大村智物語: ノ-ベル賞への歩み

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120048081

作品紹介・あらすじ

エリートではない。夜間高校教師からはじまる波瀾万丈の研究者人生。2015年ノーベル生理学・医学賞受賞!大村語録収録!

感想・レビュー・書評

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    寄贈図書

  • 子供のころは伝記が好きでいろんな人の伝記をよく読んでいたので、この本はどことなく懐かしい感じをうけた。ライターが書く評伝ではなく大村氏を尊敬してほしいと願って書かれた物語である。

    それにしても、農作業で培った段取り力、だそうだが、大村博士の物事のキモを見抜き人を巻き込んで動かしていくビジネスセンスはずぬけている。病院の用地獲得交渉や美術館の設立など、ノーベル賞以外にもずいぶんと実業面での功績を残されているのを知った。こんな人だったんだな。
    夫人の活躍も内助という観点でなく一人の女性のありかたとして魅力的に書かれている。

    ちなみに大村博士は、こんにち、新型ウィルスとイベルメクチンについて、座右の銘を引いて「『至誠天に通ず』の意味は、真理は必ずや風説に耐え得る、真理がやがて明らかになり、うそは負けるということ。その信念を持ちながら私はサイエンティストの立場から、今回のことも見守りたいと思っています。」と語っているそうである。

    P29 「教師たる資格は、自分自身が進歩していることである」(大村の母の日誌)

    P93 研究というものは器具や装置ではない。やはり頭で勝負するものなのだと思ったのです。

    P142 アメリカは、このような割の合わない仕事をみんなで体制を組んでやるということは、あまり得意ではないのです。それをよく知っている大村は、効率のいいスクリーニングの手順を開発し、役割分担をしてチームワークを汲む共同研究は、日本人のほうがうまいと考えていました。その認識は、モノづくりで世界トップを極めた日本の製造現場で日ごろ行われている、「暗黙知でみんなが動く体制」と重なるところがあります。

    P193 「研究を経営する」という言葉は大村の造語です。

    P226 大村は「経営」という言葉の意味に人間形成という意味があることを知りました(夕霧の経営・・)【中略】自分を磨くとは、リーダーシップ、柔軟性、アイデア、情報収集力、協調性、応用術など、多角的な能力を一定のレベル以上に保持することです。【中略】桶を形成する板のうちどこかが破れたりひびが入っていたり、低い板になっていればそこから中の液体が漏れてしまい、一番低い板のレベルになってしまいます。

  • 大村智先生についての、もう一冊の馬場さんの著作よりさらに読みやすくなって登場した一冊。

    改めて大村先生の研究の偉大さと、大村先生ご自身のガッツ・飽くなき挑戦心、戦略的な行動力に感動します。

    ご自身の活動を、必ず世のため人のために活かそうとされているのも素晴らしいと心を打たれます。

  • ノーベル賞受賞者ということでしたが、本書を読もうと思ったのは、日経新聞の「私の履歴書」を拝見してからです。
    なんといっても、経歴が一般的なエリートと言われている人とは違うことに、興味を持ったからです。夜間高校の教師から始まり、学び直して化学の道を志向しつつも、医学系の北里研究所でご活躍される。
    大村さんは、ずばり「行動」の人ですね。そして、奥さんを大変大事になさってらした。慈愛の心もある方ですね。
    今回は、アカデミックな部分にスポットがあたっておりますが、大村さんの本質は、人を動かす力なんだなと、勝手に解釈しております。
    最高のインフルエンサー。素晴らしい方です!

  • 2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智博士の普及版の伝記。
    研究者としてはもちろん、人間としてすごい人だな、という感想しか出てこない。家族をはじめ、人に恵まれたのが飛躍の要因になっていると感じた。人との出会いは大事である。
    大村博士の教師をしていた母の「教師たる資格は、自分自身が進歩していることである」という言葉と、それをずっと心に留めてきた大村博士の姿勢が心に響いた。
    大村博士は、努力すれば必ず報われるということを体現する人物であり、本書はまさに多くの子どもに読ませたい伝記である。
    ただ、伝記として、ちょっと誉めすぎではないかという気はした。

  • 子供用に比べくどい 人を大切にする 先生の人柄が出ていた 高橋洋子さんの話は関東です 感動しました 努力の人たちです 北里柴三郎コッホ メルク社ありがとう

  • 人のためにと生き、ビジネスマンとしても成功した科学者大村智の伝記。知り合いが韮崎出身ということもあり、読んでみました。人生を成功させるエッセンスが盛りだくさん。とてもためになりました。あなたの人生のモットーは何?

  • 1人の真似をしてもその人の上にはいけないこと2ある程度年齢を重ねた後は人を育てること3伴侶の素晴らしさ

  •  微生物がつくり出す天然の有機化合物の研究で,ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村先生の伝記です。
     大村先生が,農家の生まれで,一度定時制高校の先生となり…という経歴から,紆余曲折を経て研究者となったことが伝わってきて,なかなか興味深いものがあります。次はどんな出会いがあって,どういう道を選ぶのだろう,と,一気に読んでしまいました。
     ただ-本書は,こ本人から聞き取ったりしたことをまとめたものらしいのですが-ちょっと教訓的すぎて,読んでいて疲れてきました。
     本書帯にあるように「至誠天に通ず」くらいならいいのですが,至る所で教訓話というか,大村自身を動かしてきたという〈言葉〉が出てきます。
     たとえば,祖母からの「人のためにやることを考えてやりなさい」
     たとえば,母からの「教師たる資格は,自分自身が進歩していることである」(これは母の日記を覗いて知ったようです)
     たとえば,山梨大学の地学教授からの「社会に出てから5年間頑張れ」
     たとえば,中国の古語「万変に処するに一敬を主とす」
     まだまだ出てきます。

     これは,同じくノーベル賞を受賞した小林先生が講演の折りに,会場の参加者から「座右の銘は?」と聞かれて,「そういうのを持たない,そういうのに囚われないことが,科学的な態度であり,研究を深めていくのだと思います」と堪えたこととは対照的です。

     北里研究所の建て直しや,新たな病院の建設など,経営的な手腕があることもはじめて知りました。また,美術への造詣も深かったという大村は,新しく作った病院の廊下を絵で飾ったり,ついには,美術館まで作ったりします。
     人間的には,とても幅の広い,おもしろそうな人だなあと思いました。

     フィラリア症で愛犬を亡くしたこと(ずいぶん前の犬ですが…その頃はクスリを飲むことさえ知らなかった時代)のある私にとっても,今,元気な犬と散歩できる楽しさをかみしめています。大村先生たちの研究があったからこそですからね。

     本書の原本となった『大村智 2億人を病魔から救った化学者』は,ノーベル賞受賞前に出版された物らしく,しかも詳しいということなので,こちらの方も読んでみたいです。
     

  • 研究活動の源泉になるのは好奇心である チームワークを組む共同研究は、日本人の方がうまい 暗黙知でみんなが動く体制 化学、医学などの研究現場で活用されている代表的な物質としてセルレニン、ラクダシスチン、スタウロスポリンの3つがあります チャンスは準備が整っているところにやってくる

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著者プロフィール

ジャーナリスト

「2022年 『沖縄返還と密使・密約外交』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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