日本の大問題 現在をどう生きるか

  • 中央公論新社
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本棚登録 : 86
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120048708

作品紹介・あらすじ

日本と日本人に押し寄せるさまざまな難問・難題。切り抜けるための方途はあるのか。

感想・レビュー・書評

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  • 主に「脳化していく日本人」に対する養老先生の考えがまとめられている本でした。

    都市は石油でできていて、一定の生活環境(空調環境やバリアフリーなど)が整えられている事によって、生物としての身体感覚の鈍化が見られるであったり。

    抗生物質による免疫系の暴走で引き起こされるアレルギー諸症状など、

    しかしながら、現代を生きる自分にとっては、その社会の中で生活していく上で、
    「とは言え、こういう良い部分もあるので、こう発想を転換してみてはどうか」という様な、
    サブタイトルにある“現在をどう生きるか”についての具体的な見解も提示して欲しかった部分もありました。

  • 『バカの壁』の養老孟司さん、『里山資本主義』の藻谷浩介さんの対談。面白かったです。

    ==
    ・自分で学ぶ場を与える、ということが教師の最大の役目ですし、自分で修行する場を作ってあげることが、教育の大きな役割の一つだと僕は思います。学校にとっては、「場」という考え方が大事なのです。

    ・自分で考えろということは、本気でやれということです。人間は、普通はあまり深く考えずに生きています。しかし、切羽詰まれば、自分で考えます。そして、切羽詰まらなくても、自分で考えろ、と言いたい。切羽詰まらないと本気になれないというのでは、たいしたことはできない。

    ・鎌倉時代の道元が、「先生にとって、一番大事な資質は学ぶ姿勢だ」と言っています。「先生」であるための実質的な知識や能力ではなく、学ぶ態度を言うわけです。学ぶ態度こそが大切。一番上なのに、常に学んでいるとは立派な奴、ということですか。むしろ成功し続けるより、失敗して学ぶ姿に人気が出る。
    ==

  • 情報化社会とは、基本的ん先送りの社会です。情報は基本的には過去のものです。情報とは、もう済んでしまったことのことです。過去のものに人々がこれほど囲まれている時代はありませんでした。済んでしまったことに取り巻かれていて、肝心のことを先送りにしているのが現代人です

    内田樹氏によると日本に進駐してきた兵隊は、すべて負けた側を知っている南軍の兵隊だったそうです

    マスメディアが信用出来ないのは、「現代の視点で過去を裁く」ということをして得々としている一方、すこし考えれば疑わしいことでも、大本営発表をそのままつたえて、国民の知る権利に答えているなどと思いこんでいるからです

    必死に生きるということは、現代ではもう失われてしまい、そのかわりに、明日のために、将来のために、依頼のためにと、保険をかけるような生き方をしています。

    教育評論家 諏訪哲二
     いまの子どもは高校生くらいに成ると、完全に消費者として行動している

    出光興産 出光佐三さんの回顧録
     日本が高度成長期に中東から買っていた原油の価格は、アメリカの企業がアメリカ産の原油を買う値段より3割安かった

    みなが自分だけの城に閉じこもって純粋消費者として暮らせるのが都市という空間
    ですが田舎では、都会よりも濃い近隣の人間関係がそれを許さないのみならず、自然という大きな他者が身近にあります。都会では自分の世界のこもるだけではなく、田舎に通う、あるいは移り住むことで自分以外の他者の存在を感じる時間を持つ、そういうことが増えるということでしょうか。先生の提唱される現代の参勤交代ですね

  • 201610/

    自分で学ぶ場を与えるということが教師の最大の役目ですし、自分で修行する場を作ってあげることが、教育の大きな役割の一つだと僕は思います。学校にとっては、「場」という考え方が大事なのです。/

    自分で考えろということは、本気でやれということです。人間は、普通はあまり深く考えずに生きています。しかし、切羽詰まれば、自分で考えます。そして、切羽詰まらなくても、自分で考えろ、と言いたい。切羽詰まらないと本気になれないというのでは、たいしたことはできない。どういう仕事をするにしても、普段から本気でやれということです。/

    問題や対立から逃げる人というのは、次に問題が出てきた時にも、逃げるに決まっています。それはつまり、何も学ぶ気がないということです。どんな社会であれ、何かをやるということには、自分を育てるという意味合いがあります。これは自分を育ててくれると思えば、本気になれるはずなんです。/

    よく人生は山道を登ようなものだなんて言いますが、とんでもない。崖を登っているようなものです。手を離しただけで落ちていきます。もちろん、落ちるのは楽ですよ。空中を浮遊するだけだから。手を離さずに、全身を使って一歩ずつ登る。そうすると、ちょっとずつ世界が広く見えてくる。人生というのはそういうものです。オフィスに座っていれば給料をもらえるような人は、人生を怠けているようなものです。/

    人間には出力をしながら入力を取り込んでいく。仰向けに寝て上しか見ていなかった赤ちゃんが、はいはいを始めることによって、自分が動くとまわりが動くということを知る。そうやって自分から入力を変えて、劇的に変わっていく。/

    元来、日本はそういう国(民族が混ざり合っている)です。いろいろな人種が、ぐちゃぐちゃに混じり合った後で外部との交渉が切れたので、そういう成り立ちの国であることに気づかなくなっていますが、日本はアメリカが古くなったような国だと思います。
    まさに!日本は、いまのアメリカの1000年後みたいな国だと、常々思っていました。世界の西の端のフロンティアがアメリカなら、少し小さいですが東の端のフロンティアが古代の日本だったのです。そこにアジア中、いや世界中からボートピープルが流れ着いて、いまのアメリカ人が銃が手放せないように、ずっと剣を引っ提げて暮らして、戦国時代に手ひどく殺しあってからようやく自分たちの手で武装解除を実現した。アメリカがそうなるのは500年後でしょうか。/

    日本人にとっては、誰が偉いなどというのも、頭の中だけでのことですから、「イワシの頭も信心から」と同じことなんです。このことは、相当古くから浸透しています。鎌倉時代の道元が、「先生にとって、一番大事な資質は学ぶ姿勢だ」と言っています。「先生」であるための実質的な知識や能力ではなく、学ぶ態度を言うわけです。
    学ぶ態度こそが大切。一番上なのに、常に学んでいるとは立派な奴、ということですか。むしろ成功し続けるより、失敗して学ぶ姿に人気が出る。
    学ぶときに一番大切なのは、「己を虚しゅうすること」となるわけです。実際、日本人は良く学びます。ただ、「では、あなたの意見は」と聞かれると、「さあ」となってしまう。
    日本では、権力者に対しても、「先生」のような扱いなのですね。
    そう、ただ立てているだけ。
    実際にその場にふさわしいかどうかではなく、フィクションとして、「この人は先生です」と立て、そう決めたらみんなでそれに従う。その代り、上にいる側も余計なことはしない。むやみに権力はふるわず、おとなしくしている。/

    学問はもともと非組織戦だったと思います。ところが、マルクスの頃から変わってきて、組織戦になってきたところがあります。学問を実践しようとしう輩が出始めたからでしょう。学問は実践しないからこそ意味がある。それを学んでいる人の頭が変わることで、世界がひとりでに違ってくる、それでいいということです。ひとりでにではなく人の行動を変えようとすると、とんでもないことになる。たとえばソ連ができる、というのが教訓です。
    考えが変わっていくのは脳にとって自然なことで、例えば、年をとることでも変わっていきます。だから、できるだけ自然に任せていい。僕はこれまで、自分の頭で考えよう、と言い続けてきたのですが、それではどうしたって、非組織戦にならざるをえないのです。そして実は、そういう抵抗の仕方が最も強靭なのです。
    認識が変われば、無理に足並みそろえて行動を強制しなくとも世界は変わっていく。/

  • 中国という国はよく分からない。彼らからは日本がよくわからない。相互理解は難しい。

  • 難問・難題が押し寄せて、日本が、日本人が困っている。日本列島を駆けめぐり、どんなささいな現象・変化も見逃さない超人二人が、日本の、そして地球の今を語り解く。日本人に必要な覚悟とは。

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著者プロフィール

養老 孟司(ようろう・たけし):1937年神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。医学博士(解剖学)。『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。『バカの壁』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。同書は450万部を超えるベストセラー。対談、共著、講演録を含め、著書は200冊近い。近著に『養老先生、病院へ行く』『養老先生、再び病院へ行く』(中川恵一共著、エクスナレッジ)『〈自分〉を知りたい君たちへ 読書の壁』(毎日新聞出版)、『ものがわかるということ』(祥伝社)など。

「2023年 『ヒトの幸福とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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