彼女に関する十二章

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 484
レビュー : 82
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120048449

感想・レビュー・書評

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  • 本当に中島京子さんの作品には救われる。

    これから、いつか迎えるであろう50代。
    やっぱりこれからも、年齢を重ねても、日々の些細な出来事に右往左往させられるのだろう。
    でも、ここにはユーモアと愛があって。
    すとんすとんと落ちる言葉に、小説を読む楽しさと、人生を考える思考に身をゆだねた至福の一冊でした。

    愛すべきすべての登場人物。
    作中にある中原中也の詩。

  • 聖子さん好きです。

  • 普通の女性の普通の生活を描いた作品。何かが起こるわけではないので退屈と思う人には退屈かも。私には登場人物がすべて好ましく思え、愛おしい感じがしました。

  • 2016 06 13読了
    いい話でした。聖子さんの淡々とした語り口がホッとさせられます。幼なじみの息子さんや調整さんとのなんか危なっかしい関係も、うま〜くスルーする感じがいいです。小次郎君やチカちゃんとも上手な関係、心の広さが感じられます。

  • 60年前に書かれた女性に関するエッセイをテーマに編集者を夫にもつ妻が身の回りのことに触れながら論じた物語。
    婦人公論に掲載されたものを婦人公論で小説仕立てにする。そのアイデアはおもしろい。
    昔と今は違うのよと表面的にいいながら、現代は昔と同じ過ちを繰り返す一歩手前なのよと著者は警告しているのでは。

  • 日常を、伊藤整の「女性に関する十二章」に合わせ、物語を進めている。

    こういうことあるあると読む読者も立派な中年。

  • 生理が上がったのではと思う年頃の聖子の日常を伊藤整の
    彼女に関する十二章に乗せて描く。
    夫は文筆業、自分は税理士事務所のパート、息子は哲学科の院生で彼女の1人もいず。義理の弟はゲイ。
    パート先から派遣されたNPO法人で出会った男、初恋の人の息子などいろいろな人と出会う。

  • 彼女に関する十二章 中島京子著 日本の可能性と危うさ見える
    2016/6/5付日本経済新聞 朝刊

     本書には通奏低音的に存在している本があり、それが伊藤整の『女性に関する十二章』。昭和28年(1953年)に「婦人公論」に連載されたこの女性論は、単行本化されるとベストセラーとなりました。







     伊藤整は、女性に対する揶揄(やゆ)と挑発混じりに、連載を始めています。夫の浮気への対処法、といった卑近かつ重大な問題へのアドバイスもしていますが、そのベースにあるのは、日本という国への危機感。敗戦直後、女性の立場が急上昇した時代に書かれた本が本当に訴えたかった事は何だったのか……?


     その問題を小説の形で引き受けたのが、本書の著者である中島京子さんです。主人公は、伊藤整の連載から六十余年後、『女性に関する十二章』をふとしたことから読むことになった、閉経間近の女性。夫と大学院生の子供が一人いて、税理士事務所でパートとして働く彼女は穏やかに暮らしているのですが、次第にちょっとした出来事の数々が、彼女の生活を刺激するようになるのでした。


     それは誰の生活にもあるような、暮らしの中のさざ波です。血湧き肉躍る物語ではありませんが、伊藤整をベースにして読んだ時に浮上するのは、「民主主義って?」という問題。


     妻は自分の着物を買わずに夫の酒を買い、娘は身売りをして親に楽をさせ、兵隊は爆弾と一緒に敵艦に突っ込む。……という自己犠牲の精神が、伊藤整の言う「日本的情緒」。互いのエゴを認め合うより、自分のエゴを殺すことに価値を見出(みいだ)す日本において、軍事化と日本的情緒がセットになった時の危険性を、本書は指摘します。ということで、伊藤整が抱いていた心配は、今も消えてはいないのです。


     お金を使わずに生きる、元ホームレス。無愛想でおたくっぽい女の子。同性愛者。気がつくと、普通の主婦である主人公の周囲には、ちょっとだけ“普通ではない”人達が登場しています。彼女はその人達に戸惑いつつも、排除せずに付き合う努力をするのです。


     おそらく最も身近な民主的な行動とは、彼女のように「世の中には色々な人がいる」と認める事なのでしょう。戦後70年、日本人は少しずつ「自分とは違う人」に心を開くようになったけれど、また正反対にふれる可能性も、おおいにある。一人の主婦の生活からは、日本の可能性と危うさの両方が見えてくるのであり、伊藤整が女性を描いたのも同じ理由からなのかも、と思ったことでした。




    (中央公論新社・1500円)


     なかじま・きょうこ 64年東京生まれ。東京女子大卒。出版社勤務などを経て作家に。著書に『FUTON』『小さいおうち』(直木賞)など。




    《評》エッセイスト


     酒井 順子

  • +++
    「50歳になっても、人生はいちいち驚くことばっかり」

    息子は巣立ち、夫と二人の暮らしに戻った主婦の聖子が、ふとしたことで読み始めた60年前の「女性論」。一見古めかしい昭和の文士の随筆と、聖子の日々の出来事は不思議と響き合って……

    どうしたって違う、これまでとこれから――
    更年期世代の感慨と、思いがけない新たな出会い。
    上質のユーモアが心地よい、ミドルエイジ応援小説
    +++

    「どうやらあがったようだわ」で始まる物語である。更年期を迎えた女性の――大げさに言えば――世界の見え方の描写が新鮮である。さまざまな縛りから解き放たれ、来し方のあれこれに想いを致し、来たるべきあれこれに想いを馳せる。不安になったりうろたえたり、このままでいいのかと自問してみたりと、結構忙しいのである。そんな事々のさなかにありながら、案外冷静に突き放して見ている主人公である50歳の聖子が、なかなか味があって好ましい。女性の更年期は、ちょうど家族の過渡期に同調するようにやってくることが多く、聖子の場合も、息子の自立と重なることになる。晴れがましいような、心もとないような、寂しいような複雑さのなかで、自らの軌跡を振り返るきっかけになったりもする。読み進むにつれて、どんどん惹きこまれるようになる一冊でもある。

  • 60年前に書かれた「女性論」に、共感や疑問点を抱きつつ、にわかに変化する日々を過ごす50才の主婦。

    心身共に大きく変化するであろう50代はこんな感じなのかな。
    こんなふうに賢くやわらかく過ごせたらいいなと思った。
    それにしても会話の多い夫婦だな。会話も大事だな。

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著者プロフィール

中島京子(なかじま きょうこ)
1964年東京都生まれの作家。『FUTON』でデビュー。著書に『小さいおうち』(直木賞)、『かたづの!』(河合隼雄物語賞・柴田錬三郎賞)、『長いお別れ』(中央公論文芸賞)等。2019年5月15日、新刊『夢見る帝国図書館』を刊行。

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