後には、読んでみたい本のおみやげも付く。
    派手ではないが極上の旅である。

  • 高野文子さんの新刊!科学の著名人が、下宿屋「ドミトリーともきんす」で暮らしていたら、どんなお話が聞けるだろう、というお話。コロコロ変わる視点や、表現の工夫に見入ってしまう。
    表紙の、明朝体のタイトルと、ゴシック体の高野文子がぴったりくる。
    高野さんの漫画の一コマめで「?」と思ったことが二コマめでそういうことか!ってわかる所がすき。(話の流れでなく、構図とかの仕掛けの面で)

  • 4人の日本の科学者をマンガと文章で紹介した本。
    ある人のブログで紹介されていて、牧野さんと湯川博士の名前があったので購入。

    牧野富太郎氏は小学生の頃、伝記を読む授業でランダムに渡されたのが氏の。読了できなかったが、全く知らないその人の努力と動植物への愛が伝わった。

    湯川氏は彼の子どもの頃の友達のいない悲しい体験を教科書で読んで、ノーベル賞受賞者にもこんな経験があるんだと親近感を。

    中谷氏は北大のキャンパス(母校ではないのが残念)で見かけた「低温」の文字と雪の結晶の碑。白銀荘も身近な場所だし。

    朝永氏は知らないけど、みんな懐かしい友達みたい。文豪や大作家の作品を読んでもこんな気持ちにはならないのに、とっても親しい気持ち。

    もうちょっと分量があってもいいかなぁ、

  • ずっと気になってて、図書館で発見でラッキー。
    マンガで書いてあるとはいえ、私にはなかなか刺激的で眠気を誘う本でした。こういうのもアリだな~って。
    第2弾もあったら読みたい!

  • やっぱこの人の絵っていいな。狙い通り、懐かしい科学者の著作が読みたくなりました。

  • ◆朝永振一郎・牧野富太郎・中谷宇吉郎・湯川秀樹の4人の理系学生を下宿させるーーという妄想からなるコミックなのに、でんぐり返りをしたように・木登りしたように・逆立ちしたみたいに心が子どもに戻っていくのはなぜか? ◆ものの名前を知らず、ただ好奇心に満ちた瞳だけがあったあの頃に戻りたくなる。◆平行線が交わる「球面世界」にはじまって、湯川秀樹の「詩と科学」に辿り着く。その構成に心がふるえる。あたたかく抱きとめられる。◆最初は「こんな下宿、羨ましい」と思い読んでいたが、読み進むうち、本を読むとは「ドミトリーともきんす」を自分の中に持つことなんだと思い直す。本を読む私たちの本棚に、心のうちに「ドミトリーともきんす」がある。それはなんて幸せなことか! 
    素敵なことを教えてくれた高野さんに感謝♪ 

  • 湯川秀樹の「詩と科学」がとってもよい。中谷宇吉郎のエッセイが読みたくなった。文系だとか理系だとかという分け方のくだらなさを、改めて思い知らされる。画面構成に驚くことしきり。

  • いちばん好きなマンガ家は誰かと言えば、迷わず高野文子と答える。かれこれ15年ほどずっとマイ・ベスト・マンガ家であり続けている。その高野文子のひさびさの新刊。マンガ作品としては実に12年ぶりの新作。そして、12年待った甲斐のある素晴らしい新作。
    学生寮「ともきんす」の寮母とその子、そしてそこに住まう”科学する人たち”の物語。朝永振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎、湯川秀樹ら、20世紀日本を代表する科学者が残した文章をたどり、それぞれの科学する心を描き出す。何が起こるわけでもなく、これといった起承転結もないのに、適度な緊張感をはらみつつきちんと成立する物語。無駄のないミニマルな絵の中の自在な視点移動と巧妙な表現。徹底的に磨き上げられた無二の表現力が、科学者たちの文章を読んだ時の感動を追体験させてくれる。

  • おお、高野文子さんの新作!待ってました!「黄色い本」以来だからずいぶん久しぶり、それはそれは楽しみにしていた。大判で柿色の美しい表紙を目にしただけで胸が高鳴る。こんないい気持ちってちょっと他にないなあ。

    読み出すと、もうそこは独特の高野ワールド。太めの線で、あえて平板に描かれたページにどんどん引き込まれる。コマ割の仕方も、初めて見るようなのが幾つもあった。ゆっくりした呼吸で読んでね、と語りかけられているような感じだ。

    内容がまた感涙もの。科学者(の卵)四人が下宿する小さなドミトリーが舞台として設定されている。朝永振一郎と湯川秀樹はまあ当然として、牧野富太郎と中谷宇吉郎という人選がまことにしぶい! あとがきに、いつもなら自分の気持ちが一番にあるが「今回は、それを見えない所に仕舞いました」とあるように、過剰な思い入れやドラマティックな要素を一切排して、静かに描かれているが、それでもなお、著者の心からの敬意が伝わってくる。「涼しい風が吹いてくる」愛すべき一冊だ。

    終わりの方に配された、湯川秀樹「詩と科学」の一節が素晴らしい。ここまで読み進めてきて、この絵とともに味わうことで、言葉が心の深い所に届いてくるようだ。しみじみ良かったです。

  • トモナガ君、マキノ君、ナカヤ君、ユカワ君が住んでるドミトリー。こんな寮に学生の頃住んでたらと想像しながら読みました。4人の中では特に雪の結晶で著名な中谷宇吉郎の本「科学の方法」に強く影響を受けました。

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著者プロフィール

高野文子
1957年生まれ。まんが家。
1982年に『絶対安全剃刀』で日本漫画家協会賞優秀賞、2003年に『黄色い本』で手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。自在な線から生み出される絵と深遠な作風で、根強い人気をもつ。

「2013年 『青い鳥 (新装版)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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